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第二話 対面


 王様のお城に来た次の日の朝


 「おい!起きろ」


 王様が起こしに来たのだろうか体を揺さぶられる。


 「おはようございます」


 眠い目を擦りながら起き上がると赤髪で王様より少し身長の高い青年がいた。


「すみませんどちら様でしょうか。」


 僕は布団で体を守るように彼を警戒した。


「自己紹介がまだだったな。俺はこの国1番の料理人で国王補佐のコックだ。」


「えーとー…お名前がコックさん?」


「…あぁ。俺は元々奴隷で王様に助けられたクチなんだがよぉ。生まれてずっと奴隷だったからちゃんとした名前がなくてな。俺の名前をつけるってなったんだが、あのバカが…」

 

『お前将来の夢とかあんの?』


『みんながお腹いっぱい食べられるように料理人になりたい。』


『そうか、じゃあおまえの名前はコックだ』


「なんてバカみたいな決め方しやがったんだよ。」


 流石に可哀想だ。


「いーや、俺も悪いとは思ってるよコック。あの頃は若勝ったからね。」


 王様の声が頭の中に響く。


「いきなりテレパシーで会話に入ってくんなバーカ。びっくりするだろーが。」


 頭の上で手を左右に振りしっしっと王様を追い払う。


「話を戻すけど俺がお前にこの城のことを案内する案内役に選ばれちまったんだよ。朝飯前に城を案内してやるから、ほらっ行くぞ。」


「はいっ」


 (はいっ)と威勢よく言ってしまったがパジャマのままだったので、自分の服を探したがそういえば急に王様に連れてこられたことを思い出し、そのことを説明すると。


「ちょっと待ってろ。」


 と言い彼のお古とハイドさんのお古を借りて持ってきてくれた。案外このお兄さんは面倒見がいいのかもしれない。すぐに着替えお兄さんの後についていった。


「ここはキッチン俺の主戦場だ。こっちの食卓で俺の作った飯を王様とかハイドとか俺とかが食ってる。んで、こっちが王様の部屋、こっちの地下がハイドの部屋」


 すごい勢いで部屋を案内し始めた。


「おーいハイドー開けるぜー」


 ゴンゴンって大きくハイドさんの部屋のドアを叩く。


「どうしたんですかコックさんこんな朝早くに。あっフィンおはよう。」


 髪がボサボサのハイドさんが目を擦りながら出てきた。


「おはようございます。」


「いやぁフィンに城を案内しろって王様に言われたからよぉ」


「そうですか。」



「ちょっと入るぜー。」


 そう言うとづかづかと部屋の中に入ってった。部屋の真ん中あたりの床扉を指さして


「フィン、この下にも一個部屋があるんだけどその部屋には強力な結界が貼られてて王様しか入れないようになってんだ。よーしフィン次は俺の部屋行くぞー」

 

 コックさんの案内はサクサク進んでいく。僕はぺこりとハイドさんにお辞儀をしてコックさんについて行く。


「ここが俺の部屋だ、んでこっちのベランダから見えるのが中庭だ。」


 ベランダから中庭を覗くと誰かがいた。


「こっちの中庭でみんなよく修行してたりするぜ。ほら朝飯まであそこにいるお姉さんと修行だ。」


 そう言って僕の腕を掴んで2階から僕を放り投げた。


「おはよう、フィン。コックは相変わらず適当だな。」

 

そこには昨日の王様の秘書と思しき人物がいた。

 

「あれ昨日のお姉さんだ。」


「あぁ。今日からお前の戦闘訓練、勉強、マナー全ての教育係になるピースだ。」


 よくよくみると、そのお姉さんはエルフだった。それに昨日は気づかなかったけどよく見ると右手が義手だ。戦闘訓練なんてできるのかな?


