第10話 スーパーエクスプレススシトレイン③
前回のあらすじ:
男子一人、女子三人で回転寿司に行くことになった。
◆◆◆
「クラスの女子と回転寿司ってどういう状況なの?」
「俺もわからない」
妹の輝理と一足先に待ち合わせ場所に到着し二人を待つ。土曜の昼とあって人通りも多くなってきているが、お店の予約はしているので心配はないだろう。
輝理を連れて行くことは母親にも了承を得ており、母親から軍資金まで貰っているためお財布的な不安は一切ない。問題は鳥路さんと賀集さんが寿司で喧嘩にならないかと言う一点だけ……とは言うものの賀集さんは温厚だし、鳥路さんは寿司に拘りはあっても交友関係を捨ててまで優先するものではなさそうなのでそこまで心配はしていない。
「お待たせー、結構待った?」
「いや全然。時間前だしね」
約束の時間五分前に賀集さんが先に到着。制服姿しか知らないので私服の賀集さんは新鮮である。期待を裏切らぬギャルらしいオシャレなファッション。妹のセンスに近いが、大人っぽさは歳の差ってところだろうか。
「輝理ちゃん初めましてぇ。葵くんのクラスメイトの賀集だよ、今日はよろしくね」
妹の目線に合わせて少し屈みながら自己紹介をする賀集さん。ギャルだけどやっぱ良い人なんだよな……
「あ、兄がいつもお世話になっております! よろしくお願いします!」
賀集さんの丁寧な挨拶にびっくりしたのか妙に固い挨拶になる輝理。
「山本くんとは二年でクラス一緒になったばっかりだけどねぇ」
「この短期間で回転寿司に行く仲に!? お兄ちゃん!? どういうこと!?」
「俺もわからない」
「そればっかじゃん!」
だってわからないんだからしょうがないだろ。
「あとは鳥路さんか……迷ってないと良いけど」
「しっかりしてそうだし、大丈夫じゃない?」
「お兄ちゃん、鳥路さんってどんな人?」
あぁそうか、輝理は姿を知っていても名前を知らないのか。
「ほら、例の……」
「こんにちは」
「のああああ!? 鳥路さん!? なんで背後から!?」
噂をすれば本人の登場である。音も無く背後から声をかけるのは止めて欲しい。
鳥路さんは前に会った時と似た感じの服を着ている。高い寿司屋に入っても違和感のない品のあるお洋服といえば良いのだろうか……
「あああああ!? 寿司屋の寿司女!!」
妹が鳥路さんを見て叫ぶ。いくらなんでも寿司女は失礼だろ。正しい気もするけど。
「こら。人に向かって指をさすんじゃない」
「ご、ごめんなさい。で、でも、同じクラスだったのお兄ちゃん!?」
「鳥路さんは転校生なんだよ輝理ちゃん!」
「そんなことある!?」
そんなことがあったからこうなってるんだ妹よ。
「……あの時はごめんなさい。わさびが大丈夫だと思って」
「え、あ、私は全然平気だったけど? ちょっとダイレクトが初めてで驚いただけというか?」
「それなら良かった」
強がっているが輝理はまだわさびが苦手である。
「よーし、メンバー揃ったし、行こっか!」
お店の予約は賀集さんがやってくれた。というか昼休みの間に速攻予約していた。
ねこまた寿司に行くのは俺も輝理も久しぶりなのでちょっとワクワクしている。安い寿司は安い寿司なりに美味いのだ。庶民の舌なんてこんなもんで良い。
「すーっ……はーっ……」
なぜか深呼吸をする鳥路さん。そう、問題はこの人だ。成金寿司の時のことを思い出すとまずい寿司を食ったら怒り出すかもしれない。しかし、そうなることを本人も望んでいないということは何となく理解している。今日の俺は鳥路さんのフォローがメインになるだろう。
……賀集さんと鳥路さん仲良し大作戦、ミッション開始だ!
感想・評価をいただけると、執筆の励みになります。
◇◇◇
こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




