第六話 狩り
ロイと出会って1週間ぐらい経った頃、ロイは僕の修行に混ざり始めた。ピースさんがロイの修行をして、僕はマジードさんと修行することが多くなった。マジードさんの修行はピースさんのものよりもかなり激しめで僕は今まで以上に強くなっていった。それからロイもお城で暮らすことが多くなり、僕のしばらくして延期となった僕のサバイバル試験の日がやってきた。ロイも僕と旅をする仲間だから一緒に試験を受けるらしい。僕らはマジードさんに連れられロイと初めて出会った隣国の森の中までやってきた。
「じゃ、私はそこら辺ぶらぶらしながら君らのこと見守っとくんで適当に生き延びてください。」
手を振りながらどこかにマジードさんは歩いていく。何か思い出したかのように彼女は急に立ち止まり、こちらを振りかえって
「この辺は夜になると強力な魔物や魔族なんかも出るって噂っすからお気をつけて〜」
そう言って今度こそ本当に去っていった。
僕とロイは食料となる魔獣や動物、魚のいる川を探した。
少し大きな川を見つけることができたため食料は確保できたが何かおかしい。前回この森には魔獣が結構いたはずだ。なのに今回は数十分歩いて1匹も遭遇してない。そのことをロイに伝えた。
「どうしてでしょうね。凄腕の冒険者が魔獣を狩り尽くしたか、物凄く強い魔物がこの辺りの魔獣を食い尽くしたか。そんなところでしょうか。」
ロイはそう言う。
「僕も多分そのどちらかだと思うよ。前者であれば良いんだけどね。ロイ、今日は警戒を怠ったらいけないよ。今は身を潜めているみたいだけど、夜に行動が活発になる魔獣なんかもいるからね。」
「はい。」
それから僕らは魚を獲り野営の準備をした。テントの周りを魔獣よけの結界で囲みご飯を食べながら夜を待った。夜になると僕とロイは交代交代で見張りをすることになった。夜もふけた頃また僕の番がやってきた。眠いしダルい夜になると魔獣や魔族が出てくるなんてマジードさんは言っていたが全く見当たらない。あー退屈だ。なんて思っていたら、どこからか動物の唸り声のようなものが聞こえてくる。いや、唸り声なんてものじゃない。地面が揺れ、森が響動めいている。僕はロイを起こそうとテントの中にロイを起こしに行ったがその必要は無かった。
「ロイ、多分…例の魔獣だ。行くよ。」
「はいっ」
僕らは森の中を駆けた。声の主のもとへ。しばらく進むと少し木が少ない少し開けた場所に出た。そこにいた、声の主が。それは魔獣なんてものでは無かった。大きな体躯に強靭な鱗を纏い、大きな翼を携え、2本の角が黒く輝く。そう。そこにいたのはドラゴンだった。だけど僕はすこしがっかりした。戦わなくてもわかる。多分このドラゴンは今の僕より圧倒的に弱い。明らかに戦意を喪失した僕を見てロイは
「フィンさんどうしたんですか。あいつけっこう強そうですよ。」
そう言う。
「ロイ、あいつと1人でやれるかい?僕は多分あいつに無傷で10秒ぐらいで勝てちゃうからさ。多分、1人であいつに勝てたらロイはもっと強くなれるよ。」
「……はい。やってみます。」
そう言うと剣を持ってドラゴンの元に走っていった。ドラゴンはロイに気づいていない。ロイが切りかかるがドラゴンの鱗に阻まれる。ドラゴンはロイに気づき攻撃を仕掛けるがロイは避ける。一定の距離を置きながら目を狙ったり首元に何度も攻撃を仕掛ける。次第に攻撃がドラゴンに効くようになってきた。だがロイがドラゴンを仕留める前にロイの体力の限界が来たようだ。ドラゴンが尻尾で攻撃してきたのをロイは躱しきれないロイは体にモロに喰らう。少し吹き飛ばされた彼を目掛けてドラゴンは噛みつこうとする。ロイは避けられない。
「迅雷」
僕はすんでのところで竜の首を切り落とす。
「ごめんなさい、フィンさん。俺、勝てなかったです。」
「いーや、こっちこそごめんね。無理押し付けちゃって。」
「それにしてもすごい技っすね。迅雷って」
「うん。マジードさんが教えてくれた技だ。相手に向かって一直線で超高速で切り付けることができる良い技だよ。」
僕はドラゴンの角や牙鱗なや羽などの売れそうな部位を剥ぎ取りロイに肩を貸して、キャンプへ戻った。
次の日はドラゴンがいなくなったからか魔獣が少しずつ湧いていた。僕とロイでどちらが魔獣を狩れるかの勝負もした。そして僕ら以外の冒険者とも出会った。彼らは珍しい魔獣や魔物を探してい狩って生計を立てているらしい。
今日は何事もなく夜になった。僕らがテントの中で寝ながら話をしていると、外から「キャッ」と女の子の声がした。ロイと2人で見にいくと。1人の女の子(?)が魔術結界の外で泣いていた。彼女は僕らの方を見ると
「助けて」