「右手の義手のことが気になるようだね。」


「うん。よくわかったね。」


「人の心を読む能力を持っててね。心配しなくても大丈夫だ。君がいくら高性能な人造人間とはいえ指一本で一方的に殺すことができるぐらいの力はあるさ。やってみるか?」


「や、ヤメトキマス」


 僕の人生と言ってもまだ三ヶ月ぐらいなものだけれども、その中でも一番の恐怖を彼女に覚えた。


「あ、これからよろしくお願いします。」


「あぁ。それじゃあ修行はまず簡単な護身術から始めるよ。」


 アルの元でも戦闘訓練の最初に護身術は習ったがその時のものよりも実践的でわかりやすかった。1時間ほど時間が経った頃ピースが


「今日のところは終わりにする。もうすぐ朝ご飯の時間だからね。朝ご飯を食べ終わった後は勉強をするぞ」


 ピースに案内され、食卓に向かうとそこには見知らぬ2人の女性がいた。


「君が噂のフィン君?」


 若いよく日焼けした20歳前後の女性が話しかけてきた。


「はいっ!そうです。」


「ごめんね初対面で驚いたかな?私はこの国の六将の1人ヘリィ・アーク、気軽にヘリィって呼んでね」


 六将っていうのはコック、ヘリィ、マジード、ナイト、トーチ、シグマ、この国が保有する王様を除く最高戦力の6人のことだ。この国の守り手である六将の1人がこんなにも若い女性だったとは知らなかった。


「こちらの方も六将の方ですか?」


「はい、自分はマジードって言います。そこにいるピースさんに代わって六将を務めています。自分もピースさんにしごかれてきたんで君の兄弟子みたいなもんっす。よろしくです。」

 

 僕と同じ白髪の身長の高いお姉さんは元気にそう答えた。

 

「えぇーピースさんって六将だったんですね。」


「あぁ片腕をなくした後も無理して六将を続けていたのだけど、後継が世に出しても恥ずかしくないほどには育ったので一昨年引退してな。」


 マジードさんが恥ずかしそうに頭を掻く。


「そういえば他の六将サン達はきてないんですか?」


「そうだねぇシグマちゃんって言う可愛い子がいるんだけどその子はいっつも夜遅くまで魔法の研究してて起きるのが遅いから多分こないね。あと、ナイトさんって言うワイルドな人もいるんだけどいろんな仕事してるから多分忙しくて来なくって、トーチさんって言う強い人もいるんだけどあの人は自由だから多分こないねぇ。そして、コックさんは今ご飯作ってるから朝ご飯と一緒にくるよ。」


 ヘリィから六将の人達の説明を受けていると後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「おっ、おはようフィン。よく眠れたかい?」


 昨日ぶりの王様だ、なんか安心感がある。


「うん。」


「それはよかった。どうだい六将のみんな面白い奴らだろ。」


 面白いと言われてもピンと来なかったから素直に感じたことを話した。


「うん。みんな良い人だよ。」


「それはよかった。今日君が会った六将のみんなはピースを除けば優しくて良い奴らだけど」


「おい、さらっと私を外すな。」


 ピースさんと王様は結構仲がいいのかな?


「トーチと、まぁシグマもかなりの曲者だから気をつけなきゃいけないよ。」


 曲者と言われたら気になってしまった。

 

「どんな感じなんですか?その2人は。」


「まぁ…どっちも変態だな。その上トーチは気難しい。」


 予想外の答えに少し困惑した。


「そう…ですか。」


 変態か…どんな人たちなんだろ。


「まぁ、フィン君も会えばわかると思うよ。」


「ナイトさんって人はどんな人なの?」


「ナイトはいいやつだよ。僕と同じ獣人で豪快だけど優しいやつだよ。」


「王様って獣人だったんですか?」


 王様はどう見たって純人間だ。王様が獣人だなんて知らなかった。


「うん。知らなかった?僕は猫の獣人だけど今は猫耳も尻尾もないからね。でもナイトはライオンの獣人で僕と違って、そうだなぁだいぶライオン!!って感じだよ。」


 王様がよくわかんないことを言っているといい匂いが漂ってきた。


「飯できたぜー」


 そう言ってコックさんは自分の分のご飯をお盆に乗せ食卓に持ってきた。


「フィン、ウチは自分でキッチンまで飯取りに行かなきゃいけないんだ。」


僕があたふたしてると王様が説明してくれた。


「王様でもそうなんだね。」


「ウチは料理人がコックしかいないからね。」


「えっ!そうなの、なんで?」


「コックが言うにはアイツは一人で料理する方がパフォーマンスが上がるタイプだからこの城の料理人は俺一人で十分だって。それにあいつの事を俺は信用してるからな。」

 

