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俺はNTR俳優だぁ!!

いでっち51号さん主宰。

「芸能界になろう」の参加作品です。


挿絵(By みてみん)

フェニックス(まさる)

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


「ただいま、エミリ…………な、何してるんだ!? エミリ!」


「ち、違うの!? これは違うのよアナタ!」


「な、何が違うんだ!?」


「違うの! 違うのよ!!」


「エミリ。しっかりと腰がファイナル・フュージョンしているじゃないか!?」



 ――――――――カァァアアッットォ!!


 紳士なら見たことのある例の部屋にて。


 監督は顔面をかき混ぜられたのかと思わせるほど、表情を歪めながら役者へ近寄ると現場に怒号が響いた。


「お前、何、チ○コ勃たせてんだよぉ!」


 売れない俳優、フェニックス(まさる)は不甲斐ないと顔をふせながら自身の股間に視線を落とした。

 ズボンの中心に盛り上がった丘があったのだ。


「……すみません、監督」


「お前の盛り上がったチ○コがフレーム・インしてんだよ」


「す、すみません。ハハハ……」


「テメェ、何、笑ってんだよ!」


 監督はメガホンでフェニックス大の頭を叩く。


 叩かれたフェニックス大は直ぐ様弁解した。


「すみません! チ○コがフレーム・インって面白いなぁ……と」


「そうかそうか……俺は面白くねぇよ。早く撮影を終わらせて飲みに行きてぇんだよ」


「すみません……」


「勃たせていいのはセクシー男優だけなんだよぉ! 大体、本番中の女優がいる訳でもねぇのに、何アテレコだけのセリフで勃たせてんだ?」


「気をつけます」


「このビデオはな、夫が勃起不全で妻の欲求がたまりにたまって寝取られるって設定なんだ。寝取られる原因の夫がモッコリびんびんだったら不自然だろ?」


 ここは大人の映像制作会社ソフト・あん♡・デマンドの社内スタジオ。

 撮影中なのは『妻をNTRされた夫は興奮しすぎて鼻血ブーーッ!!』を制作している。

 ドラマパートはセクシー女優の代わりに代役が台本を読み、演技の違和感を無くそうとしているのだが、予算の関係でスタッフが足りず、フェニックス大の妻役は角刈りの男性スタッフが声音(こわね)を変えて演技をしていた。


 監督はフェニックス大に強く言い聞かせた。


「熊みてぇな男が寝取られる台本を読んでんだぞ? なんで興奮できんだよ?」


「役者は想像力が豊かなので……」


「キモチわりぃな、テメェは……おい? 撮影の間は勃たせんじゃねぇぞ? いいな?」


「はい!」


「返事だけはいいな?」


 監督はメガホンで盛り上がったフェニックス(まさる)の股間を一発叩いた。


 フェニックス大は「うっ!?」と声を漏らし腰を引く。


 役者には演じる役の感情、人格を形成する背景、人隣を想像し登場人物になりきらなければならない。

 フェニックス(まさる)は売れない俳優とはいえ、卓越した想像力を持っていた。


 例え相手役がホモサピエンスそっくりな男性ハードゲイでも、脳内で『相手役はオッパイが新幹線みたいな形をした美少女』というフィルターをかけて芝居に望む。

 

 これは彼の唯一の強味である。


 監督は手持ち無沙汰のスタッフへ号令をかける。


「はーい、本番! いろんな意味で本番イクよぉー!」


 近年、アダルト業界は「アダルトビデオにも、しっかりしたドラマを作るべきだ」というユーザーのニーズに答え、「絡み」と呼ばれるセクシーパートとその前後の映像に差し込むドラマパートを編集で混ぜ込み作品を完成させている。


 そして、このドラマパートには高い演技力を有する俳優が求められる。


 売れない俳優、フェニックス大はそのドラマパートのオーディションに参加し、合格したことで、この撮影現場にいることを許されているのだった。


 当然、生のセクシー女優が拝めるわけではなく、あくまでも脚本上のドラマを演じるのみ。


 過去に彼が座長を任された舞台演劇は見事に失敗。

 赤字による多額の負債を抱えたフェニックス大はアルバイトを7つ掛け持ちながら、舞台や映像作品のチョイ役をこなしていた。


 俳優業と聞けば誰もが知る映画、ドラマに出演し見る側に感動を与え、評価が高ければアカデミー賞を受賞し、レッドカーペットを歩き宝石の輝きのごとくカメラのフラッシュに晒される。

