03 Fランク冒険者
~ダンジョン内部~
先輩に丸め込まれた気がする...
先輩と僕はゆっくりとダンジョン内を歩いていた。
説得され渋々ダンジョンに入ったとはいえ久しぶりの冒険者活動、少しワクワクしている自分がいるのがわかる。
「さすがに武器くださいよ。この辺りからはいつ敵が出てきてもおかしくないじゃないですか」
先輩は今もAランクだし仕留め損ねることはないと思うけど癖なのか、恐怖なのか武器がないと安心できない。
先輩は死角から迫りくるDランクモンスターを風魔法でこま切れにしながらニヤニヤして言った。
「え~?拳でいけるんじゃない?」
「絶対無理ですよ!?」
冗談だと思うけど、ちょっとやりそうな顔をしているから怖い。
「う~ん。そうか~...」
先輩は少し笑いながらポケットから、僕が昔使っていたショートソードを引っ張り出し、またポケットに手を突っ込み何かを探している。
冗談だったみたい。よかった~っていうかそのポケットはどうなってるの...?
「たしか、君の戦い方はショートソードと防御魔法だったよね?」
そう。僕の戦い方は、スキルを使いながらショートソードと防御魔法+魔力で身体能力を高め戦うというもの。
「あとなんか使ってたっけ?」
そういいながら先輩は僕にショートソードとポーションと何かのアイテムと思われるものを渡してきた。
ポーションの容器には「Aランク治癒ポーション」と書かれている。
「え?このポーション高いやつじゃないですか!」
Aランク治癒ポーションと言えば、なくなった手が生えてくるレベルのポーションだ。オークションでは2000万越えとか聞いたことがある...。
「君に死なれたら嫌だからね~。それに今のダンジョンは何が起こるかわからないってのは君も知ってるでしょ?」
言ってることは正しいけど...腕を失うまでして戦いたくないんだけど...。
「そういうやばいやつがいたら先輩が倒してくださいよ」
僕がそういうと先輩は少し申し訳なさそうな表情で言った。
「ちょっと~私この後しないといけないことがあるんだよね~」
???
へ?僕1人でダンジョンへ行けってこと?先輩が無理やり連れてきたのに...!?
「いやいや、無理やり連れてきたのは先輩じゃあないですか!」
少しキレ気味で残るように説得する僕。
「いやいや、ちょっと戦ってみ?大丈夫だって!」
そういいながら先輩はポケットの中を探る。
「ちょっと!テレポート用のアイテム探してます!?嘘でしょ!?」
そしてテレポートアイテムをポケットから引っ張り出して言った。
「ごめんね~終わったらその白いアイテムで連絡して~「コール」って言って、伝えたいこと念じればこっちでわかるから~。じゃ!終わったら!テレポート」
「+2ランクの随伴人が必要なんですよ!僕''F''ですよ!?」
「必要なんですよ!」と言ったあたりで先輩は目の前から消えた。
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~Dランクダンジョン上層~
現在、少しずつ中層に向けて移動中。
Dランクの魔物、ゴブリンを2体倒した。思ってた以上に進めてる。
最初は先輩にムカついてたけど、帰ろうとしたところを奇襲してきたゴブリンを倒したらもうちょっとやりたくなってきて、今は久しぶりの冒険者活動を楽しんでる。
「あーあ。なんでこんなに筋肉ないんだよぉぉぉぉ~~」
もっと昔みたいに走って戦いたいのに、走ると動悸で隙ができちゃうから走れない。
と、自分の叫び声を聞いたのか3体のゴブリンが正面から走ってくる。
1体は弓持ちのようだ。
うわ~面倒だなあ...この体じゃあ1体でもしんどいのに2体も...。弓にも気を付けないといけないのか...。
と言いながらも、死ぬかもしれない状況を自分は楽しんでいた。
どう弓を排除するか考えていると、こん棒と剣を持ったゴブリンが戦闘態勢に入り約10mぐらいまで近づいてきた。
「どうしようか...」
あれ?弓持ってたやつはどこ行った?
