↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
89/93

第85話 突然の電話

 家に帰ってきた孝也は夕飯などを済ませて自室で勉強をしていた。理由は今日やろうと思っていた分の宿題は晴翔達と遊んでたことで全く進んでいなかったからだ。

 しばらく集中して黙々と宿題を終わらせていく。部屋にはひたすらシャーペンの芯がノートに押し当てられ、削れていく音が響いている。

 その音が孝也にとってどんな音楽を聴くよりも集中できる最高の音だった。

 2時間ほど椅子から立ち上がることはなく、そして最後の教科である英語の終わらせてノートを閉じた。

 「やっと終わったな」

 そう呟いてシャーペンを机に放る。同じ姿勢でい続けたため凝ってしまった体をほぐすために両手を組んで上に伸びる。

 「ん~、はあ。疲れた」

 大きく息を吐きつつ、時計を見ると9時を少し過ぎていた。

 これといってすることがなくなってしまった孝也は買っていただけで全く手の付けていない推理小説を開いて読み始めた。

 しばらく読んでみて気づいたことがあった。それは先の展開が読めてしまってどうにも楽しめないということだ。まあ、それでもせっかく買ったんだ、最後まで読もうと思っているとスマホが小刻みに震えて軽快な音が響く。

 画面を見るとそこには『星乃 雫』と表示されていた。孝也は一瞬ためらったが応答を押した。

 「……もしもし、星乃か。どうしたんだ?」

 「もしもし、三河さんですか? 夜分遅くにすみません。夏休みの課題で分からないところがあったので聞きたくて……」

 電話越しに聞こえてくる星乃の声。耳元で彼女に囁かれているような感覚に陥りそうになった孝也はスマホを耳から外してスピーカーに変更した。

 「それなら答えとかみればいいだろ。解説とか載ってるんだし。何も答え合わせをするとき以外に見ちゃいけないわけじゃないんだから」

 長期休みの課題の時に孝也がよくやっている方法を彼女に提案してみる。答えを見てからどうやって計算をしているのかを紐解くやり方をしている。

 「すでに解答例を見たんですがいまいち分からないんです……。一番知りたい肝心なところが書かれてなくて……」

 「ああ、確かにそういうのあるよな、そういうの。解答例としてほんとどうかと思う」

 星乃の言い分に孝也は深く頷きながらさらに愚痴を零していた。電話の向こう側でふふっと笑い声が聞こえた気がしたが小さかったので物音なのか笑い声なのか判別できなかった。

 「それで、なんの教科でどおこの問題が分からないんだ?」

 「数学で微分の問題で31ページの辺りなんですけど……」

 「わかった。今、そのページ開くから少しだけ待ってくれ」

 「はい、ありがとうございます!」

 小説の開いていたところに付箋を張り付けて本を閉じた。代わりに先ほどまで開いていた数学の課題を開いて微分の問題が載っているページと同時に解答も開いた。

 「開いたぞ」

 「そのページの問4です」

 星乃に言われ問4の問題文をざっと読む。そして解答例を見るが確かに肝心の最後の計算が詳しく載っていない。

 「少し考えるから待っててくれ」

 「わかりました」

 自分の問題集に書き込んでいき問題を解く。解答を見ながらやったことで意外にも早く謎を解くことができた。

 「悪い。待たせたな」

 「そんなことないです。それどころか10分もかかってないですよ」

 「答えを見ながらやったからだ。それより解説していくぞ」

 「はい!」

 そして孝也の解説が始まった。といってもたかが一問だし星乃も馬鹿じゃないのですぐに理解してくれたので大した時間がかからなかった。

 「できました! ありがとうございます……!」

 「どういたしまして。それじゃあ……」

 「あのもう少しだけお話しませんか? あ、もちろん何かやることがあるなら切りますので」

 目的を終えた孝也は電話を切ろうとすると星乃がまさかの提案をしてきた。やることなんて何もない。それに少し寂しそうに聞こえてしまったのだ。しばらくは彼女に付き合うことにしよう。電話代はかからないし。

