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Sounding Dreams - 再び巡り逢う音 -  作者: 蒼月 美海
三つの音、一つのメロディ
7/38

第6奏:錆びついた弦と、届かない音

この度は本作品をお選びいただき、誠にありがとうございます。

前話において、本日投稿するとお伝えしたと思いますが、本小説のストックが60話近く溜まっておりまして、早くみなさまにお見せしたい一心ですので、今日から毎日投稿したいと思います。

またストックが減りましたらペースを落とすかもしれませんが、それまでのお付き合いをよろしくお願いします。

 ライブ前日。

 綾乃はいつもの公園に行かず、放課後はまっすぐ家に帰り、蕎麦屋の手伝いに打ち込む。

 客の注文を取り、そばを運び、食器を洗う。

 単調な作業に身を任せることで、心の穴を埋めようとしていた。

 しかし、ふとした瞬間にイヴの笑顔や彼女の歌声、そして自分から手放したはずの紺色のベースが脳裏をよぎる。

 その日の夜、綾乃は自室の机に向かい、教科書を広げていた。

 だが、文字は頭に入ってこない。

 視線の先には空っぽになった部屋の隅。

 かつて、そこには自分にとってかけがえのない存在が置かれていた。

 それが今、イヴの元にあるはず。


「……これで、よかったんだ」


 そう呟く声はまるで、自分を納得させようとしているかのよう。

 しかし、心は千々に乱れている。

 音楽をやめたはずなのに、どうしてこんなにも苦しいのだろう。

 その時、綾乃のスマートフォンが震えた。

 画面には、イヴからのメッセージ通知が表示されている。


『綾乃ちゃん、元気?明日、いよいよライブだよ! 私のバンドがステージに出るのは、夕方の6時半から! もしよかったら、見に来てくれると嬉しいな!』


 イヴらしい、明るく無邪気なメッセージだ。

 だが、綾乃の心は激しく揺さぶられる。

 返信を返そうと動いた指が止まった。


「……もう、関わらないって決めたのに」


 綾乃はスマートフォンをベットの方向へ下から投げる。

 一方、イヴは自室でスマートフォンを握りしめながら、既読になった綾乃からの返信を待っていた。


「……やっぱり、怒ってるのかな」


 イヴは、悲しげに呟く。

 彼女の近くには、綾乃から強引に渡された紺色のベースが立てかけられ、それを眺める。

 その隣には、自分の赤色エレキギターが置かれていた。


「うん……」


 イヴは、小さく頷いた。

 綾乃が教えてくれたギターのコードを指先でなぞってみる。

 不器用だった自分の指が、少しずつ形にはなっているとは思う。


「綾乃ちゃん、絶対見に来てね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、最高の音を出すから」


 そう心に誓いながら、イヴはライブへと向かう決意を固めた。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

よければブックマークとご感想、お待ちしております。


毎日午後5時30分に更新しております。

次回の更新は8月23日土曜日午後5時30分です。

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