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えんぴつはときに悪徳領主をもぶっ倒すという話

作者: 緋島礼桜






 「―――えんぴつはいりませんか? いりませんか?」


 とある街の片隅。えんぴつを売る少女がいた。

 

「んなモン売れるかよ!?」

「こんなんで飯が食えんのか?」


 しかし誰も買おうとはしない。

 何せこの街は悪徳領主により不景気の真っ只中にある。

 人々は心身ともに飢える一方で、街は荒れに荒れていた。



「また今日も売れなかった…父ちゃんが作ったえんぴつ……」


 街角に座り込み、少女はお腹を押さえる。

 ぐるぐると、お腹の虫が轟く。


「お腹空いた……こうなったらもう、えんぴつ食べるしか―――」

「止めておけ。味が無くて不味いだろ」


 突如聞こえてきた声。

 少女が見上げた先には一人の青年がいた。


「オジちゃん」

「お兄さんだ」

「……お兄ちゃんは旅の人?」

「そうだ。商いをしつつ各地を巡っているが…この街は酷いな」


 彼が語る間にも少女のお腹はぐぅぐぅ鳴り続けており、青年は顔を顰める。


「……この籠のえんぴつ全部買うから、これで何か食え」


 青年は奪うように少女から籠を取り上げ、代わりに金貨を渡した。

 それは籠いっぱいのえんぴつの何倍分にも当たる額だ。


「こんな、いっぱい……」

「釣りは要らんぞ」

「う、ぅぐ…あ、ありがど、ございます…」


 少女は涙と鼻水を流し何度も礼を言う。

 ついでに青年はハンカチもあげた。


「けど…お兄ちゃんえんぴつどうするの?」

「都会には『ペンは剣よりも強し』という諺があるが…」

「どういう意味?」

「……まあ見ていろ」







「ひっ、ひえ…! お助けを!」


 深夜のとある屋敷。

 逃げ惑うのは悪徳領主。

 と、そんな彼の眼前を素早く横切る刃―――ではなく、それはえんぴつだった。

 壁にめり込むそれに怯える間もなく。

 次々とえんぴつは壁に付き刺さっていく。


「如何でしょう領主殿。このえんぴつの素晴らしさを理解して頂けましたか?」

「き、貴様…こんな事しておいて商談とかアホか!?」

「……阿呆はどっちだ。我が身可愛さに民を苦しめといて」


 青年は領主にえんぴつを突き付ける。

 

「全財産でこのえんぴつを買え」

「そ、そんな無茶苦茶な…」

「俺の商談は無茶苦茶が売りなんだ」


 そう言って青年は不敵に笑った。






 翌日。

 街は悪徳領主が丸腰で夜逃げした話題で持ちきりだった。

 同時に彼の悪事が国王の耳に届いたらしく、新たな統治者が派遣されるとの事。


「お兄ちゃんがえんぴつでやっつけてくれたんだ!」


 ちなみに。

 領主がえんぴつに負かされたという噂も広まり、少女のえんぴつは飛ぶように売れるようになったとか。




※登場人物たちは特殊な訓練を受けています。良い子は決してマネせず、えんぴつは正しくお使いください。

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