泣きながらそれだけ僕らに伝えた。僕らは結界を解き彼女をテントの中に入れて話を聞くことにした。
「その…追われてて。」
彼女がそう言うと外から声が聞こえてきた。僕がテントを出ると。テントの近くにさっきの冒険者のお兄さんたちがいた。
「この近くに魔族が来てないか?オッドアイの少女のような姿のやつなんだが。」
心当たりはあった。だけど僕は伝えるべきじゃない。そう思ってしまった。
「いや見てないですね。頑張ってください。」
それだけ僕が言うと彼らは探すため森の中へと消えていった。僕はテントの中に戻る。
その女の子は泣き止んでいて、ロイは少し驚いた顔をしている。
「フィンさん、この娘」
そう言って女の子に指差す。女の子はこちらを見る。彼女の目は片方ずつ色が違っていた。
「あの…ごめんなさい。私、夢魔なんです。でもオッドアイで珍しいのと魔力量が多いとかで人に狙われていて。でも、人を襲ったことも人に危害を加えるつもりもないんです。」
「フィンさんどうしますか、この娘。全てが嘘の可能性もあります。無抵抗の今のうちに殺してしまいますか?」
ロイは思ったより物騒なことを言う。
「ロイ。僕は人造人間だ本来存在しちゃいけない生き物だ。でも、僕は王様に生かされた。この娘のこと少し信じてみない?」
「わかりましたよ。」
そう言うと彼は剣に伸ばしていた手を引っ込めた。
「ありがとうございます。」
何度も何度も彼女は僕にお礼を言う。それから彼女を僕らのテントに泊めることにした。いろいろ話したけど彼女の話は本当っぽい。彼女の名前はリリス。ロイと同年代ぐらいの女の子のような見た目をしているし、中身もしっかりしているけど生まれてからはまだ5年らしい。僕らは一晩でかなり仲良くなることができた。次の日の朝起きると彼女はいなくなっていた。代わりに一つの書き置きが残されていた。匿ってくれたことへの感謝と魔族は日の光に弱いから去るっていうこと、安全なところを探しにいくからもう会えないかもしれない。そう書かれていた。
「なんか少し寂しいね。」
僕がそう言うと
「そうですね。魔族は悪いものだって思ってましたけど彼女は良い魔族でしたね。なんと言うかこれから魔族の見方が変わるような気がします。」
「うん。そうだね。」
僕らはまた今日も魔獣を狩っていた。その中で森の少し深いところまで来てしまった。休憩で森の中の大きな木に僕らが腰掛けていて、また狩りにもどろうとした時ロイが木の根につまづいた。何がきっかけかわからない。だけど彼の足元で何かしらの魔法が発動し始めた。
「痛ってててて。 あれ」
僕はロイを助けようとその魔法陣に飛び込んでロイを抱えたが魔法陣から出ることは出来なかった。
見慣れない植物に壁に伝う木の根のようなもの僕らはどこかに転送されたみたいだ。
「フィンさんここって……」
「うん。多分ダンジョンの中だ。」
「なんで…」
ロイは戸惑っているようだ。
「もしかすると、あの大きな木の下にダンジョンがあったのかもしれない。」
「けど、ここに来たからには攻略するしかないですよね。」
「うん。行こうか。」
このダンジョンはこの前兄さんと攻略したダンジョンに比べたら単純だった。延々と続く長くて少し太い道に所々に魔物がいる。道の脇には水が流れる川もある。出てくる魔物は強くても一昨日のドラゴンぐらいで、僕らは難なくダンジョンの中を進んでいった。だけどこの道本当に長い。僕とロイが少しずつ休憩してるにしても四日歩いてもまだ脱出できない。僕はまだ大丈夫だったけどロイは少しメンタルを崩していた。
「本当に脱出できるんでしょうか」
なんて弱音が増えてきたが、六日目ようやく大きな門が見えた。おそらくこのダンジョンをほぼクリアしたと言うことだ。
僕らが恐る恐る扉を開けると。そこは宝物庫だった。僕らは抱き合って喜んだ。金銀財宝と共にダンジョンから出ることを望んだがなかなかダンジョンから脱出できない。僕らは脱出する方法を探す中大きな宝箱が目についた。僕がその宝箱を開けるとその宝箱から煙が出てきた。辺りが煙で包まれた。視界がクリアになると同時に何か大きな物の影が見えた。ドラゴンだ。数日前のドラゴンより大きく多分あいつとは比べ物にならないほど強い。そいつはその大きな爪でロイを狙っている。僕はロイを後ろに突き飛ばしその攻撃を受けた。僕は大きく吹き飛ばされたし身体中から血が出ている。僕はそのドラゴンに全力を叩き込む。マジードさんから教わったもう一つの技で。
「紫電」
僕の全力の攻撃は剣がドラゴンの足を少し抉るだけだった。また僕はドラゴンに突き飛ばされた。ドラゴンが僕を目掛けて走ってくるロイもこちらに走ってきているが絶対に間に合わない。詰みだ。こんな化け物に勝てるわけない。あぁ短い人生だった。そう思い。ドラゴンの爪が僕の目の前まできた時。