 そんな想像が()るかもしれない。


 だが、それは険しい道のりだ。


 大多数の役者は仕事も不安定で、例え役者の仕事が舞い込んでも、その場限りで終わり、後が続かないこともしばしば。


 年に数本、役者の仕事があればマシな方だ。


 フェニックス大にとって、この仕事はようやくありつけた役者の仕事だった。


 アダルト関係の仕事となるとアングラな界隈なのは否めない。

 後々、役者として大成した時に過去の経歴が足を引っ張りかねないのだが、それでも売れない役者には参加することに意義がある。


 監督やプロデューサーが出演した役者の出来高を見て、「次もこの役者を使おう」となれば、その役者を起用して次の仕事につながる。


 その製作陣が別の映像業界の関係者に「人が足りないならウチで使った役者は、どう?」と、藁しべ長者のように話を取り次ぎ、オーディションを紹介し、合格して出演し続ければ、それが将来の仕事の輪として広がる。


 フェニックス大にとって、この現場は正念場なのだ。


「エミリ! な、何をしているんだ!?」


 ――――――――カァァアアッットォ!!


 監督は鬼の形相で近寄りフェニックス大の頭をメガホンで叩く。


「お前、またチ○コが勃ってるじゃねぇかぁ!?」


「すみません!」


「なんで妻を寝取られてショック受けてる夫が勃起してんだよ!」


「はい!」


「そんなに、たまってんなら。今ここでヌくか?」


 そう言うと忍びのごとく現れたADがティッシュの箱を差し出し、監督が受けとるとフェニックス大へ突き出す。


 フェニックス大は「それじゃぁ……」とティッシュの箱を掴もうとした瞬間、監督は箱を引っ込めてメガホンを振り上げる。


「ハニトラに引っ掛かってんじゃねぇよぉ!!」


「ひっ!?」


 高い打点に達したメガホンは一刀両断するように振り下げられ、フェニックス大は驚き、のけぞる。

 すると、メガホンの端がフェニックス大の鼻をかすめ、胸から腹をギリギリの軌道で通る。


 腹の下へ到達すると彼の股に現れた、モッコリひょうたん島の先っちょを大根切り。


 パコーン!


 撮影現場にメガホンの爽快な音が響いた。


「はうっ!?」


 フェニックス大は股を押さえて悶える。

 監督の激が飛ぶ。


「現場でヌいていいのはセクシー男優だけだ!」


「しゅ、しゅびばせん」


「お前、キモチわりぃな!?」


 消沈しているフェニックス大に対し、監督はメガホンで彼の盛り上がった股間を、ポン、ポン、ポンと叩いた。


「わかったか? まーさーるー」


「う!? うっ、んんっ!?」


「何、感じてんだ、この変態ヤロウ!」


「すみません」


「お前、本当にキモチわりぃな!」


「すみません!!」


「はーい、本番! 最後(フィニッシュ)までイちゃっうよ!」


 声かけをした後、監督はフェニックス大に向き直り、彼の(むな)ぐらを掴んで引き寄せ、声を潜めて話した。


「お前。これ失敗(トチ)ったら次は無いからな? わかったか?」


 声は小さいながらも、その語り口には狂気が潜んでいた。


 フェニックス大は恐怖から震える声で「はい」と返答した。


 監督は静かに手を離すと衣装スタッフへ指示を出す。

 衣装スタッフが掴まれた胸ぐらのシワを直している間、フェニックス大は自身に問いかける。



 俺、なんで役者やってんだろ?

 舞台の座長を任されて失敗して、借金かかえて、バイトを7つ掛け持ちして、朝、夜と寝る間も惜しんで金を稼いでいる。


 借金で首も回らない、明日の食いぶちも、いつ無くなるか解らず生活も困窮寸前。

 役者なんてやってるヒマねぇだろ?

 こんな惨めな生き方で、役者をやる意味ってなんだよ?


 夢の為?

 誰もが知る大物俳優になって、観客に感動を与えたいからか?

