第四話 結局こんな感じです。
このRPGはかなりの王道だった。
勇者は目覚めた後すぐに最寄りの王国の王宮に行き、そこで魔王の退治を依頼され、
たった一人の仲間である王宮魔法使いを連れて旅に出る、
それがこのゲームの導入部分だった。
つい最近に買ったクソゲー、俺は今そのクソゲーの主人公である勇者として導入部分を進めている。
「ったく、よりにもよってこのクソゲーとはなぁ。」
俺、天童 ヱ弐駆はこのゲームをクリアした後すぐに売った。
300円という超安価で取引された。なぜならこのゲームはかなりの不人気で、さらにはぼったくりだと世間的に非難されていたからだ。
……なんで俺はそんなゲームを買ったんだ…。
でも、一番の謎は、なんで俺がここにいるのかだ。
過去の愚行を悔やんでいたって仕方がない。
でも、こういう世界に来てしまったときはその世界でのやるべきことをクリアしてしまえば、
元の世界に帰ることができると言うのが「お約束」なのだ。
なら、俺は今できることをやればいいんだ、気に病むことなんかないさ。
そんなことを考えながら歩くこと約20分、俺はスタート地点から最寄りのとある王国に到着した。
ゲーム上なら20秒もかからなかったのに……。
とりあえずはここから何もかもが始まるんだな。
もし、今すぐに元の世界に戻れるって言われても、俺はこの先に進みたい。
結構楽しそうだし、何よりも「非現実」っていうのはこの上ない刺激だし、最高に楽しもう。
とある王国の城下町へ、一歩先に進んだ。
城下町は賑わっていた。
ゲーム上とは違って結構たくさんの人がいる。
西洋風の建物がたくさん立ち並ぶ街の中でひときわ目立つ宮殿、この国の王が住む王宮だ。
「ところで、あそこにはどうやったら入れるんですか?」
と街の人に聞くと、
「ここは城下町です。」
や、
「王様はとても素晴らしいです。」
と、プログラムされたように決められたことしか言ってこない。
「やっぱりゲームなんだな…。」
痛感した。多分、人生で初めて痛感したと思えた瞬間だっただろうな。
王宮の門の前には門番がいた。うん、いなかったらどうしようかと思っていたところだ。
門番に話しかけると
「ここに入るのは自由だ。」
と言ってくれた。無機質な表情が怖い。なんだかゲームの主人公はこんなに冷たい扱いを受けていたのかと思うと、主人公は相当心が強くないとやっていけないんだな、と思った。
俺にはきついよ。
王宮に入ると俺は真っ先に王座の間に行った。普通のRPGはここでいろいろとあさってアイテムを探し出すのだが、このゲームにはその概念がなかった。
なぜかって?これはクソゲーだからだ。
王座の間には王様がいた。
「おぬしは一体誰だ?」
王はそう問うてきた。
「勇者です。」
………多分。
「そうか、お前が魔王を倒すことのできる勇者と申すのだな!」
「はい。」
「では、お前に魔王を倒す命を与えよう。世界を救ってくれ!」
お前は何様だと言いたいが、残念ながらこいつはそれを言い返せる。王様だと。
「では、お前の旅のお供を授けよう。」
そう言って王様は手を二回叩く。
どうしよう。この王様や国の人たちみたいに凍ったような無機質な態度の人だったら……
考えただけで気が重くなる。
俺の後ろの方から足音がする。今この部屋に入ってきたのだろう。
「…お、お呼び……でしょう…か。」
その声には感情があった。この世界に来てから俺以外の声では初めてだった。
おどおどしていて、不安を形にしたような感情が響いてくる。
……あれ?この声、どこかで聞いたことがある……。
足音は進み、俺の前、そして王座の前につくと、その足音は止まる。
目の前にいるのはローブを着たいかにも魔術師だといえる格好の少女。
「お前は彼とともに魔王を倒すのだ。」
「…は、はい。」
彼女は振り返る。
「ヱ、…勇者様、よろしく……お願い……します。」
新田 真貴菜だった。
「お、お前!!」
「ひうっ。」
俺は顔を見るなり叫んでしまい、新田の目をうるませてしまった。
「なんでここにいるんだよ。……とりあえず、怯えなくていいから、驚いて声を上げてしまっただけだ。」
「……ひぅ…はい……。…分かり……ません。」
やっぱりな、と言っておこう。
「当然さ!!真貴菜がなにか知っているなんてありえないことだぜ!!」
第三者の声がした。
「誰だ!?」
俺は辺りを見回す。
「おうおう、俺の姿が見えてねぇのか?そいつはお前の心がドブネズミの死骸のカスより汚いからだぜ!!」
声の方向を見ると、新田の方だった。
声は新田じゃない……あれ?
