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第五話 初めてのダンジョン生活①

翌朝、俺は一番に目を覚まし、持って来ていた腕時計を確認すると朝の八時だった

昨日は何時に寝たのか分からないがよく寝たと思えるくらいに体が軽い


これもレベルアップの影響なのだろうか?


まぁ深く考えても仕方ないし湖で顔を洗い、サッパリして持ち込んでいた軽食で朝食を済ませて体を動かして筋肉をほぐした


時間が経つにつれて美優、光、父さん、母さんの順に起床してくる


さて、学校も仕事もないニート集団の我が一族(笑)はのんびりした様子でそれぞれ昨日決めた作業を開始する


俺は母さんに頼まれた裁縫道具とパートに行く(不倫相手に会いに行く)のに使ってた原付バイク用のヘルメット(防具)等を予備のも含めて取りに光と地上に行く


父さん、母さん、美優の三人で穴掘り作業などをする予定だ


モンスターを一度も見かけずに地上に出た俺たちは荷物を取りに行かずに、車庫から自転車を引っ張り出して乗り込み出発していた。ん?何処に行くのかって?


地上へ戻っている途中で心配だからと弟の光が早見 玲奈ちゃんの様子を見に行きたいと言ってきたんだよ


早見さんの家の場所は玄関を出て右へ直線距離で700m程先のマンションに住んでいるので大した時間もかからない

ちなみに昨日俺が行ったコンビニは正反対の方角にある

他の家やマンションの様子を見ながら進むと見えてきた


「……こんな状態でまだ家に居るのか…?」

辿り着いて俺が思わずそう言ってしまうほどの有様だった

マンションの玄関に張られていたガラスは砕け散り、壁はあちこち剥がれ落ちているし、エレベーターも動いている様子はない

五階の506号室にある部屋には非常階段を行くしかないか…はぁ…

思わずため息をついてしまう

階段を先に上がる弟は気が気じゃないのか駆け足で先に上がって行く

俺も心配だが、無事なら迷わず避難所へ行ってるだろう…


実はここだけの話、早見さんとこの玲奈ちゃんの姉で俺の一つ下になる詩音ちゃんが俺の初恋の相手だ


これは誰にも教えていないしバレない様に常にポーカーフェイスを心掛けてきた

こんなモブに好きになられても迷惑だろうと思い告白もしなかったんだ


高校に上がってまだ二ヶ月ちょっとしか経っていないが、その間一度も会っていないので元気にしてるのか心配ではある


弟の光はもう着いているのだろうか?さっきまで玲奈ちゃんを呼ぶ声が聞こえていたが今は静かになっている


歩いて階段を上がっていた俺も漸く五階に着き、非常階段の扉を開け中に入るが弟の姿が何処にも見当たらなかった


道理で静かなハズだとは思ったが、なら光は何処に行ったのだろう?早見さんとこの部屋の前に着き、ドアをノックしながら呼び掛けてみると中から物音がした!


恐らく避難所へ行かずに自宅でじっとしていたのか!?

玄関を開けてくれたのは早見さんのお母さんである理沙さんだった

「康介君も来てくれたのね、ありがとう。光君は中に居るから入って!」



「はい、お邪魔します」

康介君も来てくれたのね?どういう事だ?光は何も言ってないのか??