 やっぱり六将の人は変な人が多いのかもしれない。コックさんのご飯はどれも美味しく、ペロリと食べ終えてしまった。ご飯を食べた後はすぐにピースさんとのお勉強が始まった。


「今日はそうだなぁこの世界の地理の勉強をするぞ。まず主要な国について教えよう。」


 僕がいるこの国はザイカという国で20年ほど前にプレ・タゴニスが建国した国だ。この国は100年ほど前に滅んだ国の跡地に王様が国を作ったものらしい。まだ歴史の浅い国であるものの世界で最も武力を保有している国であり、王様は常人とは比べ物にならないほど頭もいい。故にこの国はたった20年で大国と言われるまでに発展した。


 だけどこの国よりも発展している国は2つある。

 一つ目は、ザイカの近くに位置するラント。王様の出身国でもあり、向こうの王様とはプレさんが青年の頃から面識があり、向こうの国で兵士をしていた時期もあるらしい。だから、プレさんが王様になるのにも力を貸してくれたそうだ。


 そしてもう一つが西にある超大国ラーフブ。この国には王様もいるけど、王様ではなくて不死者だという噂のある3人の権力者が実質的な支配をしているらしい。


それと大国ではないもののこの国と関わりのある3つの国のことも教わった。


一つ目は魔法国オフアン。この国は世界一の魔法使いであり、人間より精霊に近い存在である?リリィ・クロスが齢10歳で建国した国だ。まぁ建国って言っても大きな災害で国民の半分近くが死に、多くの建物が倒壊し存続が困難になった国の復興に魔法や彼の作った魔道具で大きく貢献した身の心を掴み王になった。故に彼もうちの王様と同じく英雄と呼ばれている。彼は元々うちの王様の下で働いてたみたいで、王様もよく彼の元に遊びに行くほど仲がいいらしい。


 そして、二つ目が世界一の剣士レバスが治める島国ラソル。僕のいる国から南西にある小国だ。レバスも幼い頃うちの王様と旅をしていたらしい。そしてリリィの育ての親でもあるらしい。彼も王様やリリィと同じで英雄と呼ばれている。


そして、最後が妖精の国バンデッドランド。こちらも南西にある島国だ。正式な名称はわからないけど人間はそう呼んでいるらしい。妖精の羽が高く売れるってことで昔は人間がたくさん上陸し妖精を殺していたそうだ。だけど、それに怒った強い力を持つ女王が島に入った人間の一切合切を殺し、その後人間が入り込もうとしたら問答無用で殺すようになったらしい。だけどうちの王様だけは女王も殺すことができなくて妖精の国に入れたらしい。そして今王様は妖精と人間の交易を再開できるように頑張ってるらしい。


 王様の出身国のラントと王様同士が仲がいいオフアンとラソルは同盟を組んでて、ラーフブとは結構敵対してるらしい。


「よし今日のところはここら辺で終わるぞ。明日は私も休みたいから、朝飯前の戦闘訓練だけはやってそっからは自由にしていいぞ。」

 

 そう言うとさっさと帰って行った。


 外を見るともう日が暮れていた。お昼時をだいぶ過ぎているが、そういえばまだお昼ご飯を食べていなかった。なんか無いかなーと期待しながらコックさんを探しに厨房に行くと、コックさんとハイドさんがいた。


「おっ、フィンお前昼飯ん時いなかったな何してたんだ?」

 

「ピースさんとお勉強してたらいつの間にかこんな時間になってました。」

 

「あー、ピースのやつ普段2食しか食わねぇからお前に飯食わせるの忘れてやがったな。注意しとくわ。そんでお前はお腹が空いてノコノコここまできたわけだな。」


 図星で少し恥ずかしくなった。


「お恥ずかしながら。」

 

 僕はお腹を押さえながら言う。とハイドさんが僕の方を向いて


「じゃあ僕が今焼いてるケーキでも食べるかい?」


 神だ神がいた。初対面の時から感じてたけどこの人めっちゃいい人だ。


「えっいいの⁉︎」


「もう少しで焼けるからちょっと待っててね。」


「ありがとうハイドさん。」


 そんな僕を横目にコックさんが


「あんま食べ過ぎんなよ。」


 と小言を言ってきた。


「ハイドさんっていつも日中何してるの?」

 

