第二十話 シルフの無双、そして目覚め
シルフのステータスを見た皆は余りの強さにビックリしている…のだが、逆にシルフは捕まってからは長年にわたって石に封印されていたから年齢の割に自分は弱い方だと言う
その発言に更にビックリした俺たちだったが、実際700歳オーバーなのにこれくらいな訳がないと言われてみてから「あっ」って気付いた。笑
それからシルフに俺たちのステータスを見せて欲しいと言われ、躊躇しながらも見せてあげるとその弱さに逆にビックリさせてしまった
「皆はまだまだ弱過ぎるよ!もっと強くならないとレベルの高いダンジョンには近付けないよ?
僕が皆のレベル上げてあげるからついて来なよ!」
シルフにそう言われたのだが、俺たちはそれでは悪いから一緒に戦おうと言うが、気を失ってる三人を守ってあげなよ!と強く言われてしまい、何も言い返せなくなってシルフの好意に甘えさせてもらうこととなった
道を歩きながらシルフに俺たちが今までどうしていたのかと聞かれ、素直に剣も魔法なんかもないこの世界で独自の進化をしたこの国で過ごしていたと話した
地球というこの世界に、数日前の深夜にいきなり大地震が起きてダンジョンが家の地下に出来ていた事や家の地下のダンジョンを攻略し管理者となった事、他のダンジョンを回りながら物資を確保しに走り回ってた事、その時に春奈、真由美を父さん達が保護した事なども全て
「苦労してたんだねー。でも、それまでに築いてきたっていうこの世界独自の技術や文化ってゆうのには興味あるなぁ!
このダンジョンを潰したら家に帰ってゆっくり話を聞かせてよ!」
「あぁ、それは構わないよ。シルフみたいに強い仲間が出来るなら心強いしさ。あ、そういえばシルフは多分だけどこの地球とは違う世界で生きていたんだよな?」
「うん、そうだよ!オラリオンって名前の世界で生きてたけど、人族なんかはオラリオンとはまた違う名前で呼んでたなー、忘れたんだけど」
「はあ!?忘れちまったのかよ!笑」
光は思わずといった様子でツッコんだ
「まぁ何百年も石に入れられてボーッと過ごしていたからね…それより、皆って変わった服を着てるよね?それってこの世界の服だったりするのかな?」
「そうだな。流石に何百年も石に入れられてたら忘れちまうよな…
あと俺たちが着てる服はこの世界の普通の服だよ……あ、モンスターの部屋か?」
「そうみたいだね!僕は小さくて力がないからなかなか開けられないし康介が開けてよ!」
「あぁ、うん…でも本当に良いのか?」
「良いよ良いよ!そんなの気にしなくて
あ、それならお礼はこの世界の事、飲み物や食べ物の事を教えてよ!お腹空いてるから後で食べ物と飲み物もらえたら嬉しいなぁ!」
「ええ、それくらいならお易い御用だわ」
母さんが気前よく返事をする
「やったー!」
シルフははしゃぎしながら俺が開けた扉の隙間から部屋に入って行った
だが、やはり心配なのは皆も同じ様で、俺たちも部屋に入り手伝おうかとも思ったのだが、グリードの使う風の刃?のような魔法で部屋に居たオークの集団を簡単に次々に切り刻んで倒していく
いやいや……ヤバすぎでしょ!強ぇぇ!笑
シルフの圧倒的な強さに俺たちは呆然と立ち尽くしあっという間に戦いは終わり、俺たちのレベルが上がった
シルフは得意げな顔で「どう?どうだった?」と自慢げに言って光を挑発して、ムキになって光がシルフを追いかけ回すが捕まる様子がないので放置していたところに、逃げ回るのに飽きたシルフが食べ物と飲み物を要求してきたので、シルフが食事をする間に俺たちも一旦休憩をすることにした
「美味しい!何これ!?このスープ凄く美味しいよ!?」などとシルフは小さな体を目一杯使って母さんがスプーンで掬ったレトルトのたまごスープを飲んだりして頑張って食べている。
提供してあげた食事は概ね好評だったようだな
休憩も終わりマッピングしつつ全ての道や部屋を埋めていく
シルフのおかげでどんどん進んで行けるのが凄く助かる!
光が時々「シルフ無双だー!行けー!!」と言えばシルフもノリが良い奴なのか「おー!任せろー!!」とか言ってモンスターを次々と倒していっていた
俺たちが苦労して倒していたスライムもシルフと元気なグリードが魔法で軽く倒してくもんだから俺たちはその様子をただ眺めているしかなかった
こうして一気に討伐ペースが上がり、次の部屋へ皆で突撃したらまさかのボスの部屋だった!
