第16奏:新たなオーバーチュア
公園のベンチに座った三人は、結成したバンドの今後について話し合おうとしていた。
「やったー! これで、またみんなで音楽ができる!」
イヴは、心から嬉しそうな笑顔を浮かべている。
「改めて……ありがとう、綾乃ちゃん」
琴音もまた、安堵したように微笑んだ。
「それでね、私もまだ聴いてないんだけど、琴音ちゃんが昨日のライブを参考に新曲のメロディを作ったんだ!」
「え……待って、昨日今日で!?」
綾乃は驚きのあまり、琴音に視線を送る。
つまり、昨日のライブから今日までの短時間で作ったということ、そのあまりもの事実に驚きを隠しきれなかった。
そして琴音は少し照れながらも、スマートフォンを取り出す。
「あの……まだ、未完成ですけど、一応、作ってみました」
琴音はスマホのスピーカーからメロディを流し始める。
流れてきたのは、前回のライブで演奏した『再生の詩』とは全く違う、力強く、激しい印象のピアノのメロディだ。
「……っ!」
「すごい……! この曲、なんだか、すごくかっこいい!」
イヴは、身を乗り出すようにしてメロディを聴き入る。
綾乃もまた、その曲に耳を傾けていた。
(この曲……昨日の……)
綾乃は昨日のライブで見た、倉本響のバンドLuminousの演奏を思い出していた。
自分たちの優しい音とは対照的な、あの力強い音。
この曲は、まるで『再生の詩』とLuminousが披露した曲の音が一つになったような、そんな不思議な感覚を綾乃に与える。
「んーっ!! この曲、早く歌いたい! ライブしたい!!」
「……待って」
メロディを聴き終わったイヴは興奮した様子で立ち上がったが、綾乃は静かにそれを制した。
イヴは、不思議そうな顔で綾乃を見つめる。
「それもだけど、まだ……何も決まってない」
綾乃は、そう言うとゆっくりと口を開く。
「ライブには出たいのはわかる、だけど、今後のことや目標、私たちのバンドがどうなりたいのか。まず、そこから決めないと」
イヴと琴音は、綾乃の真剣な表情に、静かに頷いた。
「そうだね。そうだよね、綾乃ちゃん」
イヴはそう言うと、再びベンチに座り直した。
「じゃあ、綾乃ちゃんは今後どうしたい?」
イヴの言葉に綾乃は驚き、目を丸くするのあった。
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次回の更新は、第17奏:五線譜の先の目標と課題、9月2日火曜日午後5時30分です。




