第11奏:再来の旋律
ーーライブまで、残り5分ーー
スタジオに来た女性の言葉に促され、三人はステージの裏へと向かっていた。
今、綾乃の胸は高鳴っている。
決して、緊張だけではない。
懐かしい、その一言が心の中にある。
そして重厚な幕の向こうからは、すでに観客たちのざわめきが聞こえてきていた。
「ねえ、綾乃ちゃん……」
イヴが不安そうに綾乃の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ」
綾乃は、そう言って優しく微笑んだ。
その一言はイヴ自身のためでもあり、そして、何よりも綾乃自身に言い聞かせる言葉。
(……私はただ、今日限りの臨時メンバー。この子たちのライブを、成功させるだけ)
綾乃達はステージへ続く階段を上がっていく。
足を踏み出すたびに床板がギシリと音を立て、その音は綾乃の心臓の鼓動と重なって聞こえてくる。
いよいよステージ袖に到着すると、スタジオに迎えにきた女性が3人に声をかけてきた。
「あんたたち、全力で楽しんできなさい!」
「うん! いってくるね、凛さん!」
イヴは満面の笑みで答えた。
琴音も緊張した面持ちで、小さく頷く。
綾乃も自分のベースをそっと抱きしめ、その感触がライブに出た際の記憶を鮮明に蘇らせていた。
ライブハウスの熱気、鳴り響く歓声、そして、自分たちが奏でた、^_^あの曲。
(……もう、二度と戻れない過去)
綾乃はそっと目を閉じた。
しかし、すぐに目を開ける。
(でも、今は……)
そこには、不安な表情で自分を見つめるイヴと琴音の姿があった。
綾乃はそんな皆んなに鼓舞するように、声を上げる。
「いくよ、二人とも!」
綾乃の声にハッとした2人は、大きく頷いた。
その表情は先程の不安はない、今は覚悟を決めた顔だ。
さあ、ライブが始まる。
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