俺たちは警戒しつつも伊藤家の三人を部屋の隅に運び、守る様に陣取っているとシルフが「レベル2のダンジョンなら楽勝だから気楽にしてて良いよ!」と言う
部屋の中央にある魔法陣から光が収まり、出てきたのは見た事もない3mはありそうな大きな熊だった!
見た事のないモンスターを見て警戒しないというのは無理な話なのだが、シルフの魔法が四足歩行で向かっていた熊の首を上下から風の刃となって襲いかかり、簡単に首を切り落とされて死んでしまった
俺は一人、シルフの元に向かい礼を言い、「ダンジョンコアはお前に譲ろうか?」と聞くが「要らないけど、康介達の拠点に部屋を作って住まわせて!」と頼まれた
うん、まあ答えはもちろんオッケーだよ。ただDPを貯めている最中だから少しの間は待ってもらうように頼んどいたけどね
その後、シルフは皆の元に飛んで行き俺はコアを回収した。今回は何があるかな……?
《ダンジョン攻略おめでとうございます。
皆様にはダンジョン管理者の初討伐にボーナス5000P差し上げます。そして、ダンジョン最速三つ目クリア5000P、連続クリア2000P、連続完全踏破1500P、通常クリア1000Pを報酬として合計14500ダンジョンポイントを差し上げます》
「マジか…いや、あの熊野郎が管理者って……まぁ、いいや。コアもらってくぞー」
母さんをこっちに来てもらい、熊とコアをアイテムボックスに回収しておいてもらう
気持ち悪がっていたが管理者らしい事を教えたら鑑定をしてアイテムボックスにしまっていた
名前か何か調べてたのかな?気になって聞いてみるとバウンドベアと言う種の熊らしい
変な名前だな…
シルフにバウンドベアを知ってるか聞くと「もちろん!もしかしてさっきの奴だった?」聞かれ肯定すると「バウンドベアは打撃には滅法強いんだけど斬撃には弱いからね。さっきの魔法の一撃で倒せたからそうじゃないかなとは思ってたよ!」とのことだった
他に熊系の種類がいるのか聞くと見た目が同じ様なのが何種類も…とだけ教えてもらった。そんな熊祭りはうんざりだよ!笑
それから皆のステータスを確認するとレベルが上がり、DP等の成果を喜んでいると、うるさくし過ぎたのか伊藤家の三人が目を覚ました
助かって良かったよ。これで人手がキープ出来る!
何気にこの寝てた三人も同行者として認識されてたらしくてちゃっかりレベルアップしてるんだよなー。笑
伊藤家の対応については皆に任せて俺は一人で気になる事を考えていた
それは先程シルフが倒した管理者のバウンドベアの事だ
奴の場合は一匹だったけど、俺たちの場合だったら管理者が八人居るんだよな……一人で何ポイント入るんだよ
もし数十人もの集団にでも狙われたりでもしたら怖ぇな…………
それにシルフに関しても完全に安心は出来ない
精霊だとしても良い精霊と悪い精霊は居るだろうし、シルフならある程度は一人でもなんとでも出来そうな気がするのに俺たちの家に行きたいと言う
こんな怪しい奴すぐに信用する人なんか皆の中には居ないよな?何人が俺と同じ考えてを持ってくれているのか少し不安だ…
それに避難所の皆を家に避難させてあげる計画も、だよな…
DPをもっと効率よく稼げる方法もあるのなら考えないとな…
チラリと皆をみると目を覚ました三人にエネルギーチャージのゼリーを飲ませてあげているのが見える
向こうが暫く談笑している間に今後の事を含めずっと考え込んでいたら不意に声をかけられた
「お…ちゃん?…ねえっ…ば!」
「あ…ん?美優か…どうかしたか?」
「もう、さっきからずっと呼んでたのに!」
「悪い、考え事してたよ。で、どうしたんだ?」
「伊藤さん達がこれ以上お世話になるのは悪いからって…別行動するって言ってて…」
「あぁ、予想通りか。別に良いよそれならそれで有り得る事だとは思ってたしな」
「えっ?兄ちゃん、良いのかよ!?」
「あぁ、折角父さん達が二人を保護して伊藤さんの家族を助けてあげたっていうのに……薄情な恩知らずは何処にでも居るからな。あらかじめ、それくらい予想するのは普通だろ」
「ま、待って!そう言う意味じゃなくて…」
佐々木さんが否定するかのように言葉を発するがシルフによって遮られてしまった
「僕も事情は一応全部聞いてたけどさ〜、ここまでお世話になっておいてそれはないんじゃないかなって思うよ?」
「恩は必ず返すって言ったよね!?何でそうなるの?
