第68奏:四人揃って
雅の加入を喜びながらも、イヴと琴音は、その後の自己紹介で雅が九条グループの令嬢であること知り、緊張を隠せなかった。
「……雅さん……何か、飲み物でも……?」
「お気遣いなく。わたくし、大丈夫ですわ」
琴音は緊張しながらも、雅に聞いた言葉に、雅は優しい笑みでそう答える。
「じゃあ、さっそく練習始めようか」
綾乃はそんな二人の表情や態度を見て、緊張をほぐすように言った。
雅もそんな三人の様子を静かに見つめた後、改めて口を開く。
「わたくし、昔から完璧を求められることに慣れております。ですが、貴女方が奏でる、心を込めた音楽をわたくしは心から愛しておりますわ」
そして雅は真剣な眼差しで三人に尋ねた。
「それで今後の活動について、貴女方はどのような方針で進んでいくおつもりですか? わたくしは、貴女方の音楽を最大限に活かせるよう、努力を惜しみませんわ」
その言葉に、琴音は顔を伏せてしまう。
「……実は、まだ新曲が上手くできなくて……文化祭まで、もう時間がないのに…」
「文化祭……?」
琴音は不安そうに言うと、雅は首を傾げた。
そこで綾乃は文化祭が7月上旬にあり、時間がないことを説明する。
「……なるほど、そう言うことでしたの」
「もっと良い曲にしたいって思えば思うほど、自分がどうしたいのか、わからなくて……」
すると、雅は手を琴音の前に差し出した。
「でしたら、わたくしにその未完成の曲を聴かせていただけますか?」
雅にそう言われた琴音は、申し訳なさそうにスマートフォンを雅に渡す。
そうして雅は未完成の新曲を録音したものを再生し出した。
スタジオに流れるのは儚くもあり、美しく、そしてどこか楽しげなピアノのメロディー。
そしてサビのところで、力強いメロディーへと変わる。
雅はじっとその音に耳を傾けていた。
メロディーが途切れた瞬間、雅はスタジオに置かれているドラムの調整やセッティングをする。
準備が終わると、すぐにドラムスティックを握り、ゆっくりと叩き始めた。
そのドラムは、未完成のメロディーに寄り添うように、力強く、新たなリズムを刻んでいく。
流れていたメロディーは未完成だったはずなのに、雅のドラムが加わることで、まるで初めからそうであったかのように一つの音楽として完成されていった。
演奏が終わると、雅は静かにスティックを置く。
「……これでいかがかしら?」
雅の言葉に、三人は顔を見合わせた。
「す、すごい……!」
イヴが、震える声で言うと、琴音も続ける。
「……なんだか、本当に曲に命が吹き込まれたみたい……」
すると、琴音は感極まった様子で目を潤ませるのであった。
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