第一話 目覚め
その日未来の英雄が、世界に終わりをもたらす魔王が生まれた。
いや、正確には生み出されてしまった。この世界で禁じられている錬金術によって。 喜び抱き合う研究員、無機質な天井、自分の体に繋がれた管、化粧と目つきのキツイ長身の女、10歳ほどの肉体を持つ白髪のその少年が生み出されて初めて見た光景だった
自分の方へ歩いてくる長身の女に自分の名前を聞こうとしたが口元の器具のせいか、発声の仕方がまだ身についてないからなのか、声を出すことは叶わなかった。そんな彼の様子を見て女は屈んで顔を近づけ
「はじめまして、私の名前はアル・ミーケ…そうねあなたの母親みたいなものよ。そして、あなたの名前はフィン、これからよろしくね。」
そう言うと彼女は彼の目を覆うように手を置き
「生まれてきたばかりで疲れているでしょう。しばらくはお休みなさい。」
そう言って寝るように促すと足早に去っていった。
この世界には英雄がいる。英雄と一口に言ってもそのあり方は様々で、ある者は戦争で武勲を立て、ある者は圧政者を討ち、ある者は滅んだ国を魔法で復興し英雄と呼ばれるに至った。そんな英雄の中でも最強と謳われるのが『プレ・タゴニス』と言う男だ。彼は、世界中を旅し迷宮を踏破し莫大な富を得て、数多の魔神、悪魔、精霊の力をその身に宿し、数々の武勲を立て一国の王にまでなった。
先程の「アル・ミーケ」とか言う女はプレの国の貴族だ。彼女の父親は猛将として王様と肩を並べてたが、父親が死んで彼女が後を継いだ。だが彼女に戦闘能力はなく、性格も人の上に立つのに向いてない。そのせいで、父親の時代には三大貴族と言われてた彼女の家も今では没落寸前となっている。
そして彼女は王を恨んでいる。彼女の父親「ソル•ミーケ」は戦場で死んだ。だが、その戦場には王もいた。最強の英雄である「プレ•タゴニス」が。だから、王は父を見殺しにした。彼女はそう思ってるらしい。
彼女のそんな恨みから作り出された存在が「フィン」だ。フィンはアルが王を殺すため二百余名の少年少女の命を対価として作りだした人造人間であるが、彼はまだそのことを知らない。
それにしても、不老不死にして世界最強の王である僕を殺すために生まれてきたなんて生まれながらに厄介な運命を背負ってて少し可哀想だね。
チュンチュンと言うよりはポッポーと言うような可愛く無い鳥の鳴き声に起こされてしまった。目を開けると先ほどまでの閉鎖された部屋の無機質な天井とは違い日が差し込むベッドと机と椅子のみが置かれた小さな部屋で暖かみのある木の天井が目に映った。
先ほどまで自分の体に繋がれていた器具はもう無く自由に動く事も立ち上がる事もできた。ベットから降り部屋の中を見渡すと机の上に小さな鏡があることに気がついた。外に出る前に鏡の前で発声練習をしてみた。
「あぁー おっ喋れるじゃん」
自分の声が思い通りに出ることを確認してドアを開けると若い男女がドアの前に立っていた。
「初めまして私たちが今日からフィン様のお世話をさせていただきます。早速アル様の元へ向かおうと思うのですが、その前に何か聞いておきたいことなどございますでしょうか?」
そう言って僕に優しく微笑みかけた。
「お兄さん達は僕が起きるのをまだかなーってドアの前で待ってたの?それとも監視カメラとかがあって僕が起きたのを把握してから来たの?」
僕は少し気になったことを聞いてみた。
「フィン様が起きたのを確認してからここまできました。先程の部屋には安全のためカメラが設置されておりましたので。」
監視カメラがついてるのかなんか少し嫌だな。そう思ったが僕は悟られないよう
「いやぁ〜よかったよ。もしずっと待ってたって言われたらずっと寝てたのが申し訳なくなっちゃうからね。」
そう明るく返した。彼等とは少し打ち解け雑談をしながらアル・ミーケの元に向かった。
