第92奏:響く熱量
楽屋に戻った四人は、椅子に座りながら、廊下から聞こえてくる音に耳を傾ける。
次のバンドが、ステージで演奏を始めたのだ。
その音は、廊下を通して楽屋にまで響いてくる。
力強いドラムのビート、鋭いギターの音色、そして情熱的なボーカル。
「……すごいね」
イヴが小さく呟くと、三人も静かに頷いた。
しばらくして、その演奏が終わり、次のバンドへと移っていく。
そして――
「……これは」
綾乃が立ち上がった。
廊下から聞こえてくる音が、明らかに他のバンドとは違っていたからだ。
圧倒的な技術、そして何よりも、熱い想いが込められた音。
「『Luminous』だ……」
綾乃が呟くと、三人も立ち上がった。
「行こう」
四人は楽屋を出て、廊下を進んだ。
ステージ袖に到着すると、そこには既に何人かのバンドメンバーが立っていた。
みんな、『Luminous』の演奏を見ているのだ。
四人もその列に加わり、ステージを見つめた。
そこには、倉本響率いる『Luminous』の六人が立っていた。
響のギターが、鋭く、そして情熱的に響き渡る。
他のメンバーも、それぞれの楽器で完璧な演奏を披露している。
ボーカルの歌声は、会場全体を包み込むような力強さを持っていた。
観客は、その演奏に完全に引き込まれている。
手拍子をする者、体を揺らす者、ただじっと聴き入る者。
それぞれが、『Luminous』の音楽に魅了されていた。
綾乃は、その演奏を見ながら思った。
(これが……三回目の出場)
(高校生活最後のチャンス)
(その覚悟が、音に表れている)
イヴもまた、響のギターに見入っていた。
(響さん……本気だ)
(あんなに激しく、でも正確に弾いてる)
琴音は、『Luminous』の一体感に圧倒されていた。
(六人の音が、完璧に調和してる……)
(私たちも、あんな風に……)
雅は、静かに『Luminous』のドラムを見つめていた。
(素晴らしいドラムですわ)
(わたくしも、負けていられませんわね)
やがて、『Luminous』の演奏が終わった。
会場から、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こる。
それは、『Aura・Notes』が受けた拍手よりも、明らかに大きかった。
響は、深々と頭を下げ、メンバーと共にステージを降りた。
ステージ袖を通る響と、四人の目が合う。
響は、静かに微笑んだ。
「お疲れ様、綾乃ちゃんたち」
「響さんも……お疲れ様でした」
綾乃がそう答えると、響は満足そうに頷いた。
「やり切ったよ。あとは、結果を待つだけ」
響はそう言って、自分たちの楽屋へと戻っていった。
四人は、再び自分たちの楽屋へと戻った。
「……すごかったね」
イヴが呟くと、三人も頷いた。
「うん……」
琴音が不安そうに言うと、綾乃が静かに答えた。
「それだけ、GSGのレベルが高いってことだよ」
「わたくしたちも、負けていられませんわね」
雅が力強く言うと、三人は顔を見合わせて頷いた。
その後も、次々とバンドの演奏が行われた。
どのバンドも、レベルが高い。
技術的に優れたバンド、個性的な音楽性を持つバンド、圧倒的な存在感を放つバンド。
それぞれが、本戦出場を目指して、全力で演奏していた。
四人は、廊下から聞こえてくる音を聴きながら、不安を募らせていく。
「……本当に、通過できるのかな」
イヴが不安そうに呟くと、琴音も俯いてしまう。
「みんな、すごく上手だった……」
「大丈夫」
綾乃が二人を励ますように言った。
「私たちは、私たちの音楽を精一杯やった。それで十分だよ」
「そうですわ。結果がどうであれ、わたくしたちは全力を出し切りましたもの」
雅もそう言って、二人を励ました。
やがて、全てのバンドの演奏が終わった。
楽屋には、重い沈黙が流れている。
審査員が、今、審議をしているのだ。
本戦出場は、三組のみ。
この中から、たった三組しか選ばれない。
四人は、手を握り合いながら、結果を待った。
時間が、とてつもなく長く感じられる。
その時、スタッフが廊下を歩く音が聞こえてきた。
「これより、結果発表を行います。全バンド、ステージにお集まりください」
その声に、四人は立ち上がった。
楽屋を出ると、廊下には他のバンドメンバーたちが集まっている。
みんな、緊張した表情だ。
四人は、その列に加わり、ステージへと向かった。
ステージには、すでに多くのバンドが並んでいた。
四人も、その中に加わる。
客席には、まだ観客が残っている。
そして、審査員席には、白石恵美をはじめとする審査員たちが座っていた。
恵美が、ゆっくりと立ち上がり、壇上へと歩いていく。
「皆さん、本日は素晴らしい演奏をありがとうございました」
恵美の声が、会場に響き渡る。
「どのバンドも、本当に素晴らしかった。審査員一同、非常に悩みました」
恵美は、ステージに並ぶバンドたちを見渡した。
「本戦出場は、三組です」
その言葉に、ステージが静まり返る。
「それでは、結果を発表します」
恵美は、手元の紙を見つめた。
「一組目」
四人は、手を強く握り合った。
心臓が、激しく鳴っている。
「『Crimson Wave』」
恵美がそう告げると、ステージの端にいたバンドが歓声を上げた。
知らないバンド名だった。
そのバンドのメンバーたちは、抱き合って喜んでいる。
四人は、その様子を見ながら、次の発表を待った。
「二組目」
恵美は、再び紙を見つめる。
四人の手に、汗が滲む。
息をするのも忘れるほど、緊張していた。
恵美が、ゆっくりと口を開く――
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