リビングに通されると光は食卓に使う四人掛けのテーブルに座って玲奈ちゃん、詩音ちゃんと話をしていたようだ

俺の姿を確認した詩音ちゃんが席を立って声を掛けてきた

「康介君も無事だったんだね、良かった!」


「ん?光から何も聞いてなかったの?」

確認の為に一応聞いてみる


「光君のお兄ちゃんこんにちは!お兄ちゃんの話はなかったよ?」

詩音ちゃんの代わりに玲奈ちゃんが答えてくれたのだがやっぱりか…


「お前な…」

思わず光を睨んでしまった


「い、いや、後から来るの分かってたし。笑」


「まぁ、良いけど。それより避難所には行かないの?」

ここに居る時点である程度は予想出来るけど、聞いてみる


「うん…行こうかとは思ったんだけど、女三人だし不安なのよ。

主人は四月から昇進と同時に北海道に出張してるから…あっちはあっちで大丈夫なのか心配なのもあるのよね…」


「あ…そうだったんですね……とにかく皆さんが無事でよかったですよ。これからはどうするんですか?」

おじさんが出張なのは知ってたけど、北海道か…これは無事だとしても合流するのもすぐには無理かな…


「動こうとは思ってたんだけどね…様子を見に行った駐車場の車が瓦礫に潰されちゃってて動こうにも動けなかったのよ…」

早見おばさんは本当に困っている様子で答えてくれたのだが、そこに光が声を上げた

「それなら家に来れば良いよ!避難所代わりの地下倉庫もある…あ……」


予想通りおバカが自爆して俺は思わず声を出してしまった

「光ぅ……」


「え?家で何かあったの?」

すかさず玲奈ちゃんが心配そうに声をかける


「あぁ…えっと…実はさ……」

地下倉庫にダンジョンが出来てた事やモンスターと戦いレベルを上げてダンジョン内部に湖のあるモンスターの出て来ない部屋があって、そこに家族で引っ越しした事など、家であった事を俺は説明した


安全が確認されているのなら避難させて欲しいと早見おばさんから頼まれ、即座に光は来たら良いよ!と軽々しく言うが、父さんや母さんに相談もせずに決めるっていうのはどうかと思うぞ……暫く考え込んでいた俺に皆の視線が集まってしまい少々気まずくなってしまった


…ま、まぁ父さんや母さんが何か言ってきたらお話(脅し)すれば良いかと思って早見家の人達を家に招待する事にした


余談だが早見おばさんは時々、熟女専門の風俗店で働いていた事も俺は知っている


早見一家がキャリーバッグやバッグに荷物を纏めている間、俺と光は玄関で待って居る

暇だなーー


一時間弱待って早見一家が部屋から出て来たので荷物を各自分担して持ち非常階段を降りて行く

俺と光は自転車に荷物を載せ、大世帯で歩いて家に向かう

光は早見母や玲奈ちゃんと並んで歩きながらダンジョン内でのモンスターとの戦いやステータスについての話をしてる


俺は皆よりやや先を歩き、そのすぐ後ろに詩音ちゃんが続いて最後尾に三人が歩いている状況だ


…何か話しかけてあげた方が良いのかもしれないが、どう話しかけようかと悩んでいた時、先に沈黙を破ったのは詩音ちゃんの方だった

「光君の話を聞いてると…やっぱりダンジョンって凄く大変だったんだね…」


「…ん、あ、あぁ、すげぇ大変だったよ。大きなネズミ倒すのにもノコギリで頭切って倒したり……気持ち悪くて仕方なかったなー」

顔には出さない様にしつつ答えると続いて詩音ちゃんから「そう…なんだ…怖かった?」と聞かれた


「んー、そりゃ怖かったよ?薄暗い中で戦わないといけない状況で、最初は無我夢中って感じだったんだけど戦闘が終わって冷静になると寝間着にモンスターの血がベッタリ付いちゃって気持ち悪くなったし…光もほんと頑張ってたよ」

返答に少し悩んだが正直に答えた


「………そう…だよね…美優ちゃんも我慢して戦ってモンスターとか倒したりして…凄いなぁ」

詩音ちゃんは凄いと言うけど、イヤイヤ戦っただけだよ?それでも凄いのか?と思ったけどそんなこと言えないよ


暫く話をしながら歩いていると家のすぐ近くにまで戻って来ていた

早見一家には車庫内で待ってもらって荷物を置き、俺は母さんから頼まれていた裁縫道具や室内用の物干し台、外用の物干し台等を持てるだけ持って地下倉庫の階段を皆で降り、階段横に置いておいた武器などを取りに向かう


「さて、ここからモンスターも出てくる気をつけて。光はバールとノコギリ持っとけよ?」

俺は懐中電灯を手に持ちつつ光に声をかける

「兄ちゃんはその剣で戦うのか?」


「あぁ、どれくらい使えるかも試しとかないとな」

当然ながら俺はこんなのを扱った事がないので練習をしておかないといけないと思ったのだ


「分かった!兄ちゃん頑張れよ!」

光から応援されても俺は嬉しくないのだよ!

