最終回ってことなのさ!!
最終回です
俺はいつもの通学路を歩いていた。
結局、俺はなにも思いつかないまま眠ってしまい、さらにはあの世界での寝不足も原因で俺は今、絶賛遅刻中だ。
「はぁぁ。」
あくびとため息の混合した吐息を吐く。
頑張って、頑張って何時間も思考回路を全開にして考えた結果になにも思いつかずじまい、
遅刻までしているのに何一つ思いつかなかった。
俺は何がしたいんだか、
俺のことが好きな新田に対して、俺は何をしてやればいいのか。
「はぁぁぁ。」
今回は純粋なため息だ。頭の中で答えのない暗中模索を繰り返し、そのたびになにも思いつかず、ため息をついている。
俺はもういくつの幸せを逃してしまったのだろうか?
他人から見れば、俺のこの悩みは幸せなんだろうな。
そのせいで幸せが逃げていってるってのはなかなか滑稽……。
なんて考えてる暇なんかないよな。
俺はいつものようにだるそうなゆっくりとした足取りで学校に向かう。
結局、学校にいる間はなにひとつ打開策は生まれなかった。
遅刻の理由を聞かれ、数学の小テストがあり、授業が長く、いつ当てられるのか分からない恐怖を感じて、新田のことを考えている暇はなかった。
新田は今日も学校に来ていたけど、俺は話しかけようともしなかった。
なんだか、今思うとあの世界で起こったことが全て夢だったようにも感じる。
全てが夢で、あんなことはなかった。新田が俺のことが好きだとか、そんなことも全部夢だったんだ。
俺はそう思う。そう思って、俺はこのことから逃げてやる。
なかった、で終わりにしてしまいたい。全部夢で終わらせたいんだ。
下校、昨日(現実世界での)新田がバカ女子どもに絡まれていた橋の上で、俺は川の水面に目をやっていた。
考えていたんだ、新田のことを。
なんでだろう、新田、新田、新田、まるで俺の方が新田のことが好きみてぇじゃねぇか。
……それも、否定できない。
好きなのか、好きじゃないのかが……分からないから、答えを見出すことができない。
「………。」
俺は黙って川から目を離し、また、いつもの道を歩き始めた。
「…………。」
いつもの、いつも通りの、ついこの前とは違う、
一切の刺激がない平凡な生活。俺は戻ってきたのに、なんだかちょっとだけむなしい。
「あいつは……どうなんだろうか。」
新田は、今のこの生活に満足していなかったから、あんな世界に行きたかったんだろうか、
俺のことが好きなら、この世界でもよかったのに、ただ、二人でいたかっただけ、とか好きになってほしかった、そんな理由で、それだけでこの世界から離れたいと思うだろうか。
どうせならココと違う世界で幸せになりたい。
そう思っていたんじゃないかな、と推測してみる。
真実なんか、俺には分からない。
それに、あの世界に行きさえしなければ、普通に告白されていたかもしれないし、
逆に俺があいつのことを好きになったかもしれない。
新田にとってはそこが誤算だった。
俺が新田をどう思っているのか、新田は知らないのに、
俺は新田が俺のことをどう思っているのかを知ってしまった。
だから、俺は自分の感情が分からなくなってしまった。
そして、ファーストキスを奪ってしまった。
俺は…………………………。
歩き出すと、俺はデジャブを感じた。
橋を通り過ぎて、ちょっと先の道で、俺は昨日と似たような光景を見た。
「また、絡まれてやがる。」
言う必要性はあるのかどうか分からないが、言っておこう。
新田がこの前のバカ女どもに絡まれていた。
「…………。」
俺は、何をすればいいんだ?