僕が寝ていた部屋の3倍程の大きさの部屋で彼女は机に座り酒を飲んでいた。
「こんにちは僕のご主人様。なんのようですか?」
「あら、随分と早い目覚めね、フィン。 あなたにはこれからの事を話しようと思って呼んだのよ。」
「これからって僕が王様を殺せるように力をつけるためのことですか?」
「その通りよ。まずあなたには教育を受けて貰います。一般的な子供が受けるような教育を。あなたには生まれながらに一般的な知識は備わってると思う。でもそれは完璧なものでは無い。学ぶ力をつけて欲しいの。」
確かに僕には生まれながらにある程度の常識や知識は備わっていた。
「うん、わかりました。」
「そして、それと並行してあなたには戦闘の訓練を受けて貰います。大丈夫よあなたの体はとても丈夫に作られているから。3年間ほどは勉強と戦闘の両立をして貰います。」
「わかりました。」
その後はどうするんだろう。気になったが追々説明されるだろう。そう思って聞かないことにした。
「今日はもう遅いから休みなさい勉強は明日から行います。」
僕は頷き2人と一緒に部屋に戻った。
次の日から勉強が始まりその2日後から戦闘訓練は始まった。勉強はもともと僕に備わっている知識の分もあり猛スピードで勉強は進んだ。
戦闘訓練もまずは素手での戦闘の仕方から教わり、最近いろんな武器の扱い方を習い始めた。
勉強と訓練を繰り返して、あっという間に二ヶ月が過ぎた。だけど僕は今までアルの屋敷の敷地外に出たことがなかった。それを不満に思いアルに相談してみた。
「ねぇ、僕が生まれてもう二ヶ月だよ〜。まだ外に出してくれないとか酷く無い?僕は王都とか言ってみたいんだけど」
「ダメよ、王都なんて。そんな王様の近く行かせられないわ。王様がフィンを見たら多分、すぐに純粋な人間じゃ無いってバレて怪しまれるから。」
最強の英雄なら、そんぐらい見抜けてもおかしくないのかな?
「まぁ、それもそうだね。」
僕が諦めかけた時、アルは何かを思い出したようで
「そうね、後一月勉強とかを頑張れば王都に連れてってあげる。」
「えっ、良いの?王様に見つかるんじゃ…」
「大丈夫、もうすぐ王様の奥様の命日がくるの。その時王様と王子は1日かけてお墓参りに行くから。その日なら絶対大丈夫よ。それまで我慢しててね。」
「うん。アル、ありがとうね。」
僕は全力の笑顔をアルに向けた。
それからの1ヶ月もまた勉強と基本的な戦闘の訓練をこなしてすぐに外出の日が来た。
「お、お出かけはお兄さんとですか?」
僕の教育係のお兄さんとのお出かけということでなんだか安心感があった。
「はいアル様は仕事が忙しいですしアル様がいると目立ってしまいますから。」
そりゃそうだ、アルが王都に行けるわけがない。
「確かに。それで今日はどこに行くんですか?」
初めての外出だ、どこにいくか気になって聞いてみた。
「今日は王都に行きます。ここは王都から最も遠いと言ってもいいほどの辺境にあります。ですが隣町に王都に行く用の転移魔法陣があります。それで王都に行きます。ですので隣町まで歩きで行ってそれから王都の観光を考えております。」
初めての外出で王都に行くとなって僕はワクワクが止められなかった。
「きょうは僕とフィン様は兄弟という設定で行きますので、お互い敬語は無しで行きましょう。」
「うん。分かったよ。そういえばお名前は?」
長いこと一緒にいたけどまだ名前を聞いていなかった。
「僕ですか僕はアキラです。」
「よろしくねアキラお兄さん。」
そうして僕の初めての外出が始まった。隣町までの道中に初めて間近で草や花などの自然やアルの部下以外の人達を見た。
隣町に到着すると、転移魔法陣で王都に向かった。ここまでで今日はもう十分な程に楽しんだが王都はもっと凄かった。
