第52話 復活と疑問
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翌朝。目が覚めた孝也はベッドから起き上がる。昨日の倦怠感が嘘のように消え去っていた。むしろいつも以上に元気な感じがする。
リビングに降りてくると念の為、熱を測ってみた。
「36.3°か。完全に治ったようだな」
体温計を元の場所に片すといつも通りの朝の時間を過ごし、孝也はいつも通りの時間に学校へと登校した。
教室のドアを開けると案の定、誰もいない。1日ぶりなのに妙に懐かしさを感じていた。荷物を下ろして椅子に座り、窓越しから見える初夏の雲ひとつない青空を眺めている。
誰もいない教室は思考を空っぽにして、落ち着くのに最適な空間を作り上げていた。
しかしその穏やかな空間も生徒の登校時間のピークが近づくにつれて少しづつ崩壊し始めるのだ。1番最初に破壊する人はいつも決まっている。
遠くから話し声が聞こえてきたかと思っていると教室の前のドアが勢いよく開かれる。
「あ、たかちゃんだ! おっはよ〜!」
「よう、風邪は大丈夫だったか?」
遙と晴翔が教室に入ってきた。孝也を見つけた2人は声をかけながら自分の席には向かわずにまっすぐ孝也のところへとやってきた。
病み上がりの人間に向かってよくこんなに大声を出せるものだ。
孝也は眉を顰めて嫌な顔をしながら口を開く。
「今のお前らの煩さに具合が悪くなりそうだ」
「ひっど〜い! せっかく心配してあげてたのに」
孝也の素っ気ない態度に遙は机を両手で叩き、さらに声が大きくなった。孝也は急いで耳を塞ぐが、それもでも微かに遙の声が耳の奥に届いていた。
朝で教室に人が孝也達以外居ないことが幸いだった。絶対に周りの迷惑になっていただろうからな。
「そんな上から目線の心配なんかいらないな」
「まあそ言ってやるなって。俺もはるちゃんも本当に心配してたんだぞ? 俺たちが知ってる中で孝也が風邪で学校を休むなんて初めてだったからな」
遙の頭を撫でて、宥めながら晴翔が言う。晴翔に頭を撫でられた遙は既におとなしくなっていた。
確かに2人は孝也が体調を崩して学校を休んでいるところは知らなかった。だからこそ、孝也が風邪を引いたと聞いた時はかなり心配していた。
ただ、2人の態度からそれを感じ取れなかった孝也は信じきれていない。どちらかといえばいつもの冗談だと思っていた。
彼らの言うことについて下を向いて色々と考えている間に遙達は勝手に話していた。
「まあでも、無事に治ったのは何よりだよ〜」
「そうだな。これで勉強会も再開できる」
耳だけを傾けて聞いていると気になることが聞こえてきた。孝也は直ぐに顔を上げて2人の方を向く。
「昨日はやらなかったのか?」
勿論、自分がいなくてもやっていたと思っていた孝也は首を傾げながら2人に聞いた。
「うん、そうだよ。星乃さんが用事があったらしくて先に帰っちゃったんだよ」
「松原さんも孝也がいなくてテンション低かったし、中止にしたんだ」
「そうか、そうだったのか」
晴翔達の話を聞いて中止になった理由に納得していた。が、そこで孝也にはもう一つの疑問が浮かんだ。
それは星乃が用事があったにも関わらず、孝也の看病をしに来てくれたこと。しかしこればかりは2人に聞いたところで答えは知っていそうにない。
そこで孝也は一つ思いつき、席を立つ。
「急に立ち上がってどうした?」
突然立ち上がった孝也を見て、晴翔が少し驚きながら聞いてくる。
「ちょっとトイレだよ」
そう言うと遙が「なーんだ」と言っていたが孝也は気にすることなく教室を出て行った。
孝也は廊下を歩いてある場所へ向かう。トイレではない。隣のクラス、5組に来た。
前のドアから教室を覗き、見渡すと星乃が静かに本を読んでいるのを見つけた。孝也は教室に黙って入ると星乃のところまで歩いていく。星乃や晴翔、遙のように人目を引く何かを持っていない孝也は5組の住人に気づかれることはなかった。
「星乃、少し聞きたいことがあるんだがちょっといいか?」
「あ、三河さん。……はい、大丈夫です」
星乃は本を閉じると席を立ち上がると孝也と一緒に少し離れたところにある空き教室まで移動した。その間、星乃が廊下を歩くだけで人の注目を集めていた。勿論、やや隣を歩いている孝也にも視線は集まっていた。
今更ながらに気づいたのだが、彼女のラインを持っているのだからそれで呼び出せばよかったと後悔をしていた。
「それで、どうしたんですか?」
「ちょっと星乃に聞きたいことがあってな」
そう言って孝也は話を始めた。
第52話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
今回で風邪の回が終わりました。あとはテスト編に入っていくだけです。その後は夏休み編と構想は盛りだくさんです! ただ自分の文章力が追いつかないのでスローペースにしてますが……
お盆の時期には更新頻度を上げられたらいいなーと思ってます。やるかどうかは気分次第!
もしかしたら読み切りの何かを書くかもしれないです!
今回は急に前書き書きました。邪魔だったら感想とかで教えてください。
それではまた次回、お会いしましょう




