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第二十八話 ダンジョンお泊まり会は楽じゃない

新入りさん達は少しずつレベルも上がり、慣れてきたお陰でようやく二階層の終わりまで来れた…


ホブゴブリン、ゴブリンナイト、コボルトナイト、オークガートナー、トレント、カミキリトカゲ、ブラックバット……コイツらが二階層で出現したモンスターだ


宝箱は金塊、鉄のレイピア、ポーションが出た!

シルフ曰くこれくらいが普通だと言う

それならレベル3だったら?

シルフに聞くともう少し質や量が劣る物が出るんだと…Mリアたんもそれに同意した



三階層へ階段を降り、周囲の安全を確認した所で今日はここで寝泊まりすることになった

夕飯に初めてオーク肉に挑戦してみる事になってまな板と包丁を手に母さん達はブロック肉を一人前250gサイズくらいに切っていった


味付けは塩コショウのみで薄く油をひいて熱したフライパンで焼いていくととてつもない香ばしい香りが漂ってくる!!

トンテキは久しく食べてなかった俺としては楽しみではある


焼き上がり、適度に脂の乗った肉が俺の前に運ばれてきたので早速ナイフでひと口サイズに切り、口に運ぶ……んんっ!?

噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる!…これは美味いぞ!


オーク、こんなに美味いのに今まで避けてきてしまっていたのか!!

薄切りのバラ肉なんかで豚汁にして食べたくなる!

グリードがガツガツ食べてたの納得できるな…


俺の様子を見た皆も勇気を振り絞ってひと口……「「おおっ!美味い!」」…あ、やはり俺と同じ反応を示した。それから若い男勢なんかはとんでもない勢いでがっつきだしている


これに合うソースなんかが開発あるいは手に入ったりしたら暫くの間はこのトンテキと白ご飯だけでも俺は十分だよ

他の男性陣の中にも俺と同じ思いを抱く人は居るだろう。それくらいの美味しさなのだ!

脂身もサッパリしていて食べやすいのも高ポイントだな!


女性陣は食べ太りとか気にしなければいけない所もあるのだろうが、今日に限ってはそういうのは無しにしたようだ。笑

……詩音ちゃん、頼むから太り過ぎないようにはしてくれよ?


母さん達は元から少し……ゲフンゲフン…!

とにかくいっぱい食べてるな…何かを察知したのか母さんに一瞬睨まれた気がする…

俺は知らないぞーー。笑


トイレは母さんが家の地下倉庫に保管していた携帯トイレにトイレットペーパーもまとめて持って来てるから問題もなく、ここで眠ることになたった


それぞれ仲のいい者同士で地べたに直接寝転がったり、壁にもたれかかって座った体勢のまま寝ようとする姿が見受けられる



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「……ん…ぅ…んん……ああ…いつの間にか寝てたな…」

俺はアクビをしながら起き上がって、軽く伸びをして周りを見渡す


既に起きてる人も居るけど、寝てる人の方がまだ多いな。

ていうか…こんな硬い所で寝ていたから身体中が痛い…これは疲れるなぁ…

寝袋が欲しい…



少しして起床してきた他の皆もあちこちの関節が痛むのか顔を歪めつつも体を動かしている



暫くして朝食を食べた一行は先に進む

通路を歩きながら、もうダンジョン内で寝泊まりは絶対にしたくないと愚痴る人がいっぱいだ

だが安心して欲しい。それは俺も同じだ!

絶対にこんな不憫な思いはしたくない!

ゆとりある生活を送ってきた現代っ子の俺たちを舐めるなよ!



ダンジョンに対してイライラをぶつける様に俺たちは戦った。モンスターにこの苛立ちを分かってもらいたくて俺もモンスターを斬り伏せていった


ゴブリンソルジャー、コボルトソルジャー、オークソルジャー、ウインドウルフ、狼男なんかが新しく出現して盛大に苦戦させられてしまった


特にウインドウルフと狼男だ

ウインドウルフに関しては同じ種のグリードが居たから対処法も分かっていると思い込んでいたのだが、複数匹いると連携を取れてとてつもなく厄介だった


狼男も素早さがウインドウルフとほぼ同等な上に力も強かった

両方とも爪で引っ掻き、噛み付いて攻撃してくるのだが爪が硬いのなんのって…俺のスピリッツ オブ ソードなら簡単に切れるんだけど、他の皆の鉄の武器じゃ切り落とすなんて芸当、とてもじゃないけど出来そうになかったのだ


オマケに三階層全ての部屋を回ったのに見つけた宝箱は一つだけだよ?……極端過ぎるだろ!って思っていたけど、こればっかりは運だから仕方ないよ。とシルフに言われた俺はテンション急降下だ



昼食休憩を挟んで、いよいよ最下層である四階層に降り立った


この階層では今までに出てきたモンスターだけで新種が居なかったのは有難かったんだけど……数がアホみたいに多過ぎる!!!


