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39話 軍師、的を絞る

 エルハーゲンの兵舎。

 その会議室で、アキトとマシアスは卓を囲み話し合っていた。


「これが、北部の主だった街か」


 アキトは椅子に座りながら、卓上の地図に記された印を見て呟いた。


 そこは、マシアスが言う大きな街だった。どこも人口千人を数える街。


 アキトはまず、北部の大きな街を把握したかった。


 マシアスはさらに印をつけて言う。


「ああ。だが、半分以上はすでに敵の手に落ちている」

「みたいだな……マシアス殿。この騒乱の最初のほうに落ちた街は分かるか?」

「ああ、分かる。ノルデンにおいては、ゴレラン、エールラント、そしてウェスベルだ」

「そうか。では、もう一つ聞きたい。先程バルダー殿と話していたとき、墓地の異変を報告したと言っていたな? その墓地は、この三つの街にあったのか?」

「そう、だな。だから、この街にはできるだけ夜警を増やしたが」

「止められなかった、か」


 アキトは地図に記されたその三つの街を見て言う。


「マシアス。その三つの街は、ずいぶん昔からある街じゃないか?」

「うん? ああ、もう二百年以上の歴史はある。それがどうした?」

「それだけ多くの人が暮らしてきた。墓地も大きい。つまり」


 マシアスははっとした顔で答える。


「……亡骸が、多い」

「そうだ。奴らは、遺体の多い街を狙ったんだ。アンデッドを手駒にしなければいけない以上、大きな墓地を狙う必要」

「なるほど……もっとしっかり警備をする必要があったな」

「いや、バルダー殿があんな感じでは動かせる手勢も限られていただろう……それよりも、今はこれ以上被害を出さないようにしなければいけない」


 こくりと頷くマシアス。


「だが、どうする? その三つの街に敵の司令部があるとでも?」

「いや、これだけ効率的な計画を立案するやつだ。まだ、目標のために忙しく動いていると見ていい」

「目的? ノルデンを含む大陸西岸を制圧するんじゃないのか?」

「それだけではあまりに功も少ない。大陸西岸はさして裕福な地じゃないからな」


 アキトはそう言って、地図の東側。帝都とその周辺領に目を向ける。


「目的は帝国中央部だろう。そのためには、いくら戦力があっても足りない」

「では、まだアンデッドがほしいと」

「そういうことだ。最終的には、この大陸西岸の人間を、全てアンデッドにするつもりだろう」


 マシアスは窓からノルデンの街を見て言う。


「次はこのノルデンや他の諸侯のいる街が狙われるかもしれないな」

「ああ。しかし、そういった街は今、警備が厳重だ。そういう街は、力押しで攻めるしかない。おそらくは、攻めてくるのは最後」

「となると、それ以外の人の多い街……できるだけ古い街が次に狙われると」

「そうだ。しかも城壁がない潜入しやすい街」


 アキトが呟く中、マシアスの手は地図の上で動いていた。筆で、いくつか印をつけていく。


「この、エルハーゲン周辺の五つの街は、条件に当てはまる街だ。一番、人口が多くて古いのは……このソルヘイムだな。できたのは三百年前。城壁もない上に墓地も大きい」

「狙わない手はないな。よし。俺が手勢と一緒にこの街を見てくる。墓地に張り込んで、捕まえてくる」

「俺も行こう」

「いや。マシアス殿は他の四つの街に配下を送ってもらいたい。どの街に現れるか分からないし、アンデッドを操っている者は複数の可能性がある。そして、他の諸侯領にも、同じような街を警戒するよう伝えてくれ。罠を仕掛け、敵の主を捕まえるんだ」

「分かった。その通りにしよう」

「では、早速行動開始だ」


 アキトはそう言って席を立つ。


 それをマシアスは微笑ましそうに見る。


「うん? 何か?」

「いや……アルシュタート領は、将来栄えていくのだろうなと。少し羨ましくなってな」

「突然、どうした? まあ、スーレ……大公閣下は、領民から慕われているお方だ。俺も、そう確信している」

「そう、か……ともかく、ソルヘイムは頼んだ」

「ああ」


 アキトはその後、師駒たちと共にソルヘイムへと向かうのだった。

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