第31奏:魂を宿す音
綾乃の心の傷に向き合い、三人の絆はさらに深まった。
練習は順調に進み、以前よりも一体感のある音を奏でられるようになっているのを感じる。
しかし、美月からの厳しい言葉は、いまだに三人の心に重くのしかかっていた。
「私の歌、本当に魂がないのかな……」
練習の帰り道、ふいにイヴは不安そうに呟く。
「そんなことないよ……! イヴちゃんの歌、すごく素敵だよ……!」
イヴに対し、琴音が必死に励ましていた。
だが、イヴの表情は晴れない。
「でも、美月さんの言ったこと、わかる気がするんだ。私、ただ歌うことしか知らなかったから…」
その言葉に、琴音と綾乃は何も言えなかった。
翌日。
イヴは、スマホに録音した自分の歌を聴きながら、歌詞を何度も読み返す。
(この歌詞に、もっと…もっと私の気持ちを乗せなきゃ)
イヴは誰もいない河川敷で、感情を込めて歌う練習を始める。
それは、ただ声を出すのではなく、歌詞に込められた感情を表現する、孤独な戦いだ。
一方、琴音も部屋にこもってキーボードと向き合っていた。
(私の音は、綺麗すぎる……)
琴音は、元々作ってあった新曲の音源を聴き返していた。
それは、前回のライブで演奏した『再生の詩』とは全く違う、力強く、激しい印象のメロディ。
しかし、今のままでは、美月が求める「自分の色」を表現できない。
その力強いメロディに、琴音はさらに大胆な変化を加えることを決意する。
不協和音を恐れず、自分の指が自然と導き出す音を試していく。
それは、今までの自分を壊し、新たな自分を創り出すための挑戦だ。
そして、綾乃は。
(……本当に、この音を鳴らしたいの?)
美月の言葉を思い出し、ベースを抱きしめていた。
しかし、その手は徐々に強く握り始めている。
今の綾乃は誰のためでもなく、自分のために音を鳴らすことを決意していたのだ。
その音は誰にも負けない、母親との約束を守るために。
そして綾乃の記憶の追憶から、過去の自分を必死に追い出そうするのであった。
数日後。
三人は再びスタジオに集まった。
それぞれの挑戦を経て、三人の顔つきは以前よりも凛々しくなっている。
そして三人は楽器を構える。
「……創ろう、私たちだけの最高の音楽を」
綾乃の言葉に、二人は静かに頷いた。
三人は、オープンライブに向けて、更なる練習を決意し、新曲の完成に全力を尽くすことを誓う。
それは三人にとって、初めての、そして最高の挑戦だ。
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