 ハイドさんと一緒にケーキを食べている途中に、彼のことを知りたい。そう思ったから聞いてみた。


「そうだねぇ、基本的には勉強したり、ゲームをしたり、武器の手入れをしたり、後は地下の訓練室でトレーニングしてるね。」


「地下にトレーニング室があるの?」


 コックさんからは案内されなかった部屋だ。


「うん。僕の部屋とは反対の棟の地下に、昔父さんが使ってたものがあるんだよ。」


「明日僕暇だからさ、一緒にトレーニングしてもいい?」


「もちろんだよ。」


 彼は優しく微笑んでくれた。

 

 ケーキを食べ終えお皿を片付けている時、いきなり目の前に王様が現れた。


「おっいたいたフィン、ハイド今から一緒に行くところがある。」


「えっ、どこに行くの?」


「ハイドの呪いを解きにだよ、誕生日には少し早いけど。」


「本当ですか父さん。でもなぜ、フィンも一緒に?」


「お前に呪いをかけた奴がなぜかフィンのこと知っててな、それでフィンに唾つけときたいみたいで、お前の呪いを解く代わりにフィンと話をさせろって」


「フィン巻き込んでごめん。一緒に来てくれるかい?」


 ハイドさんの目は真剣だ。


「もちろん。そのハイドさんに呪いをかけたやつって誰なの?」


「世界最大の暗殺組織の首領ジェーン・ドゥって呼ばれてるやつだよ。」


「暗殺組織⁉︎それって危ないんじゃ」


「うん危ないよ。危ない危ない」


 王様は軽かった!


「大丈夫だよフィン僕のせいで君を巻き込んでしまったわけだから僕が命に変えても君を守るよ。」


 やっぱりハイドさん外見も内面もめっちゃイケメンだ。


 王様は僕とハイドさんを連れて夜の平原へとテレポートした。ここはどこなんだろうと周囲を見渡すと王都が遠くに見えた。人造人間の僕をもってしてもギリギリ見えるぐらいだから王都から遠く離れた辺境の地なんだろう。そう思っていると目の前に一人の男が現れた。

 

「あれれっ、おめーの所の頭は来ないの?」


 王様がその男に聞くと


「あぁまだそこの小僧の前に姿を晒したく無いらしいそうで。」


 そう言って通信機のようなものを取り出した。その通信機からは


「よく来たねフィン君。そして久しぶりだねハイド君、プレ•タゴニス。」


 と男のものか女のものかはっきりしないモヤのかかったような声が聞こえてきた。


「ハイド君の呪いを解くその条件は一つだ。フィン君と一対一で話をさせてほしい。」


「わかった。」


 僕は答える。ハイドさんは僕を申し訳なさそうな目で見ていた。


「ジェーン・ドゥ、一つだけ誓えフィンに呪いや魔法をかけるなよ。」


 王様が少し荒っぽい声で言うと


「もちろん。そんなことはしないさ。」


 と通信機から返ってきた。僕は暗殺者の男からその通信機を受け取ると、みんなに声が届かないところまで移動した。


「ありがとうね。条件を飲んでくれて。」


 彼(?)の態度は予想していたものより優しいものだった。


「うん。ハイドさんにも王様にもお世話になってるからね。」


「そうかい。早速だが本題に入るね。私は不死者だ。私の命にはあのプレ・タゴニスの刃すら届きえなかった。」


 僕は少しだけ驚いた。最強と謳われる王様でさえ届かないなんて。


「フィン君、君はスキルっていうものを知っているかい。」


 知っている。アルの下で習った。


「はい。その人の経験や功績、地位によって発現したり、その人が本来持っているものが命の危機などで発現し使えるようになる特殊な能力のことですよね。」


「うん、その通り。一般的な冒険者や兵士は平均で持ってないもしくは1個持っているとされていてるものだ。ちなみにプレは300個ほど持っているよ。」


 やっぱやべぇよなあの王様。


「君が本来持っているがまだ発現していないスキルの一つは、私の命にも届きうる。君には沢山の命を奪ってきた悪者の私を倒せるほど強くなってほしい。今日君に伝えたかったのはただそれだけだよ。」