限度を知らないダンジョン?の嫌がらせで大変な苦労をさせられてしまった!

今までに見た部屋よりも広い、一つの大部屋にモンスター97匹放つってバカじゃないのか!?

そうじゃなかったら頭おかしいだろ!

もう、ホントこのダンジョンは頭おかしいよ!バカ野郎だよ!!


……そう思った時期が俺にもありました

傷の手当を終え、休憩をしっかりとってから次の部屋に向かったのに部屋にはモンスターが一匹も居ないんだから

Mリアたんもこれはおかしいって言ってたし、シルフにも同じ事を言われた


だから俺たちはこの先に何かあるのか?と変に勘ぐって更に警戒を強めながら次の部屋に行ったのに…またモンスターが居ないんだ。絶対に変だよね?明らかに異常だよ。こんな展開だれが予想出来るって言うのさ!?


ま、俺しか居ないよね!笑


「恐らくDPを使い切ったバカがいるんだろうな。

こんな後先考えずにやる奴がモンスターやダンジョンコアな訳がないだろうからボスは人間の可能性が高いと思う」


「い、いやいやいや!人間だとしてもだよ?ここまでするバカは居ないんじゃないかな!?」


「シルフ、それがこっちの世界には居るんだよ。頭の悪い半端者のヤクザや半グレ、時代遅れのヤンキーとか。苦笑」


「うわぁ…そんな奴がボスとかめんどくさそうだな…って人間相手ってどうするんだよ!?」

矢野は人間を相手にしなければいけない可能性に戸惑っている様子だ


「話の分からない奴なら俺たち初期メンバーだけで殺すから大丈夫だよ」


「いやいや殺すって!正気かよ!?」


「あぁ、永野。皆が家に来る前に家を荒されたって話をした事があっただろ?そいつらは全員、加藤家と早見家で皆殺しにしているんだよ」


「「なんだって!?」」


「他にも、中学時代に俺とめちゃくちゃ仲の悪かった会田や原田達ともダンジョン内で偶然にも遭遇して、襲われたからその時に居た相手四人も殺してる」


「待てよ康介…そんなの聞いてないぞ。一体何があったんだ?」


「俺たちが避難所に居なかったのを会田達は各避難所を回って調べたみたいなんだ。余程俺を恨んでたんだろうな。で、遭遇した時に少し話をしたんだけど、ダンジョンを出たら俺たちの家に行って襲おうとしてたらしい」


