第三話 チュートリアル?そんなの知らない!
それから俺たちはお互いのステータスを確認する事にした。
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名前:加藤 康介(16) チュートリアル中
レベル:2 ジョブ:なし
能力:体力G、筋力G、魔力G、敏捷G、魅力G、運G、総合力G
装備:寝間着、スニーカー、ノコギリ
スキル:なし
魔法:なし
称号:先駆者
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名前:加藤 光(13) チュートリアル中
レベル:1 ジョブ:なし
能力:体力G、筋力G、魔力G、敏捷G、魅力G、運G、総合力G
装備:寝間着、スニーカー、懐中電灯、バール
スキル:なし
魔法:なし
称号:なし
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「俺のレベルが上がってるのは倒した人だけに経験値?が入るって事でまあ、理解は出来るんだけど、称号の先駆者ってなんだ?」
モンスターを倒した人間だけにしか経験値の様なものはいかないのかよ
「ローファンタジー系のラノベとかだと初めてモンスターを倒した人とかが持つ称号とかじゃなかったっけ?
何の説明も出ないの?」
うーん、触れてみようとしてもすり抜けて触れないし、どうしたもんかと眉間に皺を寄せて睨みつけるように見ていたら説明が出てきた
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称号:先駆者 最初にモンスターを倒した者に贈られる称号。
能力全てに補正がかかる。
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「ほぅ…地味に凄いな……」
「それよりチュートリアル中って、どうすれば終わるんだろ?」
光は俺の称号よりもチュートリアルの方が気になるのか…そうですか…
「それも気になるけど、とりあえず上に帰って報告するぞ。ダンジョンからモンスターが出てきたりしたら洒落にならん!備えないとっ!」
なら俺も気にせずに上に上がって休もう
部屋を出て扉の取っ手にバールを掛けて簡単に開かない様にしてから上にあがった
「お、戻って来たな!何かあったか?
……ってその血!?一体どうした!?中で何かあったのか!?」
待っていた父さんが俺の寝巻着に付着した血にビックリしている様だ
母さんと美優はこっちを見てない!
何故だあ!!?
「あ、父さん!やっぱりダンジョンだったよ!!デカいネズミのモンスターがいっぱい出てきた!!
あ、あ、あの、あと、あれだよ!ゲームとかでよくあるステータスも出てきた!」
会話をしていた所で母さんが気付きこちらに駆け寄ってきて俺に質問をしてきた…いや、話聞こえてたならさっさとこっちに来いや!笑
「康介、本当なの?」
「…あぁ、残念ながら本当だよ。
とりあえず何があったのか話すから嘘と思わずに真剣に聞いてくれ」
それから家族にダンジョンの中身を分かる限り詳しく説明し、ステータスを見せる事で一応信じてもらえたようだ
そして上の様子に関して気になった康介が残っていた三人に聞くと、俺たちがダンジョン?に入って少ししてから地震は収まったそうだ
そして予備電源は作動しなかったと……何の為の予備電源だよ。笑
「上も気になるけど、モンスターがいっぱい出てきたら最悪だからダンジョンもどうにかしないといけないよな…」
光よ…それさっき俺が下でお前に言った事じゃんなに人の台詞パクってんだよ…
「そのモンスターっていうのが危ないのは分かったけど、扉にバールをかまして来たんだろ?なら大丈夫なんじゃないのか?」
父さんは楽観視しているのかさろんな事を言ってきた
「いや、もし本物のダンジョンならモンスターがアレだけだってゆうのは有り得ないと思う。
いっぱい出てきたら簡単に開けられるんじゃないかな?」
仕方ないので俺が予測しうる最悪の事態を想定して言った
そうして話をしていた所にラジオをいじっていた長女の美優がこちらに話しかけてきた
「ラジオはどこの局も駄目だよ…どうしちゃったんだろう?……怖いよ…」
美優はこれからどうなるのかに不安を覚えているようだな
それも当然か
「俺はこれからチュートリアルを終わらせに、またダンジョンに行こうと思ってるけど良いよね?