初めて見る城は大きくて荘厳で人や店の数も隣町までの道中や隣町で見た数の比にもならないほどだった。
お兄さんとさっきまで手を繋いでいたが、僕が初めての王都で浮かれていたのと、王都の人混みのせいで逸れてしまった。お兄さんを探そう、元の場所に戻ろうとしてもどうにも土地勘が無さすぎて迷ってしまう。
お兄さんを探す中で、裏路地に入ってしまった。暗くてどうやら治安も良くは無さそうな裏路地だったため出ようと思ったが、どこから迷い込んだのかも分からず悩んでいたら。右肩をそっと叩かれた。恐る恐る振り返るとそこには優しい表情をした青白い青年がいた。
「やぁ、僕大丈夫かい。ここは少し危ないからこの路地から出たほうがいいよ。」
そう言うとそのお兄さんは僕に優しい笑みを見せてくれた。
「あのすみません田舎から初めて王都に兄ときたのですが、兄と離れてしまい一緒に探してくれませんか?」
彼はそう言うと屈んで僕に目線を合わせ
「お兄さんとはどこで離れたのかい?」
と聞いてきた。
「えっと多分お菓子屋さんで」
自信はなかったが最後にお兄さんをみた場所を思い出して言うと。
「そうか、…君の名前はフィンかな?」
彼はズバリと僕の名前を当ててきた。
「はい。なんで分かったんですか!」
心でも読めるのかと警戒した。
「お菓子屋さんのところで迷子のキミを呼んでる人がいてね。僕耳がいいんだ。」
よかった。心が読めるわけではなかった。それにしてもすごいな耳の良さ。
「お菓子屋さんは左の通りに出てからもう一回左に曲がったところにあるから行っておいで。」
彼は優しく僕に教えてくれた。
「お兄さんにお礼もしたいし、一緒にいきせんか?」
「よくできた子だね。でも大丈夫、僕のことは気にしないで。」
謙虚な人なのかな?
「?…わかりました。ありがとうございます。」
彼のいう通りお兄さんはお菓子屋さんの近くにいてすぐに合流することができたがお兄さんにそのことを話すと焦り始め急に帰ることになってしまった。転移魔法陣が混んでいて待ち時間が長く、隣町に着いた時にはもう日が沈みかけていた。
隣町からの帰り道にお兄さんになぜ急に帰ることにしたのかを聞くことにした。
「なんで急に帰ることにしたんですか?」
僕は彼が急ぐ理由がわからず聞いてみた。
「君が迷子の時に出会った恐ろしく耳のいい青年は王様や王子、この国の将軍たちに並ぶほどの身体能力の高さです。おそらく一般人ではありません。もし、王様直属の部下だったりして君の正体がバレていたら非常にまずいので。」
そう言って彼と僕は早足に帰って行った。
アルの屋敷が見え、安心していたら背後から
「止まれ、振り向くな」
とドスの効いた声が聞こえた。
「そしてその手を離せ」
と続けて言ったがお兄さんは僕のてを離さずぎゅっと握った数秒後
「うぁあぅぅ」
とお兄さんが突然叫びながら僕の手を離し、地面に倒れ込み自分の右手首を摩り始めた。
僕は何があったのか気になり後ろを振り返ってしまったそこには先ほどの青年がいた。
「振り返るなって言ったろ」
彼は先ほどの声とは逆で優しい声で僕に言った
「お兄さんに何をしたの?」
「君の手を離さなそうだったから手首を切られたっていう幻覚を見せただけだよ。」
そう言うと彼は僕の手を掴み
「着いてきて、行かなきゃいけないとこがあるんだ。」
と言いどこかに向かい始めた。
「お兄さんって何者?」
「あぁ、僕はこの国の王子ハイドだ。」
アキラさんの言ってた通りだ。
「そうなんだ、昼間はありがとね。」
謝辞を述べたが、お兄さんは何も返してこなかった。
「お兄さんは僕が何者か知ってるの?」
「あぁ、アルさんが作った人造人間だろ。」
僕は軽く頷く。
「何で知ってるの?」
「父さんから聞いたんだ。父さんは色んなスキルを持ってるんだ。その中に未来視とか千里眼とか視る能力があってな。それでアルさんの計画を、君と言う存在を見たそうだ。」