「えっ⁉︎」


 ジェーン・ドゥの思いもよらぬ発言に強めに驚いてしまった。


「本来ならハイド君にその役目を担って欲しくて彼を手元に置いてたんだけど。プレに取られちゃったからね。」


 僕が呆気に取られていると彼(?)はどんどん話を進め、


「もう帰っていいよ。」


 いつのまにか話は終わっていた。


「じゃあね〜」


 彼女との通信も切れ、僕はみんなの元に戻った。そして、その場にいた暗殺者が去ろうとした時。


「僕が犯罪者をを逃すわけないだろ。」


 そういうと王様は地面に落ちてる石を拾った。


「危ないかもしれないから、下がってて」


 王様から少し離れたところでハイドさんが結界を張ってくれた。


「このバリアの中にいれば安全だから安心して」


 そうやって僕の手を握ってくれた。


王様は手に持った石を投げると暗殺者は身体中に穴が開きその場に崩れ落ちた。


「やっべ力の加減ミスったな」


 そういうと魔法を使いその男の傷を塞いだ。


 その男の目が覚めると、王様は


「君たちのアジトの場所吐いてくれよ。そしたら普通に牢屋に入れてやるから。」


 と言うと、男は何かを覚悟したような表情を見せ、自分の顔の前に両手を開いて持ってきた。その瞬間爆発音と煙が上がりその男の首が飛んでいった。ハイドさんは慌てて僕の目を塞いだが、少し遅かった。


「あー、こりゃ治せねーな。」


 そういうと死体の元に近づき


「ハイドたち先帰ってて。俺はちょっと色々やらないとだから。」


 そう言って僕らの方に手をかかげると魔法を使い僕らを城まで転送させた。

 

 王様の魔法で城に戻るとすぐそばにコックさんがいた。

 

「おっ、お前ら帰ってきたか、もうすぐ飯できるから手洗って食卓に座ってな。」


 そう言うとコックさんはキッチンに戻って行った。彼に言われた通り手を洗い食卓に向かった。


「ごめんな、フィン俺のせいで嫌なもの見せちまって。」


 ハイドさんは申し訳なさそうに言う。

 

「ううん。…大丈夫。でもちょっとだけ気持ち悪いかな。」

 

「僕も最初はそうだった。」


 最初はってことはジェーン・ドゥの言ってた通りハイドさんは暗殺組織に昔いたのだろうか?

 

「ジェーン・ドゥが言ってたんだけど、ハイドさんって元々あの組織にいたの?」

 

「うん、少し昔の話になるけど…」


 


 私には才能がなかった。私の父は英雄と呼ばれる男だ。世界で一番強い人間だと言われている。だが私には才能はなかった。いや実際にはあった。勉学では同年代の子どもの中でも上位に入れるほどのものが。剣術でも初めて数ヶ月で大人の一般的な兵士に勝てるほどのものが。力も13歳時点で大の大人4人と綱引きをして勝てるほどのものが。魔法でも、そこらの魔法使いが習得に数日かかる魔法を2、3時間で習得できるほどの才能があった。私には才能があった。だがそのどれも私の父の才能の前ではちっぽけなものだった。


 父も父の家臣も父の友もみんな私に優しくしてくれた。だが私には耐えられなかった。皆の心のどこかにある私への期待に、父に比べる才能のない私への同情が。父も誰も、誰も悪くないのだ。ただ、私の心が弱いただそれだけの問題だった。ただ、私は全てから逃げ出したかった。


 とうとう私は父の国を出た。私は隣国で身分を隠し日銭を稼ぐ冒険者となった。ある日高額の護衛の依頼を見かけ、その依頼を引き受けた。だがその依頼は失敗した。


 私は死神を見た。大鎌を携えた圧倒的な力を持つ死神を。初めて見る父の心臓に届きうる刃を。私は依頼を失敗し、明日飯を食う金がないことなどどうでも良くなるほど、その死神の力に感動した。私はその死神に殺しの術を教わろうと思いそのことを口にしようとする前にその死神が声をかけてきた。


「私の元で働かないか?君は特別だ。君ならいずれ私をも越えられるだろう。」

 

 私は迷わずその手を取った。圧倒的強者のくれたその一言は私を自分が世界に認められたかのような気持ちにさせてくれた。その言葉に私は救われた。私は彼女の元で人を殺す術を教わりながら雑用を続けた。


