第50奏:静かなるセッション
綾乃はそれから毎晩のようにライブハウス『Sound Nest』の裏手に足を運んだ。
赤い髪をしたツインテールの少女は、いつもそこでドラムを叩いている。
初めはただ見守るだけだった綾乃も、いつしか彼女のドラムのリズムと自分のベースの音を重ね合わせる想像をしていた。
(ここに、このベースの音が加われば……)
そんな想像上のセッションを綾乃は一人で何度も繰り返していた。
数日後
その日の少女の演奏は、これまでものとは全く違っていた。
まるで、何かを振り払うかのように。
まるで、心を解放するかのように。
彼女は、力強く、感情的にドラムを叩いていく。
それは一つ一つの音が、彼女の内に秘められた情熱と音楽への渇望を物語っているかのよう。
その演奏を聴いた綾乃は確信する。
演奏を終えた女性はゆっくりと立ち上がり、スネアドラムの上にドラムスティックを置いた。
そして綾乃は一歩踏み出し、彼女の前に立つ。
「……あの」
突然の声に少女は驚いた表情をしながら振り返ると、綾乃は言葉を続けた。
「あなたの音楽、ずっと聞いてて確認しました」
そのまま、少女へとさらに一歩踏み出す。
「……貴女、『Ablaze』のドラムですよね」
綾乃はそう言って、まっすぐと彼女を見つめるのであった。
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