2’監察人
「それはな‥‥‥‥」
私は唾を飲み込んだ。その条件を知りたかったから。
「お前が汛の監察人になる事だ」
ん?何かおかしな事を言っているのが聞こえた。
耳が変になったのだろうか?
「あのー、もう一度言って頂けませんか?おかしな事が聞こえた気がしたので」
自分の耳が正常な事を確認すると共にさっきのは、幻聴だと確信させる為に。
「もう一度言うぞ。お前が汛の監察人になる事だ」
「はぁ!?」
この人は何を言っているのだろうか、私を監察人しかも海底監獄の最下層にいるような咎人だと。
「何を言っているんですか~」
まさかこれはドッキリかもしれない。北見さんは私の表情を見てからかっているに違いない。
そんな期待を込めて笑顔で返してみる。
「お前こそ何を言っている。これからお前はこの咎人、真狩汛の監察人になるんだ」
私のそんな期待はすぐさま消え去った。
「どうしてですか!なぜ私のような配属になったばかりの新人が監察人になるですか!」
「ひとまず落ち着け」
北見さんの胸ぐらを掴む勢いで猛抗議しまくった。我を忘れたように抗議する私を北見さんが肩を掴み落ち着かせようとする。
「す~~~はぁ~~。すみませんでした。取り乱しました」
深呼吸して心を落ち着かせた。そして、再び問いかけようとした時、満を持してか、その男が話し始めた。
「おい、北見。これはどういう事だ。俺を監獄から出してくれるのはありがたいが、まさかその条件としてそこの女が監察人になるだと」
「その通りだ。ここにいる初山静莉が汛、お前の監察人になる」
汛は北見さんから監獄から出してもらえる条件として相当なものが来ると思っていたらしい。
「俺はてっきり身体の中にでも爆弾を仕掛けるなりそういったものが来るとと思っていたぜ」
なんと汛も私も同じような条件が課せられると考えていたらしい。咎人と同じような事を考えが浮かんでいて非常に不快だった。
「それによ、北見。そんな女に俺の監察人が務まるとは思はないぜ。だが、ありがたい。ここを出る条件がそんなことなら本当にありがたいぜ、北見」
汛は完全に私の事を見くびっている。汛の言葉にどうしても苛立ちを覚えてしまう。
「北見さん、私はこいつが言っていた身体に爆弾を仕掛けた方がいいと思います」
「いやいや、俺はそいつが監察人になってくれた方がいい。そうした方が自由だしな」
私はまた見くびられた気がして苛立ちからかこんな事を言っていた。
「お前みたいな咎人さっさと死んでしまえばいいんだわ」
「そんなに咎人が嫌いか?」
その質問に対しての答えたは決まっていた。
「えぇ、嫌いよ」
自分でも分かるくらいの冷たい声だった。
パンッ
という音がして2人共そちらに視線を向けた。
そこには北見さんが呆れた顔をしていた。
「初山、改めて言う。これからお前はこの真狩汛の監察人になってもらう」
「しかし‥‥」
「これは命令だ。分かるな?初山」
言い返したかったが今の私にはそんな権限も力もない。そして口から出た言葉は
「分かりました」
下唇を噛み締めながら答えた。
「それと汛、言い忘れていたがお前にはここから出たら仕事をしてもらう」
「へぇ?」