「そっか。」
そう言えば行き先をまだ聞いてなかった。
「どこに僕を連れてくの?」
「父さんのところさ。今日は母さんの命日だからお墓参りに行ってるんだ。」
「僕ってこれからどうなるのかな?」
「父さんに最悪殺される。でも、そうなりそうだったら僕がどうにか頼み込んでみるから。多分大丈夫」
「けど、何で王様じゃなくてお兄さんが僕を捕まえにきたの?」
「来月、僕の15歳の誕生日なんだ。」
どう言うことだ?と言う顔を僕はするが、そんなことも気にせず彼は続ける。
「それで父さんが僕の誕生日プレゼントをかけてゲームをしようって言ってたんだ。父さんを殺そうとしてるのかが誰かを見つけ出して、君を探し出せたらプレゼントが貰えるって言うゲームさ。」
「へーそうなんだ。お兄さんは何を貰うの?」
「僕にはね、呪いがかかってるんだ。日を浴びれないって言うものがね。」
「でも、これは自業自得なものだから、父さんは中々解いてくれない。だけどこのゲームに勝ったら呪いを解いてくれるって。」
「そっか、お兄さんも大変なんだね。」
「お兄さんじゃなくてハイド•スケイル、ハイドでいいよ。」
「あれ王様って確かプレ・タゴニスだったよね王様とファミリーネーム違うの?ハイドさん。」
「あぁーうん、スケイルはちっちゃい頃死んじゃった母さんのファミリーネームでね。俺は1度父さんを裏切ったんだ。だからもう同じ名前は名乗れない。詳しくはいつか話す機会があったら話すよ。ほら、もう着いたよ。」
着いたと言っても目の前は一面木々に覆われた森である。
「この森は王家の森で俺や父さん以外が1人で入ろうとすると森が襲ってきて危ないから下がってな。」
そう言うと彼はナイフで自分の指を傷つけ一際大きな木の幹に血を垂らした。
「ほらもう行けるよ。毎回こうしないと森は開かないから面倒なんだよなぁ」
それからも彼と話しながら森の中を歩き進めると森の終わりが見えてきた。その先には小さな家が崖の近くに建っていた。
「あの中に父さんがいるんだ。その前に母さんの墓に花を添えてくるから待ってて。」
そう言うと彼は崖側にあるお墓に花を添え家の入り口まで戻ってきた。
そして家のドアを開くといい匂いが立ち込めていた。
「お疲れ様、ハイド。けど、少し遅いよ」
そう言って彼のデコを二本指で叩くとこっちを向いて
「それと君とは初めましてだね、未来の英雄。」
未来の英雄?何のことだろうか。僕がすっとぼけた顔をしていると
「いや、気にしなくていい」
「初めまして。突然ですが僕を殺すんですか?」
率直な疑問を聞いてみた。僕を自分のもとに連れて来させたのだそれで何もないわけはないだろう。そう思ったから。
彼は少し笑った後に
「殺さないよ。僕を殺すために君を作り出したアルは間違っている。でも君の存在自体が間違いだって言うのはあまりにも酷だからね。僕は君を認めるよ。僕の国民の1人としてね。」
彼は僕の方を向いてわざとらしくニコッとした。
「あっでも君がハイドに見つかった以上アルは捕まえるから、その後君は僕の元に来るといい。」
思いもよらぬ彼からの提案におもわず
「えっいいんですか。」
と声が出てしまった。
「けど一つ条件がある。明日アルの元に戻って、日付の変わる頃にアルの研究者の君の生まれた部屋に行って欲しいんだ。」
彼の言っていることはあまりよく分からなかったがとりあえず頷いた。
それからリビングに行くともう食卓の上には3人前の料理が並んでいた。僕も一緒にご飯をいただくことになった。
「いいんですか奥さんの命日に僕もここにいて。」
よくよく考えると、少し気まずくなった聞いてみた。
「いいんだよ君のことはしばらく僕が育てるから。もう君は僕の息子みたいなもんだよ。」
「ありがとうございます。」
