第72奏:最高の音楽を
「……雅さん、あの、これ……」
練習が始まる前、琴音は紙袋を差し出した。
「わたくしに? ありがとうございますわ」
雅は紙袋を受け取り、中から取り出すと素朴な包装に包まれた焼き菓子で、それを見た雅は嬉しそうに微笑んだ。
「……わたくし、このような心遣いは初めてで、とても嬉しいですわ」
そう言って、雅は傍らに控えていた執事の桐生に声をかけた。
「桐生、休憩の時に、皆様に紅茶を淹れて差し上げて。わたくしは、こちらの焼き菓子を頂きますわ」
「かしこまりました」
桐生は雅から紙袋を受け取ると、恭しく頭を下げ、スタジオを後にした。
「さあ、お話しはこれくらいにして、練習を始めましょうか」
そして雅は改めて、三人をドラムセットの前に誘う。
そこには『Ablaze』のライブの時に使用したのと同じのドラムセットが鎮座していた。
「皆様をこのスタジオで練習することに提案したのは、理由がございますの」
雅はそう前置きをし、三人の目をまっすぐに見つめる。
「貴女方の才能を最大限に引き出すために、わたくしは最高の環境を整えました。さあ、最高の音楽を創り出しましょう」
その言葉に、三人の胸は高鳴りだす。
最高の環境で、四人での本格的な練習が始まった。
文化祭ライブの成功に向けて、四人の音は、一つに重なり合っていく。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
よければブックマークとご感想、お待ちしております。
毎日午後5時30分に更新しております。
次回の更新は、第73奏:それぞれの才能、12月27日土曜日午後5時30分です。




