第78奏:新たな挑戦
バンド名『Aura・Notes』が決まり、四人は興奮冷めやらぬまま、蕎麦屋『鶴ノ庵』で打ち上げを続けていた。
「『Aura・Notes』か……。なんだか、私たちらしくていいよね!」
イヴが満面の笑みで言うと、琴音も嬉しそうに頷く。
「うん……。一人一人の音が集まって、一つの音楽になる……。素敵な名前ですよね」
「わたくしも、この名前、とても気に入りましたわ」
雅もそう言って、ジュースが入ったグラスを優雅な動作で口へ運ぶ。
綾乃はそんな三人の様子を見ながら、静かに微笑んだ。
やっと、自分たちのバンドに名前がついた。
それは、四人の絆が確かなものになった証。
「それで……」
しばらくすると、雅がグラスを置き、三人の顔を見渡した。
「今後の目標について、話し合いませんか?」
雅の言葉に、三人は顔を見合わせる。
「今後の目標……?」
イヴが首を傾げると、綾乃が口を開いた。
「そうだね……。文化祭は成功したけど、やっぱり私たちの今の最終目標は『RESONANCE』でライブをすることだよね」
綾乃の言葉に、三人は静かに頷く。
あの日、オーナーの白石恵美から言われた言葉。
ーー嘘偽りのない音楽を奏でられるようになったら、またここに戻ってきなさいーー
その言葉は、今でも四人の心に深く刻まれている。
「でも、いきなり『RESONANCE』でライブっていうのは難しいかも……。まずは『Sound Nest』でもっと経験を積んだ方がいいよね」
琴音の言葉に、イヴも頷いた。
「そうだね。美月さんのところで、もっとライブをやって、実力をつけないと」
すると、雅は少し考える仕草を見せた後、静かに口を開く。
「……それでしたら、わたくしから一つ、提案がございますわ」
雅の真剣な表情に、三人は耳を傾ける。
「フェスに、出場しませんか?」
「フェス……?」
イヴが不思議そうに首を傾げた。
雅はスマートフォンを取り出すと、画面を三人に見せた。
そこには『Grand Sound Genesis』という大きなロゴと、巨大な野外ステージ、そして大勢の観客が映っている。
「うわぁ……すごい……」
イヴは目を輝かせながら、その画像を食い入るように見つめた。
「これは『Grand Sound Genesis』、略して『GSG』と呼ばれる音楽フェスティバルですわ。複数のバンドやアーティストが一つの会場に集まり、それぞれのステージで演奏を披露する、大規模な音楽イベントですの」
雅は画面をスクロールしながら、さらに説明を続ける。
「このフェスは毎年開催されておりまして、特に新人バンドの登竜門として有名ですわ。過去には、ここから大きく羽ばたいたバンドも数多くいらっしゃいますの」
「へぇ……そんなすごいフェスがあるんだ」
イヴは感心したように呟く。
「フェスは、ライブハウスとは違い、より多くの観客に自分たちの音楽を届けることができますの。そして何より……」
雅は一度言葉を区切ると、三人の目をまっすぐに見つめた。
「様々なジャンルのバンドと出会い、刺激を受けることができる。わたくしたちが成長するには、最高の場所だと思いますわ」
雅の言葉に、三人は顔を見合わせる。
「でも、フェスって……誰でも出られるものなの?」
綾乃が尋ねると、雅は静かに頷いた。
「ええ。もちろん、審査はございますわ。GSGには『新人発掘枠』という特別なステージがあり、結成して五年未満のバンドが対象ですの」
雅は再びスマートフォンを操作し、詳細ページを見せる。
「この地区では毎年の予選会場として、7月末にライブハウス『RESONANCE』で行われ、そこで選ばれた三組だけが本戦に出場し、さらにその本戦で上位五組のみがフェスのステージに立てますの」
「『RESONANCE』……!」
三人は驚きの声を上げた。
「ええ。つまり、GSGの予選に出場するということは、わたくしたちがオーナーに認められるチャンスでもあるのですわ」
雅の言葉に、綾乃の胸が高鳴る。
『RESONANCE』のオーナー、白石恵美。
彼女に認められること。
それは、綾乃たちの目標そのものだ。
「審査……」
琴音は不安そうに呟く。
「大丈夫ですわ。バンドが結成して、経験不足なのはたしか。文化祭で成功させたのも小さな実績でございます。ですが……」
雅はそう言って、三人に微笑みかけた。
「わたくしたちの音楽は、誰にも負けない。そうでしょう?」
その言葉に、綾乃は静かに頷いた。
「……そうだね。私たちの音楽なら、きっと多くの人に届けられる」
「よし! じゃあ、フェスに出場しよう!」
イヴが拳を握りしめて叫ぶと、琴音も力強く頷く。
「うん……! 頑張りましょう……!」
そして四人は、お互いの顔を見合わせ、グラスを掲げた。
「『Aura・Notes』、GSG出場、頑張ろう!」
イヴの掛け声に、三人も続く。
「「「おー!」」」
新たな目標に向かって、四人の物語は再び動き出そうとしていた。
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