「迅雷」
僕の首元にピタッと冷たい何かがあたる。その次の瞬間ドラゴンの腕が切り落とされる。
「いやーなんとか間に合ったっすね。」
「マジードさん!!」
僕は安堵したがなんか首の裏が痛かった。手を当てると血が出ていた。次の瞬間マジードさんはドラゴンを真っ二つにしていた。そしてこっちにきて
「立てるっすか?」
そして僕の方に手を差し伸べた。なんと言うか少し僕の心がドキドキしているような気もした。
「マジードさんもしかして迅雷で僕を対象にして助けに来ました?」
「うん。そうだよ本当によかった助けに来れて。」
やっぱりだ
「あの僕を対象にしたせいで僕の首裏から血が止まらないんですけど」
「えっごめんちょっと待ってて。」
マジードさんはポケットから慌てておっきい絆創膏とか包帯を取り出して多分勘で僕の首をぐるぐる巻きにした。
「ごめんね。私回復魔法使えないんすよ。」
「いやーとりあえず助かりました。」
それから程なくしてダンジョンは崩れて脱出することができた。財宝の中には貴重な魔法道具や武器なんかは無かったから3人で山分けにすることになった。
お城に帰るとピースさんと兄さんが待っていた。
「お帰り。本当に心配したんだからな」
兄さんはそういいながら僕を抱きしめてくれた。
「お帰りフィン。どうだ、今回は自分の弱さなんかも知れたんじゃないか?」
どこからか王様は突然やってきてそう言いながら僕の頭を撫でてはまたどこかに去っていく
「うん、王様。明日から僕はまだまだ強くなるよ。」
次の日からマジードさんの修行はもっともっと厳しくなっていった。あれから二ヶ月が経ちもうすぐ旅立ちっていう頃にはもう僕は多分あのドラゴンとも良い勝負ができるくらいには強くなっていた。
そしてついに僕の誕生日、つまり旅立ちの日の1日前がやってきた。朝は師匠が僕を起こしにきた。
「どうしたんですか師匠こんな朝から珍しいですね。」
「買い物に行くぞ、早く支度をしろ。」
そう言うと師匠は自分の部屋に戻っていった。僕は言われた通りすぐに支度をして師匠の部屋に向かった。
師匠は買い物に行くぞと言っていたがそれは僕の誕生日プレゼントを買ってくれるってことだった。僕らは街の武器屋に向かった。
武器屋で師匠が聞いてきた。
「今まで剣の使い方を教えてたがなんか他に使いたい武器はあるか?」
僕は悩ましい質問に顔をしかめる。
「弓はいいぞ。槍も案外良い。短剣なんかは王子も使ってるし中々良いぞ」
「うーん…どれも悩ましいけど、やっぱり僕は王様や師匠と同じで剣が良いな。」
「そうか。…お前はどの剣が欲しい。」
そう言われてもどれがどう違うのかわからない。
「うーん僕に剣の良し悪しはあんまわかんないから、師匠のおすすめが聞きたいな。」
「私のおすすめはコレだな。昔使ったことがあるが、中々悪くなかった。」
そう言って師匠は他の剣とは値段が違いすぎる一振りを選ぶ。
「イヤイヤイヤイヤ、さっすがにその値段の物を買ってもらうのは気が引けますよ」
「そうか?」
師匠は不服そうにそっとその剣を戻した。
「じゃあこれでお願いします、師匠」
僕は常識の範囲内でまぁまぁ値段のするシンプルなデザインの剣を手に取った。
「これか…うん、安い割にはよく出来てる。店主これをくれ。」
そう言うと師匠は快く買ってくれた。
「大事にしろよ」
「はい、ありがとうございます」
それから師匠は魔法道具や欲しかった本、そして冒険のための道具や服を買ってくれた。案外この人弟子に甘いんだよなぁ。
日も暮れて、城に帰ると僕の誕生日パーティがあった。今思うと師匠がプレゼントを買いに連れてってくれたのもパーティの準備を僕に秘密でするためだったのかもしれない。
王様は僕に魔力が宿ってると言う指輪を、兄さんは僕に兄さんとお揃いの短剣をくれた。ロイは少し良さげなポーチを、六将の人たちも僕にいろんな物をプレゼントしてくれた。
僕が明日に向けて荷造りをしていると、誰かが部屋にやってきた。僕が「はーい」とだけ返事をすると兄さんが入ってきた。
「どうしたの兄さん。」
「明日でお別れだからね。今のうちにいっぱい話しときたくて。」
それから兄さんとは出会いから今までの思い出をたくさん話した。
「なんて言うか今までありがとうな。フィンのおかげでこの一年楽しかったよ。その、お別れはちょっと寂しいね。」
「兄さん、僕も旅をして、次会う時は僕も兄さんと同じぐらい強くなって帰ってくるから。楽しみに待っててね。」
「俺もフィンに追い抜かれないように頑張らないとね。」
それからもまたしばらく兄さんと話して早めに床に就いた。