「アイツらとお前が仲が悪かったのは俺も知ってるけど、何があったんだよ?」

矢野には下手な嘘は通用しない事を付き合いの中で知っていた俺は当時の事を包み隠さずに話す事にした


「実は…………………………………………………………って訳だよ」


「何だそれ、完全に逆恨みじゃないか」

伊藤さんのお父さんは呆れ顔だ


「はい、アイツら二人と一緒に居た仲間らしき二人にもそう言われてツッコまれて笑われてましたよ」


「加藤くん達はこのダンジョンの管理者の人を…本当に殺す気…なの?」

伊藤さんが心配そうな表情で俺に言ってきた


「うん、まあ…話の通じない相手ならね」


「そうね、分かってもらえない相手なら仕方のない事よ」


「おばさん、私も戦いますよ!あんな酷い人は生かしておけませんから!」


「え、詩音ちゃんも戦うの!?」


「翔、もちろんだよ。詩音ちゃんは前回の人との戦闘で二人焼き殺してるからな」


「マジかよ…!」


「矢野、殺らないとこっちが殺られる様な状況なんだよ……相手を殺さないと自分達が生き残れないんだよ。

光の友達の中田さん一家は少し前にモンスターに殺されてるのも発見したしな…家のオーク部屋に墓があっただろ?アレがそうだよ」


余りのショックに言葉を発する事が出来なくなった人達の胸に康介の放つ言葉が胸に突き刺さる

もう、本当に自分達が知っている平和はなくなってしまったのだと心底思い知らされたのだ


そして、同級生の理人もまた光と同様にとてつもなくショックを受けてしまった

「なぁ…加藤、本当の話……なのか?」


「あぁ、遺体を確認して俺たちがあそこに墓を作って埋めてやったんだ…間違いねぇよ」


「光は当時、凄く動揺して泣いていたよ。今は頑張って現実を受け入れて乗り越えようとしてるんだ」

父さんも辛そうにしてたもんな…


「「………………。」」

光と理人は顔を俯かせて悲痛な面持ちで今にも泣いてしまいそうな感じになってしまっている


事情を察したシルフとMリアたんも流石に異世界じゃそんなのは当たり前ですよ〜


とか空気を読まない発言は控えてくれたみたいだ



でも、ずっとこんな暗い雰囲気でここに留まっている訳にもいかないんだよ…

「そろそろ人間相手だったとしても戦う覚悟はしてね。じゃないとこっちが「康介くん、分かったから…そんな辛そうな顔でそれ以上は言わなくてもいいよ」……はい」

伊藤さんのお父さんが康介の言葉を遮りそう言った


……今の俺ってそんなに辛そうな顔をしてるんだな…

伊藤さんのお父さんの話はまだ続くようだ


「まだ高校生の康介くんにそんな顔をさせてしまった挙句にここまで言わせて…皆を引っ張っていく為に率先して戦ってくれて、本当に不甲斐なく思うよ…ごめんね…」


その伊藤さんの言葉に同調するかのように頷く大人達……戦いに積極的になれていなかった人達が俺に近付いて来て頭を下げて謝罪の言葉を述べていった


「そうですね、康介くんのお父さん達ご家族や早見さん達が康介くんをリーダーだと最初から認めていたのも今ならここにいる全員が理解し、納得する事も出来る。それでも康介くんはリアさんと初めて会話をした時、物凄く嫌そうに、仕方なくリーダーをやってると言っていたもんな」


「ええ、本来なら私たち大人がもっとしっかりしないといけないのに、嫌なのは皆さんも同じなのに康介くんは皆が生き残る為に…中田さん達の様な犠牲者を出さない様に考えてくれて……本当に感謝してるわ」


佐々木さんのお父さんと永野のおばさんから感謝の言葉などを受け取っていると永野が真剣な顔で俺に向かって話しかけてきた


「あぁ、流石は俺の親友で唯一のライバルだよ!」


「永野?ライバルって?」


「おう、俺は何事にもお前には負けたくないからな!」


「…あ、キャラが被ってるからか。ならスマン…先に彼女が出来てしまった…」


「「グハアァッ!それだけは言うな!!」」


「ていうか、何で矢野まで同じ反応してるんだよ?」


「え?何でって俺も親友でライバルだと思ってるからに決まってるだろ?」


「あ〜…そうだったのか。なら重ねてスマン、俺は矢野の事は友達だとは思ってるけど、親友ともライバルとも思ってないんだ。苦笑」


「ぶっ!?おい!兄ちゃん、光の兄貴に何したんだよ!?

父さんから友達は大事にしろっていつも言われてるだろ!!」


「…プルプル…プルプル…なぜだああああああああぁぁぁ!!」


「相変わらず翔の兄ちゃんってうるさいよなぁ。笑

翔もおじさんも大変そうだな」


「弟達にこんなに言われる奴が親友だと?

とてもじゃないけど恥ずかしくて誰にも言えん!

それに何もしてないとは言わないよな?中二の夏休みに夜の河原で三人で花火してた時に、いきなり俺に目掛けてロケット花火に火をつけて投げてきやがって!」


「ちょっ…!マジかよこのバカ兄貴…」


「ちょっと待てぇぇ!それを言うならお前、俺に向かって打ち上げ花火をバズーカみたいに構えて打ち返して来やがって!それで俺のTシャツが駄目になって背中火傷したんだそ!?」


「この子達は……なにしてるのよ…」

あ、母さんにバレちまった……


「あ、あははは…すいません」

永野も目を逸らしながら謝ってんじゃねえよ!


「ていうか矢野は自業自得な。俺に攻撃を仕掛けるからそうなるんだ。それで中三の時にあの悲劇が…」


「康お兄ちゃん、あの悲劇って?まだ何かあったの?」


「あぁ、思い出したくもない…とんでもない悲劇がね…」


「え…えっと…聞きたい様な聞きたくない様な…」


「フッ…詩音ちゃんがそこまで言うのなら語りましょう矢野徹という男が陽キャだったのに何故こちら側(俺たちオタク側)に来てしまったのかを…!事の発端は矢野が「待てー!」ら始まった」


「すげぇ必死だな。笑

ま、俺が矢野の立場でもそうするけど」


「俺だってそうするよ、永野。あ、誰か矢野の口を塞いでもらって良い?」


サササッ…ガシッ!

「ムグッ!?ンンー!モゴモゴム"ーッ!ム"ゴーッ!」


「敦史さんナイス!」


「あぁ、少し離れた所で聞いてたんだけどさ、どうにも話の内容が気になってしまってね」


「ほほぅ…お兄さんも好きですねぇ…」


「え、そそそんな危ない話なのか?」


「それは聞いてからのお楽しみですね。

さて、それじゃあ話を始めるとしましょうか」

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