7’現場へ
次の日になり、現場に向かうはずなのに一向に汛が家から出てくる気配がない。何をしているんだ?もしかしたら、準備中なのかもしれない。
まぁ、初任務だから何を持っていったらいいのか分からないのかもしれない。分かる、その気持ち。初任務だし懲役を減らせるチャンスだから入念に準備して臨みたいもだろう。という淡い期待をしながら向かった。
「おい汛、さっさ出て来い。準備中かもしれないけど、そろそろ現場に行くぞ!」
「‥‥‥」
中からの返事はなかった。インターホンを押しても帰ってきた答えが、
「‥‥‥」
またこの答えが帰ってきた。まさかとは思うが、私の中で嫌な予感がした。こんな時な為に、ポケットから合鍵を取り出した。もちろん汛の家の物だ。
━━ガチャ━━
鍵を鍵穴にさし回し、扉を開ける。
中に入ると、カーテンが閉まっていて辺りは暗かった。奥に進み寝室へとたどり着いて、目に入ってきた光景は私の嫌な予感が的中してしまっていた。
「いい加減、起きてさっさと準備しろ!」
「ふぇ?」
「なんでお前がここにいるんだよ」
怒り任せに怒鳴り起こした。私の期待を返してもらいたい。さっきまでは本当に、本っ当に少しは期待をしていたのに初日の朝に裏切ってくるなんて誰も想像できないだろう。
しかも、起きた第一声が「ふぇ?」と腑抜けていた。完全に今日の事を忘れている事が理解出来る。
「今日は昨日言った人が殺害された現場に行くと伝えたはずだ。それなのに準備の一つもやっていないとはどういう事」
「あぁー、そうだったな。じゃあ準備をしますか」
「一分以内に終わらせろ」
「早すぎるだろ。なんでそんなに急ぐんだよ」
「はいはい。よーい、ドン」
「ちょ、待てよ」
「急げ、急げ。早くしないと爆弾が爆発するかもしれないよ」
慌てて服を着ているから、ボタンを止める穴が一つズレている。一分が経ちほとんど身支度を終わらせた。
「終わったわね。じゃあ、そろそろ行くぞ」
「あ、ちょっと待て」
何か忘れ物をしていたみたいで取りに行った。
机の上に置いていたナイフを取りに行き、しまった。どうやら忘れていたものはナイフだったみたいだ。
そして、玄関を出て殺害のあった現場に向かった。
「ここが一人目が殺された所か」
「そのようね」
「一人目は帰宅中に殺されたのか。この辺りには、カメラは無いか」
「そう、ここら辺はカメラが無かった。だから、犯行の瞬間が捕らえられていなかった」
一人目が殺害された現場は住宅街。辺りを見回してもカメラの一つも見つからない。最近では珍しい。
「昨日の話だと、頸動脈を切られていたって事だったな」
「うん、頸動脈をスパン、と一撃で切られていた。それにしても、おかしいのよね?」
「おかしい?何がだ」
「抵抗したあとが無いのよ。刃物を持った人が近ずいて来たら警戒すると思うのよ」
私が抱いた違和感、それは抵抗したあとが無いというもの。やはりおかしい。刃物で襲って来たら腕で守るか逃げるかという行動をとるはずなのだ。一撃で頸動脈を切られているのは何も抵抗しなかったという証拠だ。
「確かにおかしいな。一撃で頸動脈を切るなんてそうそう出来る事じゃない」
汛も私が話した違和感はおかしいとの同意見だった。
「汛はどう思う?この事件」
「ある程度の事は予想出来る。例えばそうだなぁ、被害者とすれ違う瞬間に切りかかるとか、複数犯で体を押さえつける役と切りつける役に別れるとかがあるんじゃないか」
汛の意見も可能性がある。しかしそうなると、色んな方法が浮かび上がってくる。
「まぁ、そう考えていても何も浮かばない。次の現場に行こう」
「わ、分かった」
その後は二人目が殺害された現場と三人目が殺害された現場へと向かった。
二つ目の現場はビルとビルの間の裏路地。近道をしようとして通ったとの事らしい。人通りは見ても分かるくらい少ない。人目を気にするのは殺人犯には当たり前だと思う。辺りを見回してもカメラは無い。
三つ目の現場は公園の中で殺害された。犯行が行われたのは夜。やはり人目にはつかない時間帯。そして、カメラも無い。この時点でも、計画的連続殺人と確信させる。
どの現場にも言える事は、人目につかない、辺りにカメラが無い。そして何より重要な事は頸動脈を切られて殺害された事。
しかも一撃で。なぜ抵抗しなかったのかますます謎が深くなった。
謎を抱えながら四つ目の現場へ向かった。
「ここが四つ目の現場か」
四つ目の現場は、歩道橋の階段で起こった。
当初は、階段からの転落事故かと思われていたが、首の頸動脈が切られていた事からこれも連続殺人とされた。
「確か、この現場で異端が関わっている疑いが出てきたんだったな。それは何故だ?」
私は反対の歩道にあるビルを指した。
「あのビルの玄関のカメラにこの歩道橋が映っていたそうだ」
「じゃあ、そのカメラに犯行の瞬間が映っていたんだよな。なら映っていたその犯人を捕まえればいいだろ」
「その通りなんだけど問題は殺害された人しか映っていないって事なの」
「殺害された人しか映っていない?どういう事だ」
「殺害された人が階段を降りていたら突如と首が切れ、血しぶきがまったらしい」
言葉の通り階段を降りていたら突如と首が切れて血しぶきがまって死んだ。
「カメラには犯人が映っていなかったんだな」
「ええ、映っていなかったそうよ。映像を見た人は、突如として首が切れて血しぶきが吹き出したようにしか見えなかったって語っていたわ」
首を切れた瞬間はカメラには、誰も映っておらず何故死んだのか分からず至った答えが異端が関わっているという事になった。
それで私達の出番という訳だ。異端が関わっているとしてどのような能力だろうか?異端についてはまだ分かっていない部分もある。誰がどのような能力を持つのかもすら分かっていない。
「おい、これからどうする?何も案が無いのなら俺に付き合え」
「はぁー。これからどうするって言うの」
「確か殺害された人達はみんな同じ会社の社員という事だがその会社に行ってみたい」
殺害された人達は同じ会社だった。会社に行って、その人達のことを聞こうというのか。なかなか頭が回る。
「分かったわ。じゃあ次はポタージュカンパニーに向かいましょう」
ポタージュカンパニーに話を聞きに行く事にした。