危険から身を守る為にも先に進んでさっさとチュートリアルを終わらせて、ある程度の力をつけとかないといけない気がするんだよな…」
ダンジョンがここにだけってのはどう考えても有り得ないしね
「え、ちょっと康介!あんた本気で言っているの?怪我しちゃったらどうするのよ!?」
母さんは心配な様だがこればかりは譲れない!
「それでも、さっさと適応して動かないと危なくなってからじゃ遅いよ?
俺でも無傷で倒せるくらいの奴なんだから大丈夫だし。
それにあれだけの地震だから上はどうなってるのか分からないけど、ほら震災の時のニュースとか覚えてるだろ?間違いなく物資なんかを求めて危ない奴らだって出来くる可能性はあるし、そうなれば間違いなくこの辺りも治安は悪化するじゃん?
最低限の身を守る為の力をつけないと…後にどうなるかも予測して考えて動いた方が良いと思う。
光はほっとけば間違いなく一人でても勝手にダンジョンに入って暴走するだろうしさ。俺は光を常に監視するとか嫌だよ?」
全部予想でしかないけど何が起こってもおかしくない世の中になっているのなら急いだ方が良いに決まってる!!
「…それなら一度休んで明日の朝から皆で行かないか?一家まとまって動いた方が母さん達も安心出来るだろ?」
冷静な父さんが母さんの説得にあたってくれた
母さんはグチグチうるさいから正直苦手なんだよな…
「はぁ…仕方ないわね。そうしましょうか……」
ーー高橋さんは無事なのかしら?心配だわ…ーー
美由紀の心の内など知らない家族と共に康介は寝間着に付着した血と匂いを我慢して無理矢理眠りに就いた
そして翌日、簡単に保存食を食べた後、それぞれが工具などの武器になる様な物を手に持ち、五人揃ってダンジョンへと突撃して行った。
「暗くて歩きづらくて気味悪いのもあるけど、なんか冷えるね…」
美優も……何でこう、いちいちうるさいのかね…
「まだ春先だし、時期的にも冷える日の朝はこんなもんだろ?」
スタスタスタスタスタスタ…視線の先に扉が見える
アレだな……昨夜、俺と光が入ったダンジョン内の初めの部屋の扉の前に着いた
「…この扉の向こうにモンスターがいるの?」
母さん、俺の寝間着に付着した血を見てるだろ!?
何故に信用しない!!
「そうだよ。ここにバールをかましてるだろ?」
光が言うけど、それだけじゃモンスターが居る証拠にはならんぞ?
扉の取っ手を指差しながら言い、母の美由紀を含めた三人が頷いているのを見ながら、俺は試しに少しだけ扉を開けて中を覗こうとすると「チュー!チューチュー!」バンバンバンバン!!と僅かに開いた扉に体当たりをする大型ネズミの集団がまたリポップしていた!
「うぉぁぁぁぁ!?お、おい!光!!抑えとくから早く隙間からネズミの集団を倒せ!
父さんはそっちの扉を抑えてて!」
俺はビックリしながらもみんなに指示を飛ばす!
俺が弟と父さんにそう声をかけると、皆がコチラをみて父さんはビックリした様な声をあげつつも扉を抑えつけ、母の美由紀と妹の美優は揃って悲鳴をあげて目を逸らした
やっぱり女性陣はこうなるのか…
ネズミが居る事を予め予測していた光は少し狼狽えはしたものの、即座に武器として持ち込んでいた、俺が先日使っていたノコギリを握り締めネズミ達へと攻撃を仕掛けた
ん?俺の武器?長めのプラスドライバーとマイナスドライバーだよ。笑
こんなもんで攻撃なんか出来ねぇ!?
先日の俺と同じ様に弟はノコギリでネズミを攻撃して倒しているが、俺より体力のない光は「父さん任せた…ハきァハァ」と息を切らせながらノコギリを父さんに渡し、受け取った父さんは「お、おう!」と声を上げて躊躇しながらも害獣駆除のつもりなのか頑張ってネズミへと攻撃を加えていった
腰が引けてるぞー!笑
ブォン!グチャッ!ブォン!グチャッ!ブォン!グチャッ!
