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45話 ドラッセンの戦い②

 アキトは自らの師駒たちを率い、ドラッセンへと出立した。


 エルハーゲンから北東に街道を進み、今は、ドラッセンの最寄りの街ティベルで野営している。


 一方、マシアスら北部諸侯の連合軍は、敵を三方から囲めるようティベルとは別の三つの街で駐留することになっていた。


 あとは、アキトたちが明日ドラッセンで敵を惹きつけるだけ。そうして敵が見せた背後を、連合軍が攻撃する。


 アキトはティベルの兵舎の外に師駒たちを集め、作戦を説明していた。


「作戦内容は至って単純だ。ドラッセン付近の平野で敵を惹きつける。四方の森から、大量のアンデッドがやってくるはずだ。その際、できる限りアンデッドを操る吸血鬼を倒す。当然、自分たちの身を守ることが最優先だが」


 そう言ってアキトは、近くのテーブルの上に置かれていた地図と駒に目を向ける。そこには円陣のように並べられた駒が。


「そのために、陣形も防御的。第十七軍団の者たちが円陣をつくり、四方と上空へ盾の壁を作る。その陣形の中から余裕があれば攻撃を行う」


 アキトはさらに作戦内容を告げる。


「天気は恐らく晴れ。街の者によれば、この時期には雨は降らない。それを利用する……目的の場所には早朝に着くようにして、日中に戦闘を行う。吸血鬼は光が苦手だからだ。彼らが戦場に出てくるとなれば、必然的に肌を隠すような装備になっているはずだ」

「今まで見た吸血鬼のように、フード付きのローブを着ている可能性が高いですね」


 リーンの言葉にアキトは頷く。


「ああ。だから、吸血鬼は目立つはず。シスイとアカネは積極的に吸血鬼の狙撃を頼みたい」

「承知いたした!」

「お任せください!」


 元気よく応じるシスイとアカネ。


「ヴォルフは円陣に潜り込もうとする者を、その走力を以て迅速に排除してもらいたい。フィンデリアとシロは、傷ついた者の治癒を頼む」


 任せておけと言わんばかりに、フィンデリアとシロは胸を叩いた。ヴォルフも深く頷く。


「リーンは俺の近くにいてくれ。適時、偵察や伝令を頼みたい。予想外の事態が起こる可能性もあるからな」

「かしこまりました! ……ですが、アキト様」


 リーンは不安そうな口調で言った。しかし、言いづらいのか黙ってしまう。


「うん? どうした、リーン?」

「アキト殿は我らの主人。故に、こちらの街で待機してもらいたい……某もリーン殿と同じ気持ち。前線は危険でござる」


 シスイの言葉に、リーンは頷くような仕草を見せる。能天気なフィンデリアは別として、他の師駒たちも不安そうだ。


 アキトも危険は承知している。それに、指揮官は戦場の後方から戦況を把握し逐次指示を出すべきという認識もあった。


「なるほど……確かに指揮官は前線には出ないほうがいい。だが、俺は皆と一緒にいるほうが安全だと思っている」


 師駒たちの強さを認めているからこそ、アキトも一緒に前線に出れる。逆に、師駒がいなければ後方でも危険だ。


 皆が守ってくれるだろ──アキトはそう師駒たちに言いたかった。


 リーンを始め、師駒たちはアキトの言葉にハッとする。


 シスイは小さく笑うと、後ろで控える第十七軍団の者たちに振り返って言う。


「我々がアキト殿に指一本触れさせなければいい……皆、我らには容易いことだな?」


 その言葉に、皆おうと声を返した。


 シスイはアキトに顔を向けて言う。


「我らが必ずお守りいたします」


 リーンや他の師駒たちも、まっすぐとアキトに視線を送る。


「ありがとう、皆。俺も、皆を失わないよう、死力を尽くす」


 アキトはそう答えると、ドラッセンの方向へ顔を向けた。


「明日は激戦になるだろう……今回の戦いは、皆の働きにかかっている。必ず、アルシュタートと北部を守ろう」

「おう!!」


 アキトの声に、師駒たちは勢いよく歓声を返すのだった。

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