第60奏:夜の約束
ライブハウスの外は、まだ観客たちの興奮が冷めやらぬまま、熱気に包まれていた。
綾乃、イヴ、琴音の三人はライブの余韻に浸りながら、雅のソロドラムについて語り合う。
「最後のソロドラム、すごかったよね! なんかもう、言葉にならないっていうか!」
イヴはまだ興奮が収まらない様子で、瞳を輝かせる。
「うん、まるで……私たちの心臓を叩いてるみたい」
琴音は、穏やかな口調で、そう言う。
「……うん」
そして最後に綾乃は二人の言葉に、静かに頷いた。
三人は雅の音楽が、自分たちにどれほど大きな影響を与えたかを、改めて感じる。
すると、綾乃はイヴと琴音に先に帰るように促した。
「……ごめん、『Ablaze』のドラムの子と話したいから、もう少しここにいる。二人は先に帰っていいよ」
イヴと琴音は綾乃の言葉に、心配そうな表情を浮かべたが、2人はゆっくりと頷く。
「わかった! 無理しないでね綾乃ちゃん」
「……綾乃さん、また明日学校でね」
そう言って、二人は綾乃に向けて手を振り、そのままライブハウスを後にするのであった。
その頃、ライブハウス『RESONANCE』の楽屋内。
楽屋の中には、雅と『Ablaze』メンバーがいた。
雅は『Ablaze』のボーカルに深々と頭を下げる。
「勝手な行動、大変申し訳ありませんでした」
だが、雅の言葉にボーカルは静かに首を振る。
「いいんだ。貴女の気持ちはドラムの音で、ちゃんと伝わったから」
その言葉に、雅は顔を上げた。
ボーカルは、彼女の肩にそっと手を置くと、微笑んだ。
そしてこの日、『Ablaze』は正式に解散した。
打ち上げは後日行うことが決まり、他のメンバーは帰路に着く。
雅も同じで帰宅しようとライブハウス『Sound Nest』の裏口から出ると、そこには1人の少女が立っていた。
「ドラム、最高の演奏でした」
「貴女は……」
そこに立っていたのは、綾乃だった。
雅は突然いた綾乃の姿に驚いたが、二人はそのままゆっくりと歩き出す。
「……ありがとうございました」
そう言うと雅は立ち止まり、綾乃に向けて頭を下げた。
「あなたがいなければ、わたくしは、もう二度とドラムを叩くことはなかったでしょう」
「……それなら、今度こそ私たちとバンドを組んでくれませんか?」
綾乃は改めて雅に尋ねる。
その言葉に、雅は静かに微笑んだ。
「そのお誘い、明日の放課後、お答えしますわ」
雅はそう言って、綾乃の瞳をまっすぐに見つめ、言葉を続ける。
「貴女の学校まで迎えに行きますわ。門の前で、待っていてください」
そして綾乃は雅からの誘いに頷き、そのままそれぞれの家路に着くのであった。
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