適当に「おー」とだけ、ヤル気のない返事をして沈黙の中を歩き最初の扉の前にたどり着いた


「それじゃあ光、いつも通りに」

ここからは無心にただただ作業を繰り返すのだ!


「おう!兄ちゃん、疲れたら何時でも代わるから言ってくれよ!」

光がわくわくした様子で俺の持つ剣を見ながら声をかけてくる


「分かってる。三人は少し下がってて、こっちを見ない様にしてね」

剣を振り回すので少しでも危険がないように早見おばさん達に声をかけて離れてもらう時に、おばさんから「気を付けてね…」と声をかけてもらい気合いが入った俺たちは『はい!』と元気良く返事をする


同時に俺と光は荷物を置きながら気合いを入れて配置につき、扉を光が開けていつもの「チュー!チュー!」バンバンバン……!ほら来た!

康介は無心に剣を振りネズミを攻撃し討伐する!


「…!…うそ…本当に、こんなのが居るんだ…」

玲奈ちゃんは大型ネズミの死体をチラチラ見つつ驚いているようだ


「うん。それと、コチラの人数が増えたら出現するモンスターの数も増えるんだ。光、ゴブリンの部屋に着いたら交代してもらわないといけないと思うから頼むぞ?」

レベルが上がって身体能力や体力が上昇しているからか、まだネズミだけだと大丈夫だったがゴブリンは流石に無理だと思って光に言った


「おぅ!任しとけ兄ちゃん!」

思い人の玲奈ちゃんが居るから張り切っているのか?そうなのか?そうなんだな?

湖の部屋に着いたらみんなの前で大暴露してやろうか。笑


「ほ、本当にこんな大きなネズミが居るのね…あ、あの、康介くん。私も戦う…から、交代するなら言ってね?」

心の中で黒い笑みを浮かべていた俺に早見おばさんから予想外の言葉をかけられて少しビックリした


「え、大丈夫ですか?かなりグロいですよ?」

俺は一応、おばさんに注意をしてみるが意思は固そうな雰囲気で返してきた


「うん…康介君たちのお母さんも戦っているのよね?

大丈夫よ…避難させてもらうんだから私も頑張って戦うわ」

うん、まあ…戦うなら止めませんよ?


「……分かりました。ただ、次に戦うのはゴブリンってゆう二足歩行する獣?の様なモンスターなので殺すのに抵抗があるかもしれないですし無理はしないで下さいね?」


「ええ、分かったわ」


少し休憩して先に進む事にした

詩音ちゃん、玲奈ちゃんはまだ気を病んでいるのか道中は静かなものだった。顔も少し俯き気味だ


道なりに歩き、二つ目の部屋にたどり着いた


「さて、最初は俺が戦うから光と…早見おばさんは扉を抑えててもらえますか?詩音ちゃんと玲奈ちゃんはこっちを見ない様にしといた方が良いよ?」


「そうだな…気持ち悪いからあんなの見ない方が良いよ」


「…分かったわ。疲れたら代わるから言ってね?」


「…分かりました。気分が悪くなったら無理しないで下さいね?じゃあ、光…」


「うん、それじゃあバールかまして扉を開けるよ?」


「…分かったわ!」


ガチャ…キィ……ゆっくり扉を開けると隙間から小さな手や顔にはが見え…

「ギャギャッ!ギギャギャギャ!!…」バンバンバンッ!!

こっそり様子を伺っていた詩音ちゃんがいきなり出てきたゴブリンの手に反応し、「きゃぁ!?」と悲鳴を上げてしまった


「これがゴブリンだよ、詩音ちゃん達はあまり見ない方が良い」

声をかけながら俺は懸命に剣を振り、刺してゴブリンを屠っていく

途中で「う、う、うん」と玲奈ちゃん?の声が聞こえたが俺はそのまま集中して剣を小さく振り倒し続けた!


