第81奏:未完成のメロディ
翌日の放課後。
四人は雅の家にある専用スタジオに集まっていた。
「改めて、予選出場決定おめでとう!」
イヴが満面の笑みで言うと、三人も嬉しそうに頷く。
「うん……! オーナーに認めてもらえて、本当に嬉しかった……!」
琴音も喜びを噛み締めるように言った。
「でも、ここからが本番だね」
綾乃はそう言って、三人の顔を見渡した。
「新曲、どうしようか」
その言葉に、四人の表情が真剣なものへと変わる。
「新曲かぁ……どんな曲がいいかな?」
イヴが首を傾げると、雅が静かに口を開いた。
「まずは、どのような曲にしたいか、皆様の意見を聞かせていただけますか?」
雅の言葉に、イヴは目を輝かせた。
「私は、もっと激しい曲がいい! 『Blue-Echo』みたいな、聴いてる人の心を掴むような!」
イヴの熱い提案に、綾乃は少し考える仕草を見せる。
「私は……私たちらしい曲がいいな。無理に背伸びするんじゃなくて、今の私たちが表現できる、最高の音楽」
綾乃の言葉に、雅は静かに頷いた。
「なるほど。どちらも、素晴らしい意見ですわね」
そして雅は、琴音の方を向く。
「琴音さんは、どう思われますか?」
その問いかけに、琴音は少し俯いてしまう。
「……わたし、オーナーさんの心を震わせる曲なんて、作れるかな……」
琴音の不安そうな声に、三人は顔を見合わせた。
「琴音ちゃん……」
イヴが心配そうに琴音の肩に手を置く。
「大丈夫だよ。琴音ちゃんが作る曲、いつも最高じゃん!」
「うん。『欠片の音色』だって、琴音が作ってくれたから、オーナーに認めてもらえたんだよ」
綾乃も優しく琴音を励ました。
「それに……」
雅が静かに口を開く。
「一人で抱え込む必要はございませんわ。わたくしたちは、四人で一つのバンド。曲も、四人で創り上げればいいのですわ」
雅の言葉に、琴音はゆっくりと顔を上げた。
「……四人で?」
「ええ。琴音さんが作曲のベースを作り、わたくしたちがそれぞれの楽器で音を足していく。そうすれば、きっと素晴らしい曲ができますわ」
雅の提案に、イヴと綾乃も大きく頷く。
「そうだよ! 私たち、四人で一緒に作ろうよ!」
「うん。琴音一人に任せるんじゃなくて、みんなで」
三人の言葉に、琴音の目に涙が浮かぶ。
「……ありがとう、みんな」
琴音は涙を拭いながら、静かに微笑んだ。
「……やってみます」
その言葉に、三人は安堵の表情を浮かべる。
すると、イヴがふと雅の方を向いた。
「そういえば、雅さんも前のバンドでGSGを目指してたんだよね?」
イヴの何気ない問いかけに、スタジオの空気が少し重くなる。
雅は少し寂しそうな表情を浮かべた後、静かに頷いた。
「……ええ。わたくしたちも、GSGを目指していましたの」
「それで……どうなったの?」
琴音が恐る恐る尋ねると、雅は目を伏せた。
「出場する前に……バンドが、解散してしまいましたの」
「……そうだったんだ」
綾乃は静かに呟いた。
雅は再び顔を上げると、三人に微笑みかける。
「ですが、今、わたくしには新しい仲間がいる。そして、再びGSGに挑戦できる機会をいただきました。だからこそ、わたくしは今度こそ、あの舞台に立ちたいのですわ」
雅の真剣な眼差しに、三人は心を打たれた。
「……うん。絶対に、一緒にあの舞台に立とうね」
イヴが力強く言うと、琴音と綾乃も頷く。
「それじゃあ、早速やってみようか」
綾乃の提案に、四人は楽器を手に取った。
まずは琴音がキーボードでメロディーを奏で始める。
それはまだ形になっていない、断片的なメロディー。
しかし、そこに綾乃のベースが加わり、イヴのギターが重なり、そして雅のドラムが響く。
四人の音が混ざり合い、少しずつ、新しい曲の種が生まれていく。
まだ完成には程遠い。
だが、確かに何かが生まれ始めていた。
数時間後。
練習を終えた四人は、スタジオを出て帰路についた。
「今日は、いい感じだったね」
イヴが満足そうに言うと、琴音も頷く。
「うん……。まだ形にはなってないけど、何か掴めた気がする……」
「明日も頑張ろう」
綾乃の言葉に、三人は力強く頷いた。
夕日に照らされながら、四人はそれぞれの家路につく。
新曲制作という新たな挑戦が、今、始まったばかりだった。
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