 「いや別にやることなんて何もないし。構わないぞ」

 「すみません。我儘を聞いてくれてありがとうございます」

 「気にすんな。それで何か話題はあるのか?」

 スマホを机に置いたまま孝也は椅子の背もたれに背中を預ける。

 「話題というか、その三河さんに聞きたいことがありまして……」

 あらたまった感じで彼女は話し始める。何か思わせぶりな雰囲気に孝也は電話であるにもかかわらず首をかしげていた。

 「聞きたいこと? また夏休みの宿題じゃないだろうな?」

 「ち、違います! ……実は先ほど花香さんから動画が送られてきたんです」

 「動画? 遙から?」

 孝也は疑問に思った。なぜ遙から送られてきた動画のことを自分に聞くのだろうと。孝也は全く見当がついていなかった。星乃から動画の内容を聞くまでは。

 「はい、三河さんと由紀さんが楽しそうに歌っている動画です」

 それを聞いた瞬間にすべてを理解し、思わず舌打ちをしてしまった。晴翔が遙に動画を共有しその動画を星乃に送ったってことだろう。今度二人にはきつく言っておこう。

 「……っんの野郎。遙に送りやがったな」

 どうやって動画が出回ったのかを予想しながら呟く。

 小声で言ったので星乃には孝也が何を言っていたのでか聞き取れなかった。しかし機嫌が悪くなったことだけは察知した。

 「三河さん?」

 「なんでもない。気にするな。できることならその動画も削除してくれ」

 大きくため息を吐きながら孝也は星乃に頼んでみる。

 「…………少し残念ですが、三河さんが嫌がるなら消しますね」

 少しどころでは無さそうな間の空き方だったんだが……。だが理解してくれて助かった。星乃以外だと消すかわりに~とか言ってきそうだったからな。

 「……そうだ。なら動画を消すかわりに私と一緒にどこかお出かけしてください」

 「なぜそうなる?」

 星乃がそんなことを言ってくるとは思わず声のトーンが一段階をほど低くなった。

 「私だけこの場に参加できなかったことが悔しいので」

 しかし星乃の声も不貞腐れているように聞こえる。何となく頬を膨らませているのが想像できる。

 夜だからなのか分からないが普段よりもかなり素で話してくれている気がする。ようやく彼女の本音が垣間見え孝也は少しだけ口角が上がっていた。

 「いや今日だって晴翔には呼ばれたが、松原はたまたま会ったから一緒に行っただけだし、遙だって親の実家に帰省してていなかったんだぞ」

 「それでも、です!」

 「なら俺じゃなくて松原を誘えばいいだろ」

 孝也はその動画に映っていたもう一人と行くように提案する。男の孝也より同性である松原の方が気兼ねなく遊べるだろう。いつの間にか名前で呼び合うほど仲が良くなってるんだ。

 「実は由紀さんには声をかけてみたんですが明日はお友達との約束があるようで断られてしまいました……。遙さんもいないですしそういうわけで三河さん、私とお出かけしてください」

 どうやら孝也が言う前に先に行動していたらしい。そうなれば仕方がない。

 「はあ、わかったよ」

 根負けした孝也は息を吐くのと同時頷いた。

 「では明日の10時に三河さんのお家まで行きますね」

 スマホ越しでも伝わるほど声が弾んでいるような気がした。

 まあ星乃が楽しみならいいか。

 「そうだな、そうしてくれると助かる」

 「それではまた明日、おやすみなさい」

 「ああ。また明日な」

 今日一日のことと今の電話ですっかり疲れ切ってしまった孝也は電話を切るとベッドに飛び込んで寝転がる。そして途中になっていた小説の続きを読んでかれこれ1時間が経っていた。

 ドアが突然ノックされ、振り向くと母が寝間着姿で立っていた。

 「お母さんもう寝るからね」

 「ああ、おやすみ」

 部屋のドアが閉じられ数分後。

 「あ、そういえば母さん居るんだった……」

 孝也は親が帰ってきていることを思い出し頭を抱えながら絶望するのであった。

第85話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

久しぶりの投稿となりました〜。最近何かと忙しくようやく時間が取れました

GWも投稿したいとは思っているんですがどうなるか……

まあできるだけ早く更新しますので待っててください!!!

それではまた次回、お会いしましょう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。