 2年と半年が過ぎた頃、彼女が私に初めて殺しの仕事を持ってきた。彼女が持ってきた三つの依頼の中の1つは私の祖国つまり私の父の国でのものだった。私は父との決別を心に刻むため父の国での仕事を受けた。彼女はそれらの依頼は比較的安全なものだと言った後にけれど油断はしちゃダメだと言った。


 私は確実に任務を遂行するため長時間計画を練った。私の計画は完璧なはずだった。 だがいざ殺しに向かうとその場所には彼がいた。 父が、この国の王が。


「久しぶり。まぁ、元気にはしてるみたいだね。」

 

「なん…で、父さんがここに?」

 

「この国にはね僕が作った結界が貼ってあってね。誰がこの国に入って出ていってるかが大体わかるんだ。それにお前はちっちゃい頃からよく1人でうろちょろしては迷子になってたからね。それでどうしようかと思った僕は君の魔力を探知する精度を上げたわけさ。だから、僕は君が世界中のどこにいても数秒あれば君を見つけられるってぐらいには君の魔力を探知できるようになったんだよ。」

 

「そうですか…」

 

 そう言って私は武器を捨て下を向いた。

 

「あら、戦わないのかい。君のところのボスは逃げ出したやつを殺すって噂だぜ」

 

「戦ったところで父さんに敵うわけがない。」

 

「賢明な判断だね。…でも僕はあんまりそういうの好きじゃないよ。」

 

 父は不服そうな顔を僕に向けた。

 

「いいんだ僕は貴方や貴方の部下達みたいに勇敢じゃないから。」

 

「で、父さんは僕をどうするんですか。」

 

「どうもしない。君を殺すメリットはない。君にはもう何も望まない。ただ父として僕の国に帰ってきて欲しい。ただ幸せでいて欲しい。」

 

「父さんには分からないと思う、と言うか誰にも理解されないとわかっているでも、あなたのもとでは僕は幸せになれないんだ。僕は、僕は」

 

 なぜだか分からない。勝てないとわかっているため父とは戦痛くなかった。戦いたくなかったのに、僕は父に刃を向けるしかなかった。いや正確にはあった。だがそれ以外の選択肢をただただ否定したかった。

 

「そうか、ごめんな。」

 

 そう言って父は僕の攻撃をいとも簡単に躱し僕の腹に一撃を入れ左肩に抱え、なんかしらの魔法を僕にかけた。それからの記憶は無い。だがその間に僕には呪いがかけられていたらしい。


 


「なんかごめんね。嫌なこと聞いちゃって」

 

「大丈夫だよ、昔のことだ。それに、もう呪いも解けたことだし。それに全部僕のせいだから。」


 大丈夫だと言う割には色々感じてそうだ。

 

「僕はハイドさんはそんな悪くないと思うよ。だってあんな人が父親だったら誰だって嫌になると思うよ。」

 

「ごめん、…ありがとう。」


 少し表情が明るくなった。

 

「僕ね、王様みたいに強くなりたいんだ。」

 

「僕もそうだった。」


 また、悲しそうな顔をする。

 

「ハイドさん。僕と一緒に強くなっていつか王様を見返そうぜ。」


 僕は僕にできる精一杯でハイドさんを励ました。

 

「それは良いね。」


 ハイドさんの顔に笑顔が戻った。それは、空元気なのかもしれないし彼の優しさかもしれない。だけど僕はそれが嬉しかった。

 

「そういえばさ、ハイドさんの呪いが解けたじゃん。だからさ、明日街に遊びに行かない?」

 

「そうだね。買い物にでも行くか。」

 

 そうしてハイドさんと明日何するかを話していると。

 

「おう、お前さんがフィンか」

 

 初めて聞く声が後ろから聞こえてきた。

 

「はい、そうです。」

 

 そう言いながら振り返るとそこには服を着たライオンが立っていた。

 

「えっ⁈」

 

 思わず僕は立ち上がって驚いた。

 

「すまん驚かせたな、お前さん俺みたいな獣人を見るのは初めてか。俺はナイト、よろしくな。」

 

 そう言って彼は大きな手を僕の方に出してきた。

 

「僕はフィン。今日からここでお世話になります。よろしく。」

 