交代する時は光、早見おばさんはノコギリを使い、そしてまた俺とローテーションしながらゴブリンたちを倒した


早見母は重たくて剣をほぼ持ち上げられなかったのでノコギリで切り殺したのだ

少しづつでも頭蓋骨までノコギリで切れるんだから、ここまで丈夫な本格的な工具を作れる日本の技術は凄いものだと改めて関心させられた


ずっと目を逸らしていた詩音ちゃんと玲奈ちゃんだが、部屋に入る時に思わず地面に横たわる死体に目に目がいってしまい「ひっ」と声をあげる

怯え憔悴しきった表情だったのだが俺、光、早見母の三人でもう少しだからと励まし、休憩した後なんとか立ち上がってくれたので先へ進む

早見さんとこのおばさんも生き物を殺したという現実と返り血を浴びた服から漂う鉄の匂いで辛いだろうに…母は強しってこうゆうのを言うんだろうなー


ほんと今日一日で色んな事があったよな…ってまだ昼前だよ!

11時にもなってねえよ!笑

ゆっくり歩いていたので予定より少し遅くなったが湖のある部屋に無事たどり着く


部屋の入り口付近まで来た時に皆がコチラに気付いて駆け寄って来た


母さんが早見おばさんと、妹の美優は仲の良い詩音ちゃんと抱き締め合う

そうして互いの無事と再開を喜びあっていたが父さんは一人、じっと俺を見て何か言いたげだったので俺から父さんに近付き小声でこう言ってやった「ただでさえ家のローン約2500万もあるのに競馬の借金とか…いくらあるの?」って。笑

それを聞いた父さんは明らかに動揺した様子でフラフラしながら俺たちに背を向けて何も言わずに、一人穴掘りの作業に戻って行った


その時…俺は密かに大学進学を諦めた


む?こう見えて成績はそれなりに良い方なんだぞ?運動は得意ではないけど…


少し周りを見ながら考えた俺は父さんが誰かに余計な事を言わない様に監視する為、一緒に作業しておくことにした

疲れているがここは仕方ないし、良い運動にもなる


母さん達は新たに加わった早見一家との話し合いをして作業を割り振り、少し作業をした所で昼になったので輪になって集まり地べたに座って昼食を摂った


「地面が硬い…モグモグ…クッションが欲しいな…昼飯食べたら父さんと光と三人で絨毯とかクッション取りに上に行って来て良い?」

俺の要望に母さんから物言いがついた


「良いけど、男三人だとこっちの穴掘り作業とかが遅れるからお父さんと光にはこっちに残って欲しいわね。美優、行ってもらえるかしら?」


「うん、分かった。でも二人だと二往復はしないといけないからもう一人誰か来て貰いたいんだけど…」

美優は周りをキョロキョロ見回しながら詩音ちゃんの方を中心に見ている


「そ、それなら私が行くよ?力ないから余り役に立てないかもしれないけど…」

詩音ちゃんが声を上げた!やはり…そう来たか…昔からこの二人は揃うと時々俺をおちょくってくるのだ!クソっ!!


「そんな事ないよ、詩音ちゃんお願いね!良いよねお兄ちゃん?」

美優め…俺を見ながらニヤニヤしやがって…!

だが断るのも癪に障る


「…モグモグ…ゴクッ…あぁ大丈夫だけど、モンスター倒すの手伝ってもらえるか?こっちに戻る時の戦闘でまたレベルは上がったんだけど、まだ一人で全部を倒すのは疲れて大変なんだ」

なのでモンスターを倒す事を条件に二人が同行する事を許した


「う、うん、分かった…!」


「あ、あの…私も戦う…よ!」

美優も詩音ちゃんもヤル気の様だ。苦笑


「詩音ちゃん大丈夫か?」

だが、それでも心配な俺は詩音ちゃんに優しく声をかけた


「うん、お母さんも頑張って戦ってたのに何も出来なかったから…私も力になりたいの…頑張るから!」

まぁ、身を守る為に戦闘力はあって困るものじゃないから良いけどさ…


「…これで決まりね。それじゃあ康介、お願いね?」

母さん…そこはもっと不安そうにしてくれよ…


昼食を終えた俺たちはまた上に上がる為に道を戻った

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