転機
蓮…お前は色んな所でやらかしてんな…
まあ、色々あったけど何とか身バレもせずもうすぐ卒業を迎えていた。
俺は迷ってたけど、結局大学進学は辞めた。
今時高卒は厳しいのは十分分かってたけど、音楽でやって行きたいなって気持ちも固まって来ていた。
色々な人から歌を評価して貰えて、やれるだけやってみようかって気持ちになっていた。
あと、二重生活に少しずつ疲れて来ていたのかも知れない。
またこの先学校に行ってバンド活動を隠して行くのも疲れていた。
出来れはバンド活動の時も素の自分を少しずつ出せて行ければとも思っていた。
行く行くは今のバンドを離れて自分らしく活動したいとも思っていた。
まあ、まだこれはメンバーには内緒だけど。
まだまだ知名度も低いしメジャーデビューもしてないんで先の話かなとも思っていた。
あれから神崎さんとは何か進展があった訳でも無く、なんとなく関係をぼやかしていた。
嫌いじゃ無いんだけど…
付き合うとかのキッカケと言うか俺に今一歩足りない気もしていた。
多分、神崎さんに経験が無い事にビビってるのかもと思っていた。
その理由には多少思う所もあったり無かったりもするのだが…
そんな感じに少しモヤって過ごしていた。
「シマがパクられた!」
まさに晴天の霹靂だった。
シマとは、同じメンバーで、俺に散々一途だの観念しろだの何だの説教垂れてた奴だった。
まあ、実際一途だったのは確かだ。
ただ、その方向性がおかしかった。
シマは彼女との所謂キメセクにハマっていたらしい。
薬を入手していたホスト崩れの蓮と言う男から分けてもらってたらしいが、コイツもたまにライブの客に連れられて見かけた事はあった。
コイツは音楽に興味と言うより薬に手を出しそうな奴を物色していたんだろう。
実際演奏を聞くより客やバンドマンなんかとよく話していた。
元ホストだけあって見た目も良くて会話も上手いやつだと思っていた。
バンドマンなんかで色々薬物に手を出してる奴らの噂話も聞いてはいた。
その蓮が薬でパクられて、やり取りしてる奴らを一斉に摘発していた。
一応俺達も警察に薬物反応とか調べられたが、まあ身に覚えもないし素直に応じていた。
そんな事件があって俺のバンドはあっけなく解散してしまった。
突然出鼻を挫かれて、正直意気消沈していた。
やっぱ進学辞めたの失敗だったかなあと後悔していた。
この後またバンド探したり大変だなあとも思っていた。
そんなある日に、前にライブしたワープロケットの店長から連絡が来た。
ライブハウスで働きながらバンド活動も悪くないかもと、雇って貰えないか頼もうかなと思いながら向かった。
「やあ、エル君」
そこには教授が居た。
「あれ!?教授?」
「やっとタイミングが回って来たからね。他所に取られる前に取り込もうかなって思って。」
「俺?」
「そう。前から狙ってたからね。」
「まあ、正直有り難いですが…でも俺LUSHの系統には合わないかと思うけど…」
「ははは、それも分かってるって前に伝えてるよ?
確かにそんな事言ってたかも…
「だからね、エル君に合うユニットを作る事にしたから、僕もLUSH解散させちゃった」
「えぇ!?」
LUSHもそれなりに知名度はあった。
それをすんなり解散…
揉めなかったのか心配になった。
そんな考えを見越しているように続けた。
「まあ、ウチも段々方向性で割れて来てたから丁度良いタイミングだったよ。元のメンバーも名前変えて新しく始めるよ。」
「へぇー。それでユニットって?」
「うん、エル君と僕のツインボーカルだね。まあ僕はメインには向かないけど、機材は触れるからDJやラップに近くなるかもね」
「ほうー!」
「まあ、曲も作れるからエル君は歌に集中して欲しいかな。」
「それは寧ろ助かります。」
「じゃあ決まりで良い?」
「はい。宜しくお願いします。」
「でも最初に僕らが一緒にやったライブハウスで話がまとまって何か運命的だね。」
「流石、教授。中々のロマンチストですね。聞いてるコッチが照れます。」
「ははは。僕は愛の言葉はストレートに言うタイプだからね。」
「…それは付き合ってる人にお願いします…」
「弁えてるよ。まあ、最初のライブはここで決まりだね。」
「記念日とか大切にするタイプみたいですね。教授は。」
そんな感じで教授と組む事になった。
ユニット名は 『Aラッシュ』となった。
お互いの出身バンドにリスペクトしての命名らしい。