第49奏:確信の音に変わるまで
翌日、綾乃は音楽スタジオに集まったイヴと琴音の顔を見て、昨夜の出来事を話すかどうか、一瞬迷ってしまう。
(…本当に、あの人だったのかな)
昨日の少女は素顔でドラムを叩いていたが、今、綾乃が思い浮かべている『Ablaze』は、常に仮面を付けており、素顔はわからないのだ。
しかし、彼女のあの力強く、魂のこもったドラムの音は、『Ablaze』のドラムと重なって見えた。
まだ確信が持てていない状況でどう伝えるべきか、綾乃は悩んでしまう。
「綾乃ちゃん、さっきからぼーっとしてどうしたの?」
イヴの言葉に綾乃はハッと我に返り、首を横に振る。
「……気のせいだよ」
綾乃はそう言うと、無理に笑顔を作ってみせた。
「そう? なんか、元気ないみたいだったから」
イヴは首を傾げ、綾乃の顔を見ながら心配そうな顔を浮かべる。
しかし、これ以上、二人に探られるとボロが出そうと考えた綾乃は話題を変えた。
「そ、そういえば新曲のメロディはどう?」
綾乃は琴音の方を見ながら尋ねると、琴音は申し訳なさそうな顔をしながら下を向いてしまう。
「ごめんなさい……まだ全然、新曲できてないんだ……」
「無理に焦らなくていいよ、今日は、三人でしっかり練習しよう」
綾乃はそう言って、スタジオのドアを開けた。
その日の練習はいつも以上に集中して行われ、言葉ではなく音で互いの気持ちを確かめ合う。
そして練習を終えると、イヴと琴音と別れた綾乃はまた一人で、ライブハウス『Sound Nest』の前を通る道を選んだ。
(……この音)
ライブハウスの裏手から、力強いドラムの音が聞こえてくる。
綾乃は音の聞こえる方へ足を向けた。
昨日と同じ、赤い髪をしたツインテールの少女がドラムを叩いている。
昨日は物陰から見ていた綾乃だったが、今日は違い、少女の前まで行き、その場で立ち止まり、彼女の演奏をじっと耳を澄ませる。
そして綾乃はここで一つ決めた、この気持ちが確信に変わるまで、ここで演奏を聴こうと。
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