俺は新田の肩のあたりを凝視した。
何やら顔をうつむける新田の肩の上に
小さな見た目30前後のゴスパンクの格好をした中途半端おっさんがいた。
「何コレ!!?」
俺はまた叫んだ。言う必要はあるか分からないけれども、新田は「ひうっ…。」
と言っていた。
「何とは物扱いですか。こいつはひどいひどい、ひどいよなぁ。」
「だから、お前はなんだ!!」
新田は(ry
「俺かい?俺は妖精さ!」
お前が妖精だったらゴキブリも妖精に入るぞ。
「俺は妖精…恋する乙女の味方……。気持ちも言えない乙女の味方。」
こんなのに味方されたら恋愛は成就し無さそうだ。
「で、なんでそんなのがここにいるんだ?」
俺がそう聞くとこの「ゴキブリ+妖精−精」の変な生物ではなく、
新田が驚いていた。目を見開いてまさに「ビクッ!」と背筋がのびた。
「…おうおうおうおう。ここまで言って気付かねぇとは…要するに真貴…」
新田が妖精の口を塞いでその言葉を断じさせた。
「…な、なんでもない。」
新田が焦っているのを初めて見た。これはこれで新鮮だ。
「けっ、まぁいい。とりあえず俺もこの旅に同行してやる。」
「しなくていい。」
「おい!!!」
「ひぅぅぅぅ。」
ここから俺たちの旅が始まった。
その日の夜
俺たちは城下町を離れ、一つの小さな村に辿り着いた。
日も暮れ、俺たちは宿をとることにした。
しかし……
「相部屋ってどういうことだ…。」
この部屋はベッドが二つあり、シャワールームが一つある安い部屋。
俺は今日ここで女子と一つ屋根の下一夜を過ごすのだ。
RPGじゃあ何一つ気にならないところだが、実際は違うんだっつの!!!
女子と一つ屋根の下でなにやら卑猥な事件が起こったらどうするんだよ。
「絶対変な気を起すなよ…。」
俺は肝に銘じた。肝に銘じた。肝に銘じた。肝に銘じた。
ちなみに今、新田はシャワーを浴びている。俺は浴び終えて髪をタオルで拭いて乾かしているところだ。ドライヤーなんてないからな。
こつ、と足音がした。
新田がシャワーを終え部屋に戻ってきた。
「……。」
新田はベッドに黙って座った。
俺は新田を見た。目が合って新田は目をそらす。
「はぁ。悪いな、俺と同じ部屋だなんてさ。」
「…へ?ヱ、ヱ弐駆さんは……あ、あやまらなくて…いいです。」
「交渉はしたが無理だったのは俺だ。謝るのは当然だ。」
「…気、気にしなくて……いいです。ヱ弐駆さんは…。」
「あ、それと、あんまり俺に気を使わなくていいよ。」
へっ?と新田は驚いた。
「敬語とかしなくていいし、俺にそんなの使う必要ないから。」
「は、…うん。わか………った。」
俺はちょっと冷たく言ったような気がしたんだが、新田はちょっと嬉しそうだった。
1時間くらいたつと髪が乾いた。
「そろそろ寝るか。」
手前のベッドに新田が座っているので俺は奥のベッドに行った。
布団に入り、あまり見たことのない蝋燭を消そうとすると、
「あ、あのぅ……。」
新田が声をかけてきた。
「ん?……あっ、真っ暗は嫌?」
新田は首を横に振って
「あの………そのぅ……、い、一緒に……
寝てもいいですか?」
問題発言だーーーーーー!!!!!!!!!!!!
「へ?……うん、一緒の部屋で一緒の時間に寝るよ。」
これであってほしい、これであるべきだと思いながら冷静を装って言う。
「……そ、そうじゃあ……な…なくて、………同じお布団で…一緒に。」
「いや、ちょっと待て、そんなの、認めるわけには…。」
「一人………怖くて……眠れない…。」
うるんだ瞳で、悲しそうに言った。
かわいい、まるで小動物のようだ。
「……でも……いや、それは……。」
目で訴える、顔を真っ赤にして、……大丈夫か?いや、無理、女の子と一緒なんて………
でも、かわいそう。うわっ、もうわからん!!!!
「か、勝手にしろっ……。」
俺は寝返って新田とは逆の方を見た。
俺は言ってしまった。勝手にしろという肯定を。
新田はお構いなしにという感じで潜入してきた。
「…すぅ、すぅ。」
もう寝やがった。
俺は新田の方を向いた。
ちなみにこの世界ではパジャマはスウェットだ。
そんなことはさておき、
新田は子犬みたい、いや、子猫か?ウサギかも……
とりあえず可愛い寝顔で寝ていた。
もしかして、毎日こんな感じなのか?
そう思うと幸運のような気もするが、手を出すことはできない……神に誓って!!
はぁ。こいつは生き地獄か?
「すぅ、すぅ。」
「……意外と、胸あるんだな。」
俺の視線は新田の胸元にあった。
ちなみに、俺がこの日一睡もできなかったのは言うまでもないだろう。
なんだか文章がお粗末になってると思います。