…………なんか昨日より数が多い気がするな…
光が攻撃していた時はまだ数も少なかったから分からなかったけど、父さんががむしゃらに攻撃しているにも関わらず未だにネズミは扉へ体当たりをしていれば流石におかしな事に気付かざるをえない
これ、本当にチュートリアルか??
そんな疑問も湧いてくるのも当然だよな?
「お、おい!昨日もこんなに数が多かったのか!?」
おっと!父上も俺達が先日説明して聞いていた状況と違うんじゃないかと流石に疑問に思った様で、コチラに話を振ってきたでござる
「理由は知らないけど、明らかに数が多いと思う」
俺が父さんに声を掛けると「俺も疲れたから康介、代わってくれ!」と言われたので仕方なく交代して父さん達に扉を抑えてもらいながらネズミを攻撃していく
お母様と妹ちゃんは地面にへたり込み、未だに抱き合いながら震えてコチラを見ない様にしていた。笑
その後も、光→父さん→俺ともう一周ローテーションしてやっとネズミの鳴き声も聞こえなくなり扉への体当たりも無くなり、ネズミの死体を避けながら中へと入って行った
先へ進もうとするお母様と美優はチラチラこっちを見てはネズミの死骸を見て吐き気を催したのか「ううぅ…おぇ…」と言うばかりで未だに立ち上がろうともしない
こんな調子で先に進めるのか?と少し不安を抱いた康介だったが声には出さず中を改めて確認するが、やはり壁に埋め込まれた不思議な光る石以外は何も見当たらない
ん?昨日はこんなのも気にする余裕もなかったのか…もう少し落ち着いて周りを見れれば良かったな…反省反省……っとステータスでも見てみるか
これでもまだチュートリアル終わってなかったら明らかに変だよな…
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名前:加藤 康介(16) チュートリアル中
レベル:3 ジョブ:なし
能力:体力F-、筋力F-、魔力G、敏捷G、魅力G、運F-、総合力G
装備:寝間着、スニーカー、ノコギリ、プラスドライバー、マイナスドライバー
スキル:なし
魔法:なし
称号:先駆者
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「まだチュートリアル終わってねぇ!!
なんなんだよこれ!」
やはりまだチュートリアルは終わっていない…!
「兄ちゃん、俺もまだチュートリアル終わってなかったぞ!
もっと先に進まないといけないって事なのか!?」
「ん?光、レベルは上がってたのか?」
「おう!レベルは2に上がってた!」
「父さんもレベルは2に上がってたけど、他には何も変化ないぞ。何なんだこれ?」
「父さんもレベルが上がったか。俺たちもまだ分かってないから聞かないでくれたら有難い…ふぅ……どう考えても先に進んでチュートリアルを終わらせないといけない流れなんだろうなぁ」
あくまでも俺の予想でしかないんだけどな
「この先にまで行くのか?…母さんと美優があんな調子だから二人の回復を待ちたいし、少し休憩しないか?」
父さん…やっと優しい事をいったね…それなら俺から提案でもしようなかな?
「あ、うん、そうしよっか。俺たち三人はまだ我慢出来るみたいだけど、母さんも美優もグロ耐性はなさそうだしな」
俺は二人を見ながら言った
それから二人の調子が戻るまで数十分程だが休憩をし、扉がある部屋の場合はこの方法で倒して先へ進む事を話し合いで決めて改めて出発した
まだチュートリアル中だからなのかは分からないが通路では一切モンスターとは出会わず時々曲がり角やカーブを道なりに歩き続けて二つ目の部屋に辿り着いた
「また観音扉か…楽に倒せるから有難いけど、何が出てくるのか分からない以上は警戒はするべきだよな」
俺は周りに警戒を促しつつ取っ手にバールをかます
「とりあえずバールかましてゆっくり開けるから兄ちゃんか父さんは合わせてゆっくり扉を開けてよ」
光は既に扉の近くに移動してスタンバイしている
そんなに楽がしたいか?次に何が出るか分からないから怖いのか?