これ以上は悪いから私の家族は私たちで探してその後に借りを返しに行くって言ったんじゃない!」
「ん?佐々木さん、そうなの?それなら尚更、やっぱり俺たちと一緒の方が早いだろ?ダンジョンを攻略した今この場に居る全員はランキングに載るだろうしな」
「うん、そうだよ!それなのに何で早とちりするのよ…って、え?ラ、ランキング??なにそれ?」
伊藤さんは何がなんやらといった感じだな
「個人、又はパーティ単位でダンジョンを攻略した人…この、今の状況では俺たち全員だな。皆の情報は俺たちの家のようにコアを手に入れて拠点にしている人達はコアの機能の一つのランキングというもので個人情報が見れる様になってるんだよ」
「…じゃ…じゃあ……私達も…?」
伊藤さんがそう言う
「そうだよ。だから一緒に行動した方が良いって言ったんだ。
日本国内のダンジョンを攻略してる人、もしくは人達が居たら俺たちが今ダンジョンを攻略したこともその人達にはバレて後に狙われる可能性がある。
そんな人が悪人だとして狙われても良いのなら勝手にすれば良いんだけどね」
「康介、そんなの俺たちも知らなかったぞ?
いつそんな機能があるって知ったんだ?」
父さんは少し怒っているのか口調がいつもより乱暴な感じだな〜
「昨日、コアのレベルが5に上がって新しく増えた機能だよ。言ったら皆が混乱したり騒ぐと思って気を使って言わなかったんだけど、こうなったら言っておいた方が良いと判断して今言ったんだ」
「…ふふふ。康介は凄く頭が良いんだね。
ちゃんと自らの手札の使い方を分かってる。
凄いよ、だから僕は康介ならそんな事も考えてるだろうと思って別行動するのを止めて仲間に加わったんだけどね!」
シルフが笑みを浮かべながら俺に話しかけているが、そこで動ける様になった伊藤さんの父親が割り込むようにして、こちらに話しかけてきた
「まだ、全ての話を聞いた訳じゃないんだけど、君たちが僕たちを助けてくれたのは娘から聞いてるよ。だからお礼だけは言わせてくれ、ありがとう」
「いえ、こっちも伊藤さん達もお互いがお互いを利用しやすい環境を作っただけなので気にしないでください」
「り、利用する為に?」
伊藤さんは分かっていない様子で俺に声をかけてきた
「あぁ、伊藤さん達は親兄弟を助けたい。
でも、その為には信頼のおけるモンスターを倒せる人、もしくはその力が必要だったよね?それに対して俺たちは人手が欲しい。それも長期間で」
「ちょ、ちょっと待って!昨日一日で一体どこまで計画してたっていうの!?」
佐々木さんは何となく気付いたかな…?
「それでも別行動をとるっていうなら……他のダンジョンを拠点にしてる人達から狙われて敵対する様な勢力にDPを奪われる可能性があるんだし…残念だけど佐々木さん達をここで殺すよ」
「は?兄ちゃん!?何考えてんだよ!」
「いや、康介の考えは正しいよ!まさにその通りさ。
パーティに居たメンバーが殺されると敵勢力にDPが入るんだけどさ…康介、一体君は何処まで知っているのさ!?」
「ん?何も知らないよ。ただ予想して言ってるだけ。
そうなるのが俺たちにとって一番都合が悪いから常に最悪の事態は想定していないと不味いだろ?
例えばさっき言った様に佐々木さん達が殺される…その前にさ、こっちの情報を吐かせる…拘束して尋問でも拷問でもしてさ…特にシルフの情報は俺たちにとっては生命線で…死活問題にもなりうるしね」
「は、ははは…普通、単なる予想でそこまで想定して考えて動こうとするかい!?どれだけ慎重なのさ!?
やっぱり僕の選択は間違ってなかった!!
僕は君について行くよ!君がリーダーで居る限りここは安泰だね!!」
「………それならシルフも吐けよ?何か魂胆…考えがあって俺たちと一緒に居ることを選んだんだよな?本心で話さないと俺はお前を信用しないぞ?」
「うん、もちろんさ!君と二人で話せる時間がもらえるなら喜んで話すよ!!」
「二人でか…分かった。皆はどうするか考えといてね…別行動は無しで。嫌なら必ず殺すから。
恨むなら幾らでも恨んで良いけど、俺たちが居なかったら伊藤さんの家族は間違いなく助からなかっただろうね…」
俺は一言そう言い残してシルフと離れた場所へと移動した
さて……何が聞けるのか楽しみだ




