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Sounding Dreams - 再び巡り逢う音 -  作者: 蒼月 美海
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第82奏:個性の旋律

 新曲制作を始めてから、数日が経った。

 四人は雅の家にある専用スタジオで、連日練習を重ねている。


「それじゃあ、今日はこのメロディーでやってみよう」


 琴音がそう言って、スマートフォンから音源を流した。

 それは、前回のセッションを元に、琴音が夜通し作り上げたメロディー。

 儚くも力強い、四人の音が混ざり合った曲の骨格が、そこにはあった。


「すごい……!  琴音ちゃん、もう形になってる!」


 イヴが目を輝かせながら言うと、琴音は照れくさそうに俯く。


「まだ……完成じゃないけど……」


「いや、十分すごいよ。これなら、私たちの音を乗せやすい」


 綾乃もそう言って、ベースを構えた。


「それでは、早速合わせてみましょうか」


 雅の言葉に、四人は楽器を手に取った。

 琴音のキーボードが、優しく、そして切ないメロディーを奏で始める。

 そこに綾乃のベースが加わり、曲に深みを与えていく。

 しかし、次の瞬間――

 イヴのギターが、激しく、情熱的な音を響かせた。

 それは、琴音のメロディーとは対照的な、力強い音色。


「ちょっと待って」


 綾乃が演奏を止めた。


「イヴ、そのギター、ちょっと激しすぎない?」


 綾乃の指摘に、イヴは不思議そうな顔をする。


「え? でも、この曲、サビで盛り上げたいから、このくらいの方がいいと思うんだけど……」


「でも、それだと曲全体のバランスが崩れちゃうよ。琴音が作ったメロディーの良さが消えちゃう」


 綾乃の言葉に、イヴは少し不満そうな表情を浮かべた。


「でも、このままだと地味すぎない? もっと、聴いてる人の心を掴むような、激しい音が必要だと思うんだけど」


「激しければいいってものじゃないでしょ。私たちらしい音楽を作るって、決めたじゃない」


 綾乃の言葉に、イヴは少しムッとした表情になる。


「私だって、私たちらしい音楽を作りたいよ! でも、それって激しい音楽じゃダメなの?」


「そういうことじゃなくて……」


 二人の空気が、少し険悪になり始める。

 琴音は不安そうに二人の様子を見つめ、雅は静かに二人を見守っていた。


「……ちょっと、休憩しようか」


 雅が静かに言うと、二人は楽器を置いた。

 スタジオの隅に置かれたソファーに座り、四人は沈黙に包まれる。

 イヴと綾乃は、お互いに視線を合わせようとしない。

 琴音は申し訳なさそうに俯いている。

 しばらくの沈黙の後、雅が静かに口を開いた。


「……意見が違うのは、悪いことではありませんわ」


 その言葉に、三人は雅の方を向いた。


「わたくしたちは、それぞれ違う個性を持っています。イヴさんの情熱的な音、綾乃さんの安定感のある音、琴音さんの繊細な音、そしてわたくしの力強い音」


 雅はそう言って、三人の顔を見渡した。


「それぞれの個性が、このバンドの強みですもの。ですから、お互いの意見を否定するのではなく、どうすれば両立できるか、考えてみませんか?」


 雅の言葉に、イヴと綾乃は顔を見合わせた。


「……ごめん、イヴ。言い過ぎた」


 綾乃が先に謝ると、イヴも頭を下げた。


「ううん、私もごめん。綾乃ちゃんの言うこと、わかってたのに、ムキになっちゃった」


 二人は互いに微笑み合う。


「それじゃあ、もう一度やってみようか。今度は、お互いの音を活かせるように」


 綾乃の提案に、イヴは力強く頷いた。


「うん!」


 四人は再び楽器を手に取った。

 琴音のキーボードが、優しいメロディーを奏で始める。

 綾乃のベースが、その土台を支える。

 そして、イヴのギター。

 今度は、先ほどよりも少し抑えた音で、しかし情熱は失わずに。

 琴音のメロディーを邪魔せず、しかし曲を盛り上げる、絶妙なバランス。

 そこに雅のドラムが加わると、四人の音が一つになった。


「……これだ!」


 イヴが興奮した声を上げる。


「うん……!  これなら、みんなの音が活きてる……!」


 琴音も嬉しそうに微笑んだ。

 何度も何度も、同じフレーズを繰り返す。

 その度に、音は洗練され、磨かれていく。

 曲の形が、少しずつ見えてきた。

 数時間後。

 練習を終えた四人は、達成感に満ちた表情で楽器を置いた。


「まだ完成じゃないけど、いい感じになってきたね」


 綾乃が満足そうに言うと、イヴも大きく頷く。


「うん!  私のギターも、綾乃ちゃんのベースも、どっちも活きてる!」


「みんなの音が……一つになってきた気がします……」


 琴音も嬉しそうに微笑んだ。


「ええ。この調子で進めれば、必ず素晴らしい曲が完成しますわ」


 雅もそう言って、三人に微笑みかけた。

 四人は顔を見合わせ、静かに頷き合う。

 新曲が、確かに形になり始めていた。

 そしてその音楽には、四人それぞれの個性が、美しく混ざり合っていた。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

よければブックマークとご感想、お待ちしております。


毎日午後5時30分に更新しております。

次回の更新は、第83奏:行き詰まりの音色、1月6日火曜日午後5時30分です。

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