「そうだな…進むと決めた以上、気持ち悪くても戦わないといけないんだ。
母さんと美優はコチラを見ない様にしとくか?」
父さんが気遣うように母さんと美優に向けて言った
「う、うん、ゴメンね?そうさせてもらうわ」
母さんは普段は怖いのにこんな時だけ女になる
うん、卑怯だ…笑
「それなら壁寄りに移動して休んでなよ。で、誰から攻撃する?」
下手な事を言ったら後が怖いので俺も父さんと一緒に気を使う
「康介からで良いだろう?レベル?というのも能力も高いんだし一番戦える力を持ってるんだ。頼めるか?」
父さんから頼まれたので了承する事にした
「分かった。それじゃあ光と父さんで扉を抑えながら開けてもらっても良い?
何か飛んで来たりでもしたら怖いから、俺は少し横にズレて様子を見てから攻撃するよ」
俺のの言葉に二人は頷き、バールをかましてゆっくりと扉を開けた。
カチャッ…ギギギギィ…
??「ギギ?グギャギャギャ!」
??「ギャガギャギャギャ!」
「うぉぉぉぉぉ!!??
こ、コイツらってもしかしなくても見たまんまゴブリンじゃん!!
すげぇ!!本物のゴブリンだぜ兄ちゃん!」
「そんなの良いからしっかり扉抑えとけよ!
武器は持ってる様子はなくても普通に怖いから!!」
俺は後ずさりながら警戒し、ジリジリと距離を詰めつつ、はしゃぐ光に言う
ブォン!グチャッ!ブォン!グチャッ!ブォン!グチャグチャ!
「どこが怖いんだよ!母さんが本気で怒った時の方がよっぽど怖いじゃん!!」
ブォン!グチャッ!ブォン!グチャッ!
康介「あ…光の奴、禁句を…ボソボソ…俺は知らないぞ…ボソボソ」
ブォン!グチャッ!ブォン!グチャッ!
「あはははははっ!光も言うようになったな!
確かに母さんが怒った時の方がこのゴブリン?の見た目なんかよりも確かに怖いな!」
父さんもかよ!?
父さんと光は体重を掛けて扉を抑えてるだけだろうからそんなに気楽にしていられるんだよな……ならいっそのことバールを引き抜いて二人をそのままにして母さんと美優を連れて上に逃げ帰ってやろうかって気にもなってくるが、それでは俺が良くても母さんと美優が悲しむかもしれない…
どこぞのスーパーの副店長のおっさんと不倫しちゃう様なあんなオバサンでも俺の母さんなんだ!悲しませる様な事はしたくはない!!笑
なによりこの二人は母さんを既に怒らせているように思う
確かにある意味ゴブリンよりも母さんの方が怖いよな
分かる…分かるよ、うん。でも、言ったら駄目でしょ!
俺はこの後起きるであろう惨状を想像して恐怖心からか震え上がってしまった
それを振り払う様に無心で扉に押し寄せ仲間の死体を踏み付けて殺到してくるゴブリンの頭や腕にノコギリを振り下ろして切りつけて殺す!
何度も何度も交代して三人はノコギリを頭に振り下ろし続けて漸くゴブリンを倒し終えたが…ハァ…本気で疲れた
三人でもコイツらと戦うのめちゃくちゃ辛いな…!
何より数が多い!!
とりあえずバールを外して扉を開け、余りのグロさに顔を歪めながら死体を避け、皆で部屋の中に入ってみると部屋の真ん中に横長い宝箱?が見つかり光が大はしゃぎして駆け寄りだした!
俺や父さんの制止を無視してとうとう宝箱を開けやがった!!
あ、中からは一本の鉄?で出来た剣が見つかったようだ。
罠じゃなくて普通の武器で良かった〜!
だが重たくて満足に持ち上げられないのか、光は引き摺りながら剣を持って来る
俺はそんな弟の姿を見て苦笑いしてしまいながら父さんを見て、次に恐る恐る母さんをチラ見したら父さんの方をめちゃくちゃ睨みつけてる!
………なるほどな…
アレがこの世の終わりを告げる伝説の鬼なのか…母さんの怒ってる顔を見て少しチビってしまったぜ
不倫してるくせによくそんなにでかい態度とれるなと思わず関心してしまったよ
いつか皆にバラしてやろうかな。笑