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Sounding Dreams - 再び巡り逢う音 -  作者: 蒼月 美海
頂点へ

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第93奏:新たな扉

「二組目」


 恵美は、再び紙を見つめる。

 四人の手に、汗が滲む。

 息をするのも忘れるほど、緊張していた。

 恵美が、ゆっくりと口を開く。


「『Luminous』」


 その名前を聞いた瞬間、響たちが歓声を上げた。

 四人は、その様子を見ながら、複雑な心境になる。


(響さんたち、合格した……)


(良かった……)


 でも、同時に不安も募る。

 残りの枠は、あと一つ。

 この中から、一組だけ。

 四人は、手をさらに強く握り合った。

 恵美は、ステージに並ぶバンドたちを見渡す。


「そして……最後の三組目」


 会場全体が静まり返る。

 四人の心臓が、激しく鳴り響く。

 恵美は、ゆっくりと口を開いた。


「『Aura・Notes』」


 その瞬間、四人の時間が止まった。


「……え?」


 イヴが、信じられないという表情で呟く。


「今……私たちの名前を……?」


 琴音も信じられないという表情をし、綾乃は恵美の方を見つめた。

 恵美は、静かに微笑んでいる。


「本当に……?」


 綾乃が震える声で尋ねると、雅が綾乃の肩を叩いた。


「……本当ですわ」


 雅の目からは、涙が溢れていた。


「わたくしたち……合格しましたわ……!」


 その言葉を聞いた瞬間、四人は抱き合った。


「やった……! やったよ、みんな……!」


 イヴが涙を流しながら叫ぶ。


「本当に……通過した……!」


 琴音も涙を流しながら、三人を抱きしめた。

 綾乃もまた、涙を流していた。


(お母さん……見てる……?)


(私たち、やったよ……)


 観客からは、温かい拍手が送られる。

 四人は、何度も何度も抱き合い、喜びを分かち合った。

 しかし、ステージには、まだ多くのバンドが残っている。

 合格できなかったバンドたちだ。

 その中には、悔しそうに唇を噛みしめている者、涙を流している者もいた。

 四人は、その姿を見て、複雑な心境になる。


(もし、私たちが落ちていたら……)


(きっと、あの中にいたんだ)


 綾乃は、そう思うと、胸が痛んだ。

 恵美は、再び口を開いた。


「合格した三組の皆さん、おめでとうございます。本戦でも、素晴らしい演奏を期待しています」


 そして、恵美は落選したバンドたちに視線を向けた。


「そして、惜しくも今回は合格できなかった皆さん。あなたたちの演奏も、本当に素晴らしかった。これが最期ではありません。どうか、諦めずに、また来年も挑戦してください」