僕を受け入れてくれた王様になぜか感謝を伝えたくなってしまった。
「奥さんってどんな方だったんですか?」
「んーそうねぇ、もちろん可愛かったよ。可愛い人魚姫だよ。」
「奥さんって人魚だったんですか⁈」
驚いて思わず聞いてしまった。
「うん。そうだよ。僕が王様になる前、旅してる途中で海の綺麗な町に立ち寄ってね。毎日海の魔物と戦ったり海で遊んだりしてたら出会ってね。まぁ色々あって結婚したんだ。」
にわかには信じ難いことだが人魚っているんだ。
「僕はまだ信じてないよ。父さんがお母さんをあの世から連れてきた時も人間だったじゃないですか。」
「亡くなった奥さんを連れて来れるんですか。」
またもや驚きの情報が飛んできた。
「神様に頼んでね。奥さんに1日だけ合わせてもらったんだ。」
また王様はトンチキなことを言い出した。
「神様と知り合いなんですか⁈」
「うん。ちょっとしたご縁があってね。」
「そう…ですか」
なんか規格外すぎて逆に呆れてきちゃった。
ご飯を食べ終えた後
「もう遅いからお風呂に入って寝な。明日の朝、家まで送るよ。」
「わかりました。」
そう言うと僕は風呂に入り早々に寝床についた。
朝は王様に起こされた。
「やぁおはよう。」
眠い目を擦理ながら挨拶をし隣を見ると、隣のベッドに寝ていたハイドさんがいなかった。
「おはようございます。あれ?ハイドさんが見当たらないんですけど?」
「あぁあいつは夜明け前に城に移動させたよ。彼の呪いはここの朝日も受け付けないからね。」
そういえばハイドさん呪われてたんだった。
「ハイドさんの呪いってそんな強力なんですか?」
「うん。日中外に出続けてたら最悪死ぬそんくらい強力な物だよ。」
「そ、そんなに強力なんだ」
やっぱり呪いって怖いな。
「でも大丈夫。あの子と約束したんだ。期限内に裏切り者を見つけたら呪いを解いてあげるって。」
そうか、僕を捕まえたから彼は呪いを解いてもらえるんだった。
「あいつの呪いが解けたら、たくさん遊んでやってくれ。」
そう言った彼の顔は紛れもなく父親の顔だった。
「もちろんです。」
「あっ、そうだ今日の夜君が生まれた部屋に行くための魔法を君にかけよう。」
「魔法?」
「うん、多分君の部屋とか廊下とか君が行く部屋には侵入者を見つけるセンサーがついてるし鍵がかかってるからから君の認識を阻害するための魔法と壁とかをすり抜けれるようになる魔法。時間差で今日の夜発動するようになってるから。」
「わかりました。ありがとうございます。」
僕はそのまま支度をして、王様と一緒にアルの屋敷に戻った。
「やぁアル、どうやらハイドに見つかったみたいだね。」
王様はニヤニヤしながらアルに話しかけた。
「えぇそうよ。私をどうするつもり?」
アルは王様を睨みながら話す。
「今日のところは見逃してあげる。明日またくるよ。それと逃げるにしても、この子は置いてってね。僕が引き取るから。今日中にお別れは済ましときな。」
それから1日アルとは普通の会話しかしなかったし、彼女らは夜逃げの準備に勤しんでいて僕は部屋で1人過ごした。
王様との約束の時間になったがアルたちはまだ準備の途中だった。僕は王様にかけられた魔法で僕が生まれたあの部屋に向かった。
無機質な天井ノートや資料で散らかった机、僕が生まれた場所はあの日見た景色と変わらないものだった。というかこの部屋はあれ以来使われていないのかもしれない。
「やぁ来たね。」
どこからか王様の声がしてその姿を探したがどこにも見つからなかった。
「テレパシーで話してるから僕はそこにいないよ。」
そう言って続ける王様の言葉をなんとなく上を向きながら聞く。
「この部屋は君が生まれた部屋だ。ここには君を作り上げるまでのアルの記録があるんだ。ドアの右側にある大きな机の上の茶色いノートを見てご覧。」
