4 日菜子とデート
「駿せんぱーい!!こっちこっち!!」
「わ、わかったから大声出すな!」
ひかりから告白され、悩んでいた俺にその日の夜、日菜子から電話があった。
明日、二人で出かけないか、という遊びの誘いだった。
悩んでいても答えは出ないと思い、了承した。
悩みの種は、この日菜子だった。
俺は部活動のなかで、マネージャーの日菜子に惹かれていた。
最初はただ、可愛くて元気がある子、としか見ていなかった。
それからの日菜子は、サッカー部全員に対して、献身的に振る舞い、皆からの信頼を勝ち取っていった。
俺はそれほどサッカーに対して、情熱的というワケでは無かった。
何とかレギュラーになれていたが、そこまで上手いワケでもなかった。
だが、日菜子の頑張りを見て、俺も頑張ってみようと思えた。
俺が意識を変えて努力を始めると、日菜子の俺に対する態度にも変化があった。
他の部員よりも、俺には優しく接してくれるようになったと思う。
そのうち、俺に対する好意をストレートに表現するようになっていった。
嬉しかった。
日菜子のおかげで頑張れた。
だから、ひかりに告白されても、すぐに返事をすることが出来なかった。
「駿先輩!今日は私の服選びに付き合ってくださいね!」
「わかったよ、わかったから落ち着けって!」
「だって!嬉しいんです!」
「嬉しいって言ったって、俺、女の子の服なんてわかんないぞ?」
「いいんです!駿先輩が選んでくれるのがいいんです!!」
「そ、そんなもんか?」
「そんなもんです!!」
一昨日来たショッピングモールにて。
「先輩!!これは?」
「うーん、可愛いぞ?似合ってる。」
「……違うの持ってきます!」
「先輩!!今度はこれ!!」
「お、おう。可愛いと思う。」
「……これでもないかあ……。」
「これならどーですか?!」
こ、これは……。ちょっと露出が多くないかな……。
「ち、ちょっと露出が」
「じゃあこれにしますね!!」
えっ?あれ?
「ちょ、ちょっと待て!ホントにそれにするのか?」
「はい!駿先輩の反応で決めました!」
「い、いや、それは」
「いいんです!私がこれが良いって決めたんです!!」
「そ、そっか。」
そうして買い物も終え、ファミレスで食事することになった。
「美味しいですねー!!駿先輩!」
「お、おう、ってか声デカいって!」
「はーい、じゃあ小声で話しますね?」
「そうしてくれ。」
「小声で話すついでに、駿先輩に聞いて欲しいことがあるんです。」
「ん?なに?」
「私……私ね?駿先輩が好きです!」
「……え?」
「私と付き合って欲しいです!」
「……日菜子……。」
「駿先輩がひかり先輩の事好きだって知ってます!」
「え?じ、じゃあなんで」
「それでも諦めきれないから!私だって駿先輩の事ホントに好きだから!」
「……。」
「今すぐ返事が欲しいですけど、駿先輩のタイミングで構いません!」
「日菜子……。」
「なので、ちゃんと考えて返事を下さい!」
「……わかった。」
ひかりから告白された翌日に日菜子からも告白された。
どうすりゃいいんだ?
悩んでいた俺には、すぐに返事が出来ない。
ちゃんと考えよう。
どんな結果になっても。