第38話 逃亡とファミレス
駅前にあるファミレスへと向かう道中。晴翔に腕をがっしりと組まれ、後ろに女子3人が並んでいて逃げれな状態の孝也。
「そろそろ、離してくれないか?」
「逃げないならいいぞ〜」
「はあ……わかったから、ほんとに離してくれ」
諦めた様子の孝也を確認して晴翔は腕を開放してくれた。どっちにしろ後ろに女子3人がいるんだし、隣に運動神経の抜群に良い晴翔がいるんだ。逃げるなんて無理に決まってる。
すっかり諦めた孝也はどこか上の空になっていた。
「たかちゃん、どこ行くの〜? もう着いてるよ〜」
遙が声で我に帰る孝也。
思考もまともにできないゾンビのように只ひたすら歩いていた孝也はいつの間にか目的地であるファミレスを通り過ぎていた。振り返ると他の4人は入口で待っている。
もしかしたら、今なら逃げれるかもしれない。そう思った孝也は視線を元に戻すと走り始めた。
「あ! 孝也のやつ逃げやがった」
「ハルくん頑張って〜!」
晴翔とがいち早く気がつき、追いかけてきた。後ろから遙の声援も聞こえてくる。
孝也はそんなに運動が得意ではない。そして足もさほど速くない。対して晴翔は陸上部よりも足が速いことで有名だった。
「はい、捕まえた!!」
あっという間に追いついた晴翔は孝也の肩を掴む。孝也はぜぇはぁと死にそうに息を切らしているが晴翔は爽やかな笑顔で孝也をガッチリと掴んでいた。
「おい、こ、んな、状況で……逃げるとか、思ってるのか……?」
「ああ、お前ならやりかねない。ほら、はるちゃん達のところに戻るぞ」
そう言うと孝也の呼吸が整っていない状態にもかかわらず晴翔は肩を掴むと引きずっていく。
「はあ、はあ、はあぁ……」
引きずられながらも孝也は深呼吸で息を整えるので精一杯だった。
「あ、戻ってきた」
人混みの中、晴翔が孝也を抱えているのを見つけた遙が口を開く。星乃と松原も2人を見つけられた。抱えられた孝也の顔色の悪さに松原が心配を漏らす。
「孝也くん、大丈夫かな? なんか死にそうになってるけど」
「普段運動しない人が走ったんだから死にそうにもなるよね〜」
松原の心配を他所に遙が笑いながら言う。
「確かにそうですね」
遙の言葉に納得した星乃が微笑みながら頷いている。特に心配していない2人を見て松原の心配も何処かへと消えていき、女子3人は楽しそうに話していた。
「ハルくんお疲れ様〜」
「はるちゃん、ありがと。しっかり捕まえてきたよ」
遙が労いの言葉をかけると気力のない孝也を見せる。もはや彼に動く力さえ残っていなかった。連れて来られる道中、孝也が逃げないように掴む場所を色々と変えていた晴翔は少しの間だけ孝也の首を脇に抱えていた。
そのせいか、孝也は一時的に呼吸が浅くなり本当に死にかけた。それに気がついた晴翔がすぐに場所を変えたのだがそれでも孝也がぐったりするのには十分だった。
「じゃあ、たかちゃんも捕まえられたしお店に入ろ〜」
遙の一声で4人はファミレスへと入っていく。晴翔に肩を借りる形で孝也は店に入った。
中に入ると早々に店員に席に案内され、5人はテーブル席に着いた。座席の位置は図書館と同じく孝也と星乃が隣で残り3人が対面に座った。
「よし、じゃあまず何頼むか?」
晴翔が机の端にあるメニュー表を開く。遙も覗き込むように見ている。
「テスト勉強するんですよね?」
星乃が教科書とノートを開き、勉強の準備をしながら晴翔達を首を傾げて見ている。松原も鞄を開いている途中だった。
「お店に来て何も頼まないのって悪いじゃん。だから何か頼むんだよ!」
遙がなぜか力説していた。
「なるほど、確かにそうですね」
星乃は遙の言い分に納得していた。松原も「確かにそっか」と呟いていた。
「じゃあ星乃さんも由紀ちゃんも何頼むか決めよう〜」
5人は話し合った結果、とりあえずドリンクバーだけは頼むことにした。小腹が空いたら各自で頼むという方針で決定した。
それからジュースを各自持ってきてから4人がノート、教科書を開き勉強を始める。
孝也は頬杖をつきながらその様子を見ていた。
第38話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
傘から始まる恋物語、復活します!!! 1週間お待たせしてしまい、申し訳ありません。
待ってくれていた読者の皆様には感謝してます!!
ただ今週は少し忙しいので次回更新は金曜日にしようと思ってます。
それではまた次回、お会いしましょう