 本当にそれが理由なのか?


 俺――――なんで、役者を――――。


 思い出した。

 俺が役者をやる意味……。



 そうだ――――俺は――――オレは――――。











 ――――――――モテたかったからだ――――――――。



 腹を据えたフェニックス|大《まさる

》の瞳に一瞬の光が宿る。


 その瞬間を監督は見逃さなかった。


 監督は他のスタッフに聞こえないくらいの声で確信する。


「コイツ。キメるかもしれん」


 監督の号令がかかった。


「はーい、本番! 本番行為は風営法違反だけど、ヤッちゃうよ! よーい!」


 衣装スタッフがはけると、スタートの合図でカメラが回る。


「エミリー。帰った……よ―――な、何してるんだ……エミリィ!?」


 セクシー女優の代役を務める熊みたいな角刈りの男性スタッフが、か細い声で演技をする。


「ち、違うの!? これは違うのよアナタ!」


「何が……何が違うんだ!?」


「違うの! 違うのよ!!」


「エミリ。しっかりと腰がファイナル・フュージョンしているじゃないか!?」


「違うの! 違うのよ!!」


 役に入りこんだフェニックス大は冷たい床に沈み、嗚咽をしながら叫ぶ。


「うわぁぁぁぁああああーーーー!!!?」




 ――――――――カット。


 静寂が現場に広がる。

 フェニックス大が床から素早く起立すると、監督はカメラから離れて彼の元へ歩き出した。


 今のが役者としての全力。

 自分の中にある役者魂を出し切った。

 これでダメなら、役者としての未来は、もう……――――。


 監督の姿が死神と重なる。

 死の宣告を待たされているようで息が苦しくなる。


 目の前に来た監督はメガホンで――――――――フェニックス大の真っ平ら股間を『ポン』と軽く叩き言った。



「お前、イイ演技するじゃねぇか?」


 フェニックス大は胸を撫で下ろして、めいいっぱい腹に力を込めてから「ありがとうございます!!」と答えた。


 監督は肩を軽く叩き、(ねぎら)いながら言った。


「次のシーンも、この調子で頼むぞ?」


「はい!!」


「ふん! 返事だけはイイな? えーと? 次のシーンはなんだっけ?」


 監督は脚本のストーリーラインを管理するスタッフを呼びつけて、次に撮影するシーンを確認した。


「え~なになに…………」







 ――――――――――――――――――――どうしてだよ、エミリ?


 夜の公園。

 滑り台の側で棒立ちするフェニックス(まさる)は拳に力を込めて悔しさを表現した。



「なんで……なんであんな男と寝たんだ。エミリ? でも、どうしてだろう? 俺の……俺のアソコが……アソコが……熱く――――」


 ――――――――カァァアアッットォ!!


 監督はものすごい剣幕でフェニックス大に近寄り、彼の頭をメガホンで叩く。


「ここは夫が妻を寝取られたショックで家を飛び出し、公園で苦悶するも、新たな性に目覚めて興奮するシーンだろ!?」


「すみません……」


「なんでチ○コが勃ってねぇんだよ!!?」


 売れない役者フェニックス大はしょぼくれた顔で自身の股をみる。

 ズボンの中心がくぼんでいた。


 フェニックス大は言い訳がましく答える。


「さっきのシーンでヤル気を出しすぎて、しおれたみたいです」


「ふざけんな!? いいか? 憎たらしい浮気男に妻が寝取られるも、妻のあられもない姿が逆に刺激的で別の魅力を知った夫が、興奮を隠しきれずに喜びを見いだすシーンなんだよ。チ○コが勃ってないと不自然だろ!!?」


「勃ってる方が……勃ってない方が不自然です」


「今ここで不死鳥のように勃起しなくて、どうすんだぁ!!」


「はい!」




 役者って――――――――難しい。



 おわり

最後までお読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m


こちらの内容は、日本一の寝取られ俳優、松本洋一さんから着想を得ました。

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ソフト・あん♡・デマンドwww 夫は興奮しすぎて鼻血ブーーッ!!ってwww 「いろんな意味で本番イクよぉー!」 このあたりで腹がちぎれそうなほど笑いました(笑)(笑)(笑) オマージュやサンプ…
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