第76奏:最高のライブ
文化祭のステージに四人の姿。
大勢の観客を前に、イヴがマイクを握る。
「皆さん、盛り上がってますかー!」
イヴの声に、観客が「うぉー!」と応える。
「私たちの音楽を聴いてください!」
そしてイヴの言葉に、会場から大きな拍手が巻き起こる。
「まずは、メンバー紹介! ギターボーカルは私、イヴ! そしてベース、綾乃! キーボード、琴音!」
三人の紹介が終わると、イヴはドラムセットに座る雅に、にこやかに顔を向けた。
「そして今回、私たちの新しいドラム、雅!」
その場で雅は静かに立ち上がり、深々と頭を下げる。
「最初に私たちの始まり曲『再生の詩』を聴いてください!」
そして琴音の優しい音色が鳴り響く。
イヴもその音に呼応するように、鋭く、そして美しいメロディーを奏で始めた。
そこに雅のドラムが、力強く、正確なリズムを刻み、綾乃のベースが、そのグルーヴを支えていく。
四人の音が、会場の空気を一変させ、観客は、その演奏に次第に体を揺らし始めた。
一曲目が終わり、つぎに二曲目、『Blue-Echo』。
会場の熱気が冷めやらぬ中、綾乃のベースが力強く、そして情熱的なスラップ奏法を刻み始める。
さらにイヴのギターが、そのグルーヴに呼応するように、激しく、そして情熱的に、会場を支配していく。
琴音もキーボードに、激しく、強い感情的な深みのある旋律与える。
そこに雅のドラムが力強く、曲の感情の起伏を表現していく。
四人の音は、まるで一つの生き物のように、呼吸を合わせ、観客を魅了していく。
そしていよいよ最後の曲。
息の絶え絶えなイヴだが、深呼吸をし、言葉を綴る。
「……最後に、私たちの新曲『欠片の音色』を聴いてください。この曲は、私たちの新しい仲間、ドラムの雅とみんなで作った、私たちにとってとても大切な曲です!」
その言葉に雅は静かに微笑む。
そして琴音が奏でる、儚くも美しいピアノのメロディーで曲が始まった。
それは、まるでバラバラになった心のカケラを表現するように、静かで、繊細な音色。
だが、そこに雅のドラムが加わると、曲は徐々に力強さを増していく。イヴの情熱的なギター、綾乃の温かいベースが重なり、それぞれの『カケラ』が一つになっていく。
未完成だった曲は、今、四人の手によって、最高の音楽へと昇華されていた。
観客は、その演奏に息をのむ。
心を揺さぶるメロディーと、魂を込めた演奏、それは観客の心を掴んで離さない。
会場は熱狂に包まれていた。
そして演奏が終わり、拍手喝采が巻き起こる。
四人は顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。
その時、雅の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
完璧ではない自分。
完璧ではない音楽。
それでも、仲間と共に奏でる音楽は、これまでの人生で感じたことのないほど、心を震わせるものだった。
「……最高……」
雅は、震える声で小さく呟く。
そしてライブは大成功に終わり、四人はステージを降りた。
達成感と喜びに満たされたメンバーは、固い握手を交わす。
このライブは、四人の絆をかけがえのないものにしたのであり、ここから始まる物語の第一歩なのであった。
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