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Sounding Dreams - 再び巡り逢う音 -  作者: 蒼月 美海
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第86奏:黄昏の旋律

 パラソルの下で休憩していた四人は、いつの間にか空がオレンジ色に染まり始めていることに気づいた。


「わぁ……夕日、綺麗……」


 イヴが空を見上げながら呟く。

 西の空は、オレンジから赤、紫へと美しいグラデーションを描いていた。


「……もう、夕方なんだね」


 綾乃がそう言うと、琴音も時計を確認した。


「本当だ……もう六時過ぎてる……」


「せっかくですし、夕日を見に行きませんか?」


 雅の提案に、三人は顔を見合わせて頷いた。


「うん、行こう!」


 四人は波打ち際へと向かい、そこに座って夕日を眺め始めた。

 空は刻一刻と色を変え、海もまたその色を映し出している。

 イヴは感動したように、ただただ夕日を見つめていた。


「すごく綺麗……。こんな夕日、初めて見たかも」


 琴音も静かに夕日を見つめている。

 その表情は、穏やかで、どこか満ち足りたものだった。

 雅は優雅に膝を抱え、海の美しさに浸っている。


「本当に……素晴らしい景色ですわね」


 綾乃は波の音に耳を澄ませていた。


ーーザザーン……ザザーン……ーー


 朝に聞いた波の音とは、どこか違う。

 もっと穏やかで、優しく、それでいて確かな力強さがある。

 夕暮れの波は、まるで一日の終わりを告げるかのように、ゆったりとしたリズムで打ち寄せていた。

 綾乃はその音に、何かを感じていた。


(この音……)


 綾乃は目を閉じ、波の音だけに集中する。

 規則的なリズム。

 でも、機械的ではない。

 自然な揺らぎ、流れ。

 まるで呼吸をするように、波は寄せては返していく。

 その瞬間、綾乃の頭の中で、何かが繋がった。


(これだ……!)


 綾乃の目がパッと開く。


(曲に足りなかったもの……それは、この自然な流れだ)


 綾乃たちの曲は、確かに一つ一つの音は良かった。

 でも、どこか無理をして音を詰め込んでいた。

 完璧を求めすぎて、自然な流れを失っていたのだ。

 でも、この波の音は違う。

 力を抜いて、自然に流れている。

 それでいて、確かな力を持っている。


「……ねえ、みんな」


 綾乃が静かに口を開くと、三人が顔を向けた。


「この波の音、聞いてみて」


 綾乃の真剣な表情に、三人は静かに波の音に耳を傾けた。


ーーザザーン……ザザーン……ーー


 穏やかで、優しく、それでいて力強い音。

 しばらくの沈黙の後、綾乃が再び口を開いた。


「私たちの曲、もっと自然な流れが必要だったんだ」


 綾乃の言葉に、琴音ははっとした表情を浮かべた。


「確かに……波みたいに、自然に音が流れていく……」


 琴音は波の音を聴きながら、自分が作った曲を思い返していた。


(そうだ……私、無理に音を詰め込もうとしてた)


(もっと自然に、流れるように……)


「それいいね! なんか、わかる気がする!」


 イヴも目を輝かせながら言った。


「私たちの音楽も、波みたいに自然に流れていけばいいんだね!」


「自然の持つリズム……素晴らしい気づきですわね、綾乃さん」


 雅も静かに微笑みながら言った。


「この海に来て、本当に良かったですわ」


 四人は再び夕日を眺めた。

 もうすぐ、太陽は水平線の向こうに沈もうとしている。


「……明日から、また頑張ろう」


 綾乃の言葉に、三人は力強く頷いた。


「うん! 曲、完成させられる気がする!」


 琴音が希望に満ちた声で言うと、イヴも拳を握りしめた。


「絶対いい曲になるよ!」


「わたくしたちなら、必ずできますわ」


 雅も決意を込めて答えた。

 やがて、太陽は完全に水平線の向こうに沈んでいった。

 空は深い藍色に変わり、星が瞬き始める。


「……そろそろ、帰ろうか」


 綾乃の言葉に、四人は立ち上がった。

 海の家で着替えを済ませ、四人は駅へと向かう。

 電車の中。

 イヴは疲れて、綾乃の肩に寄りかかりながら居眠りをしている。

 琴音はスマートフォンを取り出し、曲のアイデアをメモしていた。

 その指は、波のリズムを思い出しながら、画面の上を滑っている。

 雅は優雅に窓の外を眺めている。

 闇に包まれた景色の中を、電車は走り続けていた。

 綾乃は静かに目を閉じ、今日一日を思い返していた。


(海に来て、本当に良かった)


(これで、きっと曲が完成できる)


 やがて、電車は駅に到着した。

 四人は改札を出ると、それぞれの帰り道の分かれ目で立ち止まった。


「今日は、来てよかったね」


 綾乃がそう言うと、三人は満面の笑みで頷いた。


「うん! すごく楽しかった!」


「わたくしも……忘れられない一日になりましたわ」


「明日から、また頑張りましょう……!」


 琴音が決意を込めて言うと、四人は顔を見合わせて微笑んだ。


「それじゃあ、また明日」


「うん、また明日!」


 四人はそれぞれの方向へと歩き出した。

 綾乃は夜空を見上げながら、静かに呟く。


(これで、きっと曲が完成できる)


(私たちの、最高の音楽を)


 明日への希望を胸に、綾乃は家路についた。

 新たなステップへと、『Aura・Notes』は進み始めていた。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

よければブックマークとご感想、お待ちしております。


毎日午後5時30分に更新しております。

次回の更新は、第87奏:流れる音色、1月11日日曜日午後5時30分です。

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