 そう言って僕は彼の手を握った。肉球は…なかった。

 

 それからしばらくナイトと話していると、王様が帰ってきた。

 

「おかえり、王様。」

 

「ただいま。すまんな嫌なもの見せちゃって。」


 ハイドさんと似た事を言う。

 

「ナイトと話してたのか。どうだナイトこの子いい子だろ。」

 

「おう、お前が養子を迎えるなんていきなり言うもんだからどんなやつかと思ったら面白え良い子じゃぁねぇか。」

 

「えっ僕って王様の養子になるの?」


 確かに僕が育てるとか言ってたけど養子になるの僕?

 

「あれ言ってなかったっけ。まぁ養子って言っても君の存在を世界に知られたくないから、公表はしないけれどこの城の中じゃ君は僕の子供だぜ。」


 この人、案外大事な事を後々伝えるよなぁ。

 

「えっ本当に。」

 

「あぁだからお前には最高の教育を受けてもらおうと思ってピースにお前の教育係になってもらったんだ。」

 

「これからはハイドとは兄弟になるってことだから仲良くしろよ。」


 なんか、少しだけ嬉しかった。

 

「うん。」

 

「はいっ。」

 

 その日の夜僕とハイドさんは親睦を深めるべくハイドさんの部屋で一緒にゲームをすることになった。


 夜も深まり、僕はハイドさんと一緒に寝ることになった。

 

「フィン。」

 

「どうしたのハイドさん。」


 寝っ転がりながらハイドさんの方を向く。

 

「これから兄弟になるんだし。ハイドさんなんて呼ばなくて兄貴とかで良いよ。」

 

「じゃあ兄さんって呼ぶね。兄さん。」


 少し気恥ずかしかった。

 

「なんか恥ずかしいね。」

 

「そうだな。」


 僕はその恥ずかしさを紛らわす為に聞いてみた。

 

「兄さんは将来の夢とかあるの。」

 

「うん。あるよ。僕は今王子じゃなくて父さんの部下って扱いなんだ。それで今父さんの元で偵察とかの仕事をしてるんだけどね。僕も強くなっていつかは六将になってもっと父さん役に立ちたいんだ。」


 やっぱりそうだ、兄さんは王様に執着し過ぎている。

 

「そっか。」

 

「そう言うフィンは将来の夢はあるのかい?」

 

「僕はね王様みたいに旅をして、強くなって色んな土地で素敵な仲間と出会って、王様になりたい。なんか楽しそうだから。」


 僕は昨日、王様に救われた。憧れるのは当然だろう。

 

「そんな簡単なものじゃないと思うけど、素敵な夢だね。」


 そう言った彼の表情は言葉とは裏腹にどこか暗かった。

 

 その次の日、朝の戦闘訓練をピースさんと兄さんと一緒に行い、朝ごはんを食べた後僕は兄さんと街に向かった。兄さんは自分の姿を見られると面倒だって言ってフードを被っていくことになった。


 今、僕はお下がりの服を着ているから兄さんが何着か服を買ってくれた。それからお昼ご飯を食べるためにお店を探していると見覚えのある暗い路地があった。

 

「兄さんこっちきて」

 

 そう言って僕は兄さんの腕を引き走り出した。

 

「フィンそっちはの路地は危ないよ。あっ、ここは…」

 

「うん、僕と兄さんが初めて会った場所。まぁ初めてって言っても一昨日だけど。」

 

「ありがとうね、僕を見つけてくれて。よっし、お昼ご飯食べに行こう。」


 そう言って手を繋いで裏路地から抜けようとすると。

 

「止まれ」


 行きなり、後ろから声が聞こえてきた。

 

「久しぶり。王子サマ呪い解けたんですって?そしてお前がフィンか、初めましてだな。」


 しばらく日を浴びてない兄さんよりも青白い顔をした、全身真っ黒な衣装に身を包んだ青年がいた。

 

「初めまして。あなたは?」


 その不審者に警戒しながら聞いてみた。

 

「トーチ、ザイカの六将が一人トーチだ。」

 

「それでなんのようだトーチ。」


 兄さんがトーチに睨みながら聞く

 

「なんのようでもないですよ。そういえばフィンへの挨拶がまだだったなぁと思って。ただそれだけです。それじゃあ。」

 