僕はそのノートをパラパラとめくり始める。だんだんと読むスピードが落ちていく。それを全て読み終えた時には息がしづらく吐き気を催していた。
「ごめんね。でも、どうしても知っていて欲しくて。ごめん。…君に罪はないよ。」
まず、そのノートには王様への恨みつらみが書かれていた。そして僕を作ろうと決意したこと。僕の体の構造。僕の体が百余名の子供達の命を犠牲に作られたこと。僕の心臓がまた百余名の命を生贄に神から与えられたものだということ。
僕は憎むべきなのだろう、人の命を軽んじるアル・ミーケという女を、だが自分を生み出した人を恨むことも悪だと非難する気にもならなかった。そんな自分が嫌だった。
「君がこれから生きていくうえでこのことだけは知っていて欲しかったんだ。」
さっきとは違いすぐそばから聞こえてきた。
「あれ王様来ちゃったの?」
「おう、一応日付は変わったしな。」
王様は監視カメラやセンサーに向かって大きく手を振る。
「俺じゃセンサーには反応しないみたいだな。フィン、君にかけてる魔法を解くね。」
そうやって僕のおでこにてをかざし、僕にかけられた魔法を解いた。すると耳をつんざくような警報がアルの屋敷中に響き渡った。
「あっそうそう言い忘れてた。この部屋普通に侵入禁止になってるからこの警報を受けて多分色々来るよ。」
彼がそう言ってしばらく経った後に厳重にロックされていたこの部屋のドアが開く音がした。そこにはアルと武装した職員が数名いた。
「ごめんごめん、ちょっと早すぎたかな?」
彼がそういうとアルは職員たちに攻撃を命じたがその時にはすでに職員たちは魔法で拘束されていた。
「フィン、アルの処遇については君に任せてよう。この場所で罪を犯しても目撃者は僕だけ。そして僕は君のことを気に入ってる。君はアルをどうしても良いよ。」
僕は逃げようとする彼女の元へ全力で走り、腕を掴み足をかけ彼女を押さえつけた。
「王様、僕は彼女をどうしようとも思わない。ただ彼女が正しく罰されることを願います。」
「うん。良いね。想像していた答えの中で一番良いものを出したよ君は。」
拍手をしながら彼は僕の方に近づいてくる。そうして
「ちょっと離れてて。ちょっと待っててね。」
僕が離れるとアル達とどこかに消えてしまった。そして数十秒後
「お待たせ。彼女は警察に引き渡してきたよ。」
笑顔で手を振りながら帰ってきた。
「アルに恨みとかはなかったの?」
そう聞かれたが何と言うべきか。
「うん。その…彼女のしたことは間違ったことで多分彼女は悪で、人はそんな悪を憎むべきだと思うんだけど。僕は彼女のおかげで生を得たわけだから。その…自分勝手なことだけど僕は彼女を憎めなかったんです。」
「そっか。」
そういうと王様は僕の頭に手を乗せて撫でてくれた。
「それじゃあ、行こっか僕のお城に。」
そうやって僕の手を握ると彼のお城までテレポートした。
「ただいまっ!ピース、後のことはよろしくねぇ」
そうやって王様は彼の秘書と思しき人物に手を振ると
「その子が例の…?」
金髪の彼女は訝しげな表情で僕をじっと見つめていた。
「そ、可愛いでしょ。」
と言うと僕のほっぺをもちもちし始めた。
「ここが君の部屋だよ。」
そうやって案内された部屋はアルの屋敷での僕の部屋の3倍はあり天幕付きのレースのカーテンが大きなベットを覆っていた。
「こんなに良い部屋を使っても良いんですか⁉︎」
「もちろんもちろん、なんか欲しいもんとかあったら言ってね。今日はもう遅いから早く寝な。おやすみ〜」
そう言って手を振りながら出ていった。僕は今までの自分の部屋と違いすぎてソワソワしてあまり寝られなかった。
フィン(0) 身長141 体重38
プレタ・ゴニス(38) 身長173 体重74
ハイド・スケイル(14) 身長162 体重54