聞こえてくる、風に乗って、空気を振動させて四人のやり取りが聞こえてくる。
「お前、さっさと取ってこいよ!」
「……いや……。」
「そこのコンビニで取ってこいっつってんだろ!?」
「……だめ……。」
「早くしろよ!アタシらだって時間ねぇンだよ。」
「……万引きは……ダメ……やらない。」
新田が、一週間一緒にいた時にも見せなかったような顔で言った。
「なるほどね……万引きをやらせようってか。」
「っっ、いい子っぷり見せつけてんじゃねぇよ!!」
叫ばれてビクッとする新田、でも、
「…ダメ、できない。」
新田は目をうるませても決意を曲げなかった。
「あーあーあ、あれか、お前、自分が苦しんでいれば王子様でもくると思ってんの?」
「あっ、昨日のあいつ?はは、ウケる。好きな真貴菜ちゃんの為に川に飛び込むって感じのあいつっしょ?」
そんなかんじでバカどもが俺をだしにして笑ってやがる。新田は顔を真っ赤にして、
「ヱ弐駆……さんは、私のこと好きじゃない……でも、………
私は、好き」
俺は思わず顔を隠してしまう。
午後四時、何分かに、下校中の女子生徒が、俺のことが好きです発言をした。
俺の名前すら知らないようなバカ女子の前で、堂々と、誇らしげに言った。
それを聞いてバカどもは笑う。
そのせいで新田は顔をトマトのように真っ赤にしてしまう。
デスヨネー、そうなりますよね。
「はぁぁ、なんで、俺のことをそこまで好きになってんだよ。」
俺は、新田のことをどう思っているのか分からない。
でも、あいつが俺のことを好きでいることはいっさい揺らぐことのない真実なのだ。
俺が、どうにかできるレベルじゃない。
あいつの気持ちは、俺が嫌いだと言っても揺らぐことは無いだろう。
あんなに堂々と他人に自分の好きな人が言えるのはそれを表しているみたいだ。
ったく、俺の名前出して笑われてんじゃねぇよ。
恥ずかしいだろうが!!
俺は四人の方にむかって歩き出した。
俺は何をすべきか、新田に何をしなくちゃいけないか、
好きになってやる、なんて上から目線のことじゃなく、
好きになる、みたいに未来形でもない。
ただ、知りたい。
新田 真貴菜は一体どんなバカ女か知っておきたい。
……でないと、いくら恥ずかしがっても命が足りなくなってしまいそうだ。
そういうことにしておこう。俺は認めない。認めていない。
「おい!」
俺の声に、バカ三人が振り向く。
新田は顔をうつむかせていたけど、俺の声に反応して顔を上げた。
バカは俺の顔を見た途端に爆笑しやがった。
そんなことはどうでもいい。
俺は新田の手を掴んだ。
「ひぇ!!」
「行くぞ!!真貴菜!!」
俺はそういって新田の手を掴んだまま走り出す。
手をひっぱられて、引きずりまわされるようにして真貴菜がついてくる。
もう、あのバカどもの笑い声が聞こえなくなるくらい離れて、俺はいったん止まった。
そして、真貴菜を見る。
どこまでも、どこまでもかわいい。
本当に子猫かなんかの類に入れられるくらいかわいい。
ただ、前にも言ったと思うが「かわいい=好き」ではないぞ。
「あ、あのぅ……。」
真っ赤な顔に上目使いの目で俺を見つめる。
「……。」
なんだか、心臓が高鳴ってきた。
「……て、てぇ……。」
て?て?手??
俺は手を見る。何の変哲の無い左手……。
真貴菜の左手を掴む、と言うより手をつなぐと言った方が的確な右手……。
あれ?……冷静に判断すると……
俺は俺のことが好きな女の子の手を握っているという状態だ。
「べ、べつにいいだろ!!」
……俺は、多分、たまに、たまにだと思うが、自分の意に反したような失言をしてしまうことがあるようだ。
「…うん……。」
真貴菜は、すごくうれしそうに目をうっとりとさせてうなずいた。
それを見た俺はどんな表情をしていただろうか?
自分の顔なんか見れるわけない、でも、なんだか、分かるような気がする。
真貴菜がすごくうれしそうに目をうっとりとさせてうなずいたから、
俺は、心のどこかで、多分片隅の片隅の片隅ぐらいで、
言うのも恥ずかしいような気持ちを抱えているのかもしれない、
多分、それが表情にでていたんだと思う。
よく分からない感じで終わってすいませんでした。
そして、最終回まで見てくださった方々に感謝です。
何となく、こんな感じで書きたいな、とおもって書いたところ、終始、ふわっ、としたソフトな感じの作品になりました。
感想等がありましたらぜひいただきたいと思っております。
次回作も見てくれるような両親を持っている方は、
次回作に期待しておいてください。
本当にありがとうございました。