ヘラヘラしながらそう言うと、彼は暗闇の中に消えていった。

 

「トーチはいっつも何考えてるかわかんないし、残忍なやつだから気をつけないといけないよ。」

 

 急な挨拶の後、僕らは昼食を食べ、しばらく遊んだ後夕食前にはお城に帰り始めた。食卓に向かうと見知った六将の中に一人だけ知らない女性がいた。ヘリィが僕を見つけ、その人に


「あ、シグマちゃん、あの子がさっき話してたフィン君だよ。」


 そう言うとシグマと言われた女性は律儀に椅子から立ちこちらを向いてから

 

「あ、あの私はシグマって言います。普段魔法の研究をしてます。」

 

「よろしくねシグマさん。」


 僕がそう言うと彼女は少し顔を赤らめめそそくさと席に座った。

 

 それからしばらくはピースさんと訓練をしたり勉強をしながら、夜や休みの日は兄さんと遊んで過ごすそんな日々を過ごし、六将の皆さん(主にナイトやヘリィ、マジード)とはだいぶ仲良くなり、兄さんとは本当の家族のように仲良くなっていった。


 2ヶ月ぐらいが過ぎた頃。

 

「よし、フィン今日の勉強はこんくらいだ。」

 

 ピースさんがいつもより早く勉強を切り上げようとした。

 

「あれっ、早いですね師匠。なんか用事でもあるんですか?」


「あぁ少しいくところがあってな。そうだお前も来い。」


「?…わかりました。どこにいくんですか?」


「墓参りだ。ちょっと待ってろ。」

 

 そう言うと師匠は自分の部屋から酒をもってきて、僕の手を握りながら森の中にに魔法でテレポートした。

 

「少し歩くぞ。」

 

 そう言うと師匠は歩き出し、僕はそれについていった。

 

「誰のお墓なんですか。」

 

「旧友だ。そしてお前の祖父だ。」

 僕が『?』って顔をしてると

「お前の生みの親アル・ミーケの父ソル・ミーケだ」

 

 あぁ、戦死したっていうアルのお父さんか

 

「どんな人だったんですかソルって人は。」

 

「王の仲間の中でも私に次いで、2番目に古株の男だ。強くて争いごとご好きで豪快なやつだった。」


 アルとは似ても似つかない性格だ。

 

「そうなんだ。」

 

「アルはソルが戦場で死んだことで王を恨んでたんだろ。」

 

「うん。その恨みから僕が生み出された。」

 

「だがソルが戦場で死んだのは王の優しさだ。」

 

「どう言うことですか?」

 

「王は知っていたか知らないかわからんが私はソルからとある相談をされててな。『多分もう俺は長くない。』ってな。だから王は戦好きのあいつに死に場所を与えたんだ。」

 

「そっか。」

 

「ほら、もうすぐ着くぞ。」

 

 そこには墓石が数基とそのそばに人影が3つあった。

 

「あれ王様にコックさんに兄さんじゃん。」

 

「おーお前らも来たのか。」

 

 王様は僕らに手を振る。

 

「もちろんだ。今日はこいつの命日だからな。」

 

 師匠は酒を墓前に添える。

 

「ここのお墓は王様達の仲間の人たちのお墓なの?」

 

「あぁ、そうだよ。僕らは今まで多くのものを失ってきたからね。ここに眠ってるみんなは僕やコック、ピースからしたら家族のような奴らだ。」

 

 それからしばらく皆んなが旧友を悼んだ後。みんなで城に戻った。

 

 次の日僕は師匠に聞いてみた。

 

「そういえば、なんで昨日僕を連れていったんですか?」

 

「お前がもしかしたら王を勘違いしているかもしれないって思ったからな。あと、お前とソルは仮にも家族だ。家族のことは知っておくべきだと思ってな。」

 

 師匠の優しい言葉に僕は少し驚いた。

  

コック(26) 身長178体重73


ピース(256)  身長159体重?


ヘリィ・アーク(22)  身長163体重56


ナイト(42) 身長230体重140


マジード(18)  身長171体重63


トーチ(24)   身長164体重51


シグマ(21)  身長154体重52


ジェーン・ドゥ(?)  身長 ?体重 ?

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