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Sounding Dreams - 再び巡り逢う音 -  作者: 蒼月 美海
カケラ

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第56奏:空白のステージ

 6月20日、『Ablaze』の解散ライブの日。

 綾乃はイヴと琴音に、昨夜ライブハウスの裏で見つけたドラムスティックをリュックサックから取り出し、二人に見せた。


「…これ、多分だけど、『Ablaze』のドラムの子のだと思う。『Sound Nest』の裏で見つけてきた」


 その言葉に、二人は驚いたような表情を浮かべ、言葉を失う。


「……なんで、そんなところに?」


 イヴが、信じられないというように尋ねた。


「わからない……」


 しかし、綾乃にもその理由はわからず、スティックを握りしめてしまう。

 だが、悩んでいてもわからないものはわからない。

 三人はその理由を求めるため、『Ablaze』が解散ライブを行う会場、ライブハウス『RESONANCE』へと向かった。

 そして会場に到着すると、ライブハウスの中や外には多くの観客で賑わっている。

 以前、『RESONANCE』のオーナーから、認めるまでライブには出させないと言われたが、ライブハウスには来てもいいと言われた。

 そのおかげか、スタッフから声がかかることもなく、受付ですんなりチケットを買い、そのままドリンクも買えたのだ。


「すごい人だね……」


 イヴの言葉に二人も言葉を失ってしまう。

 ライブハウスの中や外の人も多かったが、ステージ近くに行くと人が密集していた。

 我れ先にと人がぎゅうぎゅうに詰まっている。

 三人はその中に入る勇気はなく、ステージ付近に密集している人たちの後ろに立つ。

 そして時間になり、『Ablaze』のメンバーがステージに現れた。


「……え?」

 

 綾乃は戸惑ってしまう。

 何故なら、そこにドラムの少女の姿はないからだ。

 それは観客も同様で戸惑いを隠せず、会場内がざわざわとし出す。

 すると、『Ablaze』のボーカルがマイクを持って、静まり返った観客に語りかけ始めた。


「……本日、急なことですが、ドラムのクワイエットが来れなくなりました」


 その言葉に、三人は息をのんだ。

 観客も先程までざわざわしていた声が一瞬だけ静かになった、しかし、すぐに先ほどとは比べ物にならない程のざわざわとした声が響き出す。

 この時、綾乃は動揺が隠せずにいた。


(どうして? あの時、高みを目指すって言ってたのに……)


 ドラムの少女が一人で「高み」を目指すと、固い決意を語っていたことを綾乃は思い出し、なぜステージに立たないのか、その矛盾に深く困惑する。


「嘘でしょ?」


「……そんな、何があったの……?」


 イヴは信じられないというように呟くと、琴音も不安そうな表情で呟いた。

 しかし、誰も答えられない。

 三人は言葉を失い、ただステージを見つめることしかできなった。

 だが、綾乃はどうしても納得がいかず、イヴと琴音に何も告げずにライブハウスから飛び出してしまう。

 綾乃は無意識のうちに、いつもあの少女が練習していたライブハウスの裏手に足を向ける。

 何故、そこに足を向けてしまったのかは綾乃にもわからない。

 そしてライブハウスの裏手に回ると、そこに赤い髪をしたツインテールの少女が立っていた。

 紛れもなく、ここでドラムの叩いていた少女、『Ablaze』のドラムだ。

 彼女はドラムスティックも持たず、ただ、静かに佇んでいる。

 しかし、綾乃と少女は目が合ったが、お互いに声をかけない。

 二人は言葉を交わすことなく、ただ静かに向かい合う。

 綾乃の目には、彼女が抱えている深い葛藤を感じ取ることができたからだ。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。

よければブックマークとご感想、お待ちしております。


毎日午後5時30分に更新しております。

次回の更新は、第57奏:最後のドラム、10月12日土曜日午後5時30分です。


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