 恵美の言葉に、落選したバンドたちは、静かに頷いた。


「それでは、これで結果発表を終わります。皆さん、本当にお疲れ様でした」


 恵美がそう言うと、会場から再び拍手が起こる。

 ステージに並んでいたバンドたちは、それぞれの楽屋へと戻っていった。

 四人も、楽屋に戻る。

 扉を閉めると、イヴが飛び跳ねた。


「やったぁ!  本当に通過した!」


「信じられない……夢みたい……」


 琴音も、まだ実感が湧いていない様子だ。


「本当に……通過したんだね」


 綾乃が静かに呟くと、雅が満足そうに微笑んだ。


「ええ。わたくしたち、やりましたわね」


 四人は顔を見合わせ、再び抱き合った。

 その時、楽屋のドアがノックされた。


「はい」


 綾乃が答えると、ドアが開き、白石恵美が入ってきた。


「オーナー!」


 四人は驚いて立ち上がった。


「おめでとう、『Aura・Notes』」


 恵美は優しく微笑みながら、四人を見つめた。


「あなたたちの演奏、本当に素晴らしかった。特に新曲の『Over the Top』。あの曲には、あなたたちの想いがしっかりと込められていたわ」


 恵美の言葉に、四人の目に涙が浮かぶ。


「ありがとうございます……!」


 イヴが涙声で答えると、恵美は静かに頷いた。


「あなたたちの音楽、私の心を震わせてくれたわ。約束、守ってくれたわね」


 恵美は、四人一人一人の顔を見つめた。


「本戦でも、その調子で頑張りなさい。あなたたちなら、きっと素晴らしい演奏ができるわ」


「はい!」


 四人は力強く答えた。

 すると、恵美は少し真剣な表情になった。


「それと、本戦について少し説明しておくわ」


 恵美は四人を見渡した。


「本戦は9月末に開催されます。つまり、あと2ヶ月ほど時間があるわ」


「9月末……」


 綾乃が呟くと、恵美は頷いた。


「ええ。そして、本戦では三曲演奏してもらうことになるわ」


「三曲……!」


 イヴが驚いたように声を上げた。


「そう。予選は二曲だったけど、本戦は三曲。既存の曲でも構わないけれど……」


 恵美は一度言葉を切ると、静かに続けた。


「できれば、新曲を用意することをお勧めするわ。本戦に出場するバンドは、どこも実力派揃い。新しい曲で、あなたたちの成長を見せてほしいの」


 恵美の言葉に、四人は顔を見合わせた。


「わかりました……! 新曲、作ります……!」


 琴音が決意を込めて答えると、恵美は満足そうに微笑んだ。


「それじゃあ、期待しているわ。2ヶ月後、また素晴らしい演奏を聴かせてちょうだい」


 恵美は楽屋を出て行った。

 四人は、再び椅子に座った。


「……2ヶ月か」


 綾乃が呟くと、イヴが不安そうな表情を浮かべた。


「新曲……間に合うかな」


「大丈夫ですわ。2ヶ月あれば、十分ですわ」


 雅が力強く言うと、琴音も頷いた。


「はい……! 頑張って作ります……!」


 その時、楽屋のドアが再びノックされた。


「はい」


 綾乃が答えると、ドアが開き、倉本響が顔を覗かせた。


「響さん!」


「おめでとう、綾乃ちゃんたち」


 響は満面の笑みで言った。


「響さんも、おめでとうございます」


 綾乃がそう答えると、響は嬉しそうに頷いた。


「ありがとう。お互い、合格できて良かったね」


 響は四人を見渡すと、真剣な表情になった。


「本戦で会おうね。その時は、ライバルだから」


「はい。全力で臨みます」


 綾乃が力強く答えると、響は満足そうに微笑んだ。


「楽しみにしてるよ」

 響はそう言って、楽屋を出て行った。

 四人は、顔を見合わせた。


「……本戦、か」


 綾乃が呟くと、三人は静かに頷いた。

 予選を通過した。

 でも、これはまだ通過点に過ぎない。

 本当の戦いは、これからだ。

 四人は楽器を片付けると、『RESONANCE』を後にした。

 外に出ると、夕日が四人を照らしていた。

 オレンジ色に染まる空と、少しずつ暗くなり始める街並み。


「……これから、本戦だね」

 綾乃が静かに言うと、三人は力強く頷いた。


「うん! 絶対に、頑張ろうね!」


 イヴが拳を握りしめる。


「はい……!  みんなで、一緒に……!」


 琴音も決意を込めて答えた。


「わたくしたちなら、必ずできますわ」


 雅も静かに微笑んだ。

 四人は並んで歩き始めた。

 夕日に照らされながら、四人の影が長く伸びていく。

 新たな扉が、今、開かれた。

 『Aura・Notes』の、新たな挑戦が始まろうとしていた。

 

頂点へ ー完ー

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

よければブックマークとご感想、お待ちしております。


これにて、頂点へ編完結となります。

以前も長期間の投稿を中断しましたが、執筆者の休息と小説のストック溜めのため、2週間ほどお休みをいただきます。

大変勝手ではございますが、次回までの更新をお待ちください。


次回の更新は、第94奏:新たなスタートライン、です。


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