「ッ!?シールド!」
その時、矢が飛んでくるのが見えた、本能的に防御魔法を起動させる。
ブォンッ
矢はシールドに阻まれ地面に落ちた。冷や汗が出る。
あっぶな...剣持ちに気を取られすぎた...。
矢は防御魔法で防げる。でも戦ってる間に飛んで来たら気づけるだろうか?それとも逃げる?やっぱり1発殴って逃げようか...。
「いや、やっぱりやるか...」
今逃げれば絶対後々後悔するだろう。...戦おう!久しぶりに''生きてるな''って感じられてるんだから!
こん棒は危なくない。危険なのは剣と弓だけ。こん棒は当たってもいいから、剣と弓だけは何としても防ごう。
「ふぅ...。剣に注意。矢が1番危険。冷静に。はぁ、はあーーー!!」
冷静に、冷静に。
しっかりと深呼吸をして自分を勇気づけ、注意しないといけないことをしっかりと言葉に出し忘れないようにしてからゴブリンへと突撃する。
小さい防御魔法を右手に出し、左手でショートソードを構え走る。
同じくゴブリンたちも武器を構え走ってくる。
どんどんゴブリンとの距離が近づいていく。3m、2m..今ッ!
自分とゴブリン。同時に剣を振り下ろす。
自分は上から下に向かって縦に切りつける。
最初の一撃を与えようとした瞬間、遠くにいる弓持ちゴブリンが放った矢を視界の左端で捉えた。
どう対処するか一瞬考えるため一瞬体が止まる。
「シールド」
今回の自分は冷静だった。矢が来る方向に防御魔法を張り、剣をかわすために一歩下がる。
想像通り矢はシールドに阻まれ、剣はは服をかすめた。
矢が来るとそれの対処で一瞬、近接が危険になる。だから次、矢を撃たれる前に仕留めないと。
そう考えるとすぐさま前進しカウンターを狙う。ショートソードを右から''一''の字を書くように払う。
剣はこん棒持ちゴブリンの脇腹に当たり、倒れた。
剣持ちゴブリンがすぐさま反撃してくる。上から斜め下へ向かって振り下ろしてきた。
だがその剣は大振りで隙だらけだ。
ここがチャンス!!
「ふっ!」
剣を避け懐に入り込むと勢いよくタックルする。
ゴブリンは姿勢を崩し自分と一緒に倒れこんだ。
ゴブリンはクッションにしたせいなのか、頭を打ち気絶している。
その時左側からヒュンッと弓を射る音が聞こえた。
シールドを弓持ちゴブリンがいる方向の全面に配置し、自分は気絶しているゴブリンの心臓に剣を立てる。
ブォンッと防御魔法が機能した音がした。
グロイしやりたくないけど、完全に無力化しないと奇襲される可能性がある。
''グロイから''などの理由でしなかった冒険者は重傷を負ったり亡くなったりしている。冒険者になると最初に教えられるとても重要なことだ。
倒れた剣持ちゴブリンの死亡を確認したので弓ゴブリンのほうを警戒しながら、最初に倒したこん棒を持っていたゴブリンのもとへ向かう。
途中、矢を放ってきたが、残りは弓持ち1人。警戒していればどうってことない。
最初に倒したこん棒ゴブリンを完全に無力化し、弓持ちのもとへ向かう。
結構、考えた瞬間動けたことに驚いてる。もうちょっと苦戦すると思ってたけど何とかなってる。
そんなことを考えながら弓持ちゴブリンを探していると、前方に逃げる後ろ姿が見えた。
弓だし近接戦闘できないから逃げたのか...。妥当な判断だね。
思ってたより疲れてないし魔力もそんな減ってない。追おうか!
アドレナリンがドバドバ出て、戦うことしか頭にない僕はゴブリンを追いかけた。
小説の題名を「暗闇のその先に...」から「元Aランク冒険者はダンジョン配信者として返り咲く。」に変更しました。
~今日の一言~
良い小説名を思いついてウキウキ。3000字も書いたらしい。