第77奏:四人の音楽
ライブが終わり、文化祭も無事に終了した四人は、正門へと向かっていた。
「最高だったね!」
イヴが満面の笑みで言った。
「うん……! みんな、本当にすごかった……!」
琴音も興奮した様子で頷く。
「わたくし、本当に幸せでしたわ」
そして雅も優しい微笑みを浮かべた。
すると、綾乃のポケットから携帯の通知音が聞こえ、携帯を取り出して見ると、父親からの連絡がきている。
「お父さんから、また打ち上げでうちの店を使っていいって」
「本当に! やったぁ!」
綾乃の言葉と喜ぶイヴの姿に、雅は首を傾げる。
「…うちの店、ですの?」
「うん、綾乃ちゃんの家、蕎麦屋さんなんだ」
イヴがそう言って笑うと、雅は物珍しそうな目で綾乃のことを見つめた。
そして綾乃の実家である蕎麦屋に到着すると、雅は店内を物珍しそうに見回した。
「わたくし、このようなお蕎麦屋さんで食事をするのは、初めてですわ」
雅の言葉に、三人は顔を見合わせた。
「ここのお蕎麦……本当に美味しいですよ」
琴音はそう言って、雅に微笑む。
そうして各々席につき、注文をすると、しばらくしてテーブルに蕎麦などが並べられた。
「それじゃあ、今日の文化祭のライブお疲れ様でした! 乾杯!」
イヴの掛け声と共に手に持ったグラスを掲げる。
そこから四人は、今日のライブの感想を語り合った。
「琴音の作った曲、『欠片の音色』、本当に最高だったね!」
イヴは楽しそうに蕎麦を啜りながら言った。
「うん……、綾乃のベースも、イヴのギターも、前よりもっと、力強くなってて……本当に雅さんのおかげです」
琴音はそう言って、照れたように俯く。
雅は熱心に蕎麦を箸で持ち上げると、一口、口にする。
その瞳は驚きと喜びに輝いた。
「温かくて、とても美味しいですわ!」
雅の言葉に三人は顔を見合わせ、温かい笑みを浮かべる。
そして食事を終え、くつろいでいると、綾乃の父が四人分の皿を手にやってきた。
「文化祭、頑張ったご褒美だ」
その皿には蕎麦屋には珍しい、抹茶のアイスクリームが乗っていた。
「え、うちの店、抹茶アイスなんてないはずだけど、買ったの?」
「……いや、俺が作った」
「お父さん、アイス作れたの!?」
綾乃の問いに、父は無言で頷いた。
すると、雅は初めて食べる蕎麦屋のデザートに、また瞳を輝かせる。
そうしてアイスを食べ終え、一息ついた頃。
「そう言えば、今更ですけど、バンドのお名前はなんですの?」
雅の唐突の言葉に、三人は顔を見合わせる。
前にもバンド名について話し合ったことはあったがすぐに話は流れてしまった。
改めて、考えてみると、そろそろ考えたほうがいいのかもしれない。
「バンドの名前は、まだ決まってないんだ。前にも話したことあるけど、なかなか決まらなくて」
「そうですの」
綾乃が申し訳なさそうに答えると、雅は少し考える仕草を見せ、静かに口を開いた。
「だったら、今、決めません? わたくし、断片的ですが演奏中、皆様から、それぞれ特別な輝きを感じましたわ。それはまるで、その人自身が持つ『オーラ』のようで」
「『オーラ』! いいね! 一人一人輝く『オーラ』! なら、バンド名に『オーラ』は付けたいよね!」
雅の提案に、イヴは椅子から立ち上がって喜びを見せる。
すると、綾乃も考えていた。
綾乃自身も以前から案があったが、あまりピンと来ず、ボツにしていた案を言葉にする。
「……『オーラ』か。私はそのオーラが音になっていく感じがするから……『ノーツ』って付け加えたいな」
そして綾乃は、雅の言葉に続けるように言った。
「……おーらのーつ……オーラノーツ。平仮名やカタガナで言うと、見栄えがあまり良くないから……アルファベットにして、『Aura・Notes』なんてどうですか……?」
「『Aura・Notes』! うん、これにしようよ!」
最後の琴音の提案に、イヴは喜んで賛成し、琴音にハグをする。
「『Aura・Notes』……。わたくし、その響き、とても好きですわ」
雅もそう言って微笑んで頷いた。
綾乃も喜びを噛み締める。
新しい仲間を迎え、最高のライブを成功させ、最後にバンド名が決まる。
そしてここから始まる、四人の奏でるハーモニーの物語が、ここに始まるのであった。
カケラ ー完ー
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