第25奏:オーナーの求める音楽
ライブハウス『RESONANCE』の楽屋。
オーナーは三人の前に立つと、静かに口を開いた。
「それでイヴちゃん、今日はどういう要件で来たの?」
オーナーの言葉にイヴは意を決し、まっすぐ彼女の目を見て言った。
「はい! 私たち、またここでライブがしたいです!」
しかし、その言葉にオーナーは静かに首を振る。
「それはできないよ」
淡々と答えたオーナーの言葉に、三人の瞳は大きく見開かれた。
「な、なんで、ですか……?」
突然のことにイヴは驚いてしまい、震える声で必死に尋ねる。
「理由は君が一番わかってるはずだよ。君は私に嘘をついた」
白石の言葉に、イヴは息をのむ。
「君は私とライブについて面談した際、ライブには三人で出ると伝えていた。でも、実際には当日まで君たちのバンドは二人しか揃わず、そこにいる彼女がベースをやってくれると言わなかったらどうするつもりだったんだい?」
オーナーは交互にイヴと琴音へ視線を向け、最後に綾乃を見つめた。
「正直、私は君の歌声には、とても期待していた。君の歌声は、人を惹きつける『何か』がある。だけど、嘘からは本当の音楽は生まれない。だから、私は君たちの音楽を認めない限りはここのライブには出させないよ」
オーナーはそう言うと、三人に背を向ける。
「……今日は、もう帰りなさい」
凛は気まずそうに、三人に視線を送る。
イヴは顔を俯かせたまま、何も言わず、琴音は心配そうに彼女のことを見つめていた。
三人はオーナーの言葉が、自分たちに何か大切なことを伝えようとしていることは、ひしひしと感じていた。
しかし、それは喜びでも、悲しみでもない、言葉にできない、複雑な感情だった。
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次回の更新は、第26奏:言葉にできない音、9月11日木曜日午後5時30分です。




