第十七話 避難所へ情報収集に行こう
翌朝まだ誰も起きてもいない早朝と言える様な時間…
俺はプリプリ怒っている魔法少女様に身体を引き摺られながら部屋を連れ出され、無理やり顔を洗わされた後に地上に向かって歩かされていた
何故こんな事になっているのかと言うと
昨夜、詩音ちゃんにおばさんとの会話の件を問い詰められた時、俺は疲れていたのもあって布団の中に入って逃げ切りを図ったのだが、限界で寝ようとしても後ろから抱きつかれたり、揺さぶられたりしていたんだ
そんなボーッとしている状態だから話しかけられても何も耳に入らなかった
どうもそれが無視していたんじやないかと勘違いして怒っているようなのだが、それぐらいの時に俺は寝落ちしてしまっていたらしい
その後、少しして詩音ちゃんも寝落ちしていたらしいが、少し前に起きて改めて怒りがこみ上げてきたらしい
んで、俺をたたき起こして今現在こうなってしまっているわけだ…うん……意味がわかねぇよ!!ちくしょう!
…………ズルズル…ズルズル…
「な、なぁ…詩音ちゃん、何処に向かってるの?」
「何処って…もう、康ちゃんの家がどうなったのか見に行くの。荒らされてどうなったか心配じゃないの?」
「あ、あぁ…昨日の連中か……アイツらって何処から来たんだろうな?この辺じゃ見た事がないから見当がつかないよ」
「え?そうなの?」
「うん、この辺に住んでる人ならほぼ全員の名前と顔は一致させられる自信はあるよ。
あ、母さんに鑑定してもらったら良かったかな」
「何で鑑定が必要なの?」
「顔は分からなくても名前は聞いた事がある人かもしれないからね。もしかしたらそれでどんな奴かとか分かるかもしれないし」
「…そんな人達まで調べてたの?」
「あ、地上に出たね…玄関は鍵をかけてあるだろうから庭から入ったのかな?…………うわっ…ガラス割られてリビングもめちゃくちゃだ…酷いな…」
「やっぱりこうゆう事する人って出てくるんだね…火事場泥棒か……最低だよね…」
「まぁ、ロクな物は残ってないから良いんだけどさ。
この家、どうにかならないかな?」
「どうにかって?」
「家の中にある小説とか漫画類は暇を潰せる物として必要だし、母さんのアイテムボックスで運んでもらいたいんだよな。で、アイテムボックスに必要のなくなった家自体を入れて何処かに捨てるかして廃棄処分したいんだよ」
「…え?……………家を…捨てるの?」
「ほら、地震の影響か分からないけどここの柱に軽いヒビもあるし、こうなってしまったら次の大きな地震で崩れるかもしれないしガラクタも同然だよ。
だから家を廃棄して新しくここに拠点みたいなのを作りたいんだ」
「あ、そうゆう意味だったんだ。確かに作れたら良いけど、難しいんじゃないかなぁ?」
「そりゃあ簡単じゃないだろうけどさ、DPで鉄筋やコンクリートも用意出来るのは分かってるから、俺たちと仲良く出来る仲間を集められたら造れる可能性はあると思うよ?」
「へぇ、凄い先まで考えてるんだね…」
「あ、本類は全部無事みたいだね。持ち運べる物だけで良いから運ぶの手伝ってもらえるかな?」
「うん、良いよ!」
ダンジョンの家に本を持って帰って、起きてきていた母さん達を見て康介が一つ気付いた。母さんに本屋に行ってもらって棚ごと本をアイテムボックスに入れて持って帰ってもらえば良いじゃんか!
母さん達に本を見せながら暇潰しに良いからと先程の考えを話したら「入ればね」だってさ…それくらいねじ込めよーーーーー!!
朝食作りを軽く手伝い、他の皆も起きてきたので食事中に皆で本屋の話をすると父さん達も以外と乗り気だったので、今日は父さんと母さんが本屋に、俺たちは情報収集を兼ねて避難所に行く事になった
グリードと子ゴブリンは留守番だな
早見家が住んでいたマンションの方向に歩いて、左折した先にある小学校がこの周辺地域の避難所だ
距離にして1.5㎞くらいなので早見家まで自転車で行き、早見さん達は自転車の鍵を部屋まで取りに行って自転車を回収する
出発前に母さんにグールになった賊を鑑定してもらい、メモ帳に名前を控えさせてもらったが誰も知らない人だった
まぁ、それは良いとしてこれで準備は完了だ
地上に上がり、前にも見た光景だなー。と思いながら車を見送り、俺たちも武器だけを隠し持って移動を開始する
何事もなく早見家のあるマンションに着き全員で部屋に行って鍵を回収してまた下に戻り、俺たちは外で待機している
そして自転車を押して出てきた時の三人の表情が何故か暗かったのが見てとれた
俺はある程度、事情を察しつつも何があったのか聞くとマンションの一部が崩れて瓦礫に潰されて人が一人死んでいたそうだ
落ち込む三人を励まし、落ち着かせてから自転車を押しながら歩いて避難所へ向かった
顔が潰れてしまっていて分からなかったのははたして救いだったのかそれは分からないが、どちらにしても三人にとってはショックだったろうな…
小学校に着くと校庭には人の姿が!警察や消防の他にも何人か居るのが見え、友人や知人を探しに来たことだけ伝えて体育館に向かった
入り口近くに自転車を停めて中に入ると何処を見ても人人人…あちこちが人で溢れかえって、とてもすぐに見つけられる状況ではなかったので避難者の名簿がボードに貼られているのを見てそれぞれが友人、知人の名前を探した
一時間以上の間、ボードに貼られた名簿から友人の名前や関係者の情報をメモに記入しながら確認をとっていたが、この避難所だけで13人が見つかった
隣の地域などの情報についてはまだ見れていないが、まだまだ多くの人が居るのだろう。後にこの人物達とも会って話を聞いてみたいと思う
一人目は俺の唯一の親友で小、中学時代の同級生で高校も同じ奴だ。家族ごとに仕切られた場所を確認しながら向かっていると、母さんの不倫相手の高橋のおっさんが居たのだが無視をした
何で?とは聞かないでくれ。ウチの家族を破壊しかねないゴミはどうでもいいんだよ
その高橋のオッサンのスペースのすぐ隣にそいつと家族は居た
俺が「永野ー」って声をかけるとバッ!って効果音が聞こえるんじゃないかってくらいの勢いで振り向き俺の顔を確認すると「加藤!」と声を大にして勢い良く抱きついて来た
だが、俺は野郎とハグをする趣味はないので
「チェンジでお願いします」と言ってやったら
「そりゃないよ!酷いな!」って言うけど、その顔は笑っていて、俺に気付いた永野の両親や弟君も無事を喜んでくれた
それから外の状況をどれくらい知っているのか等の質問をしたが、避難してからは表にほとんど出てないと分かって俺からの質問は終了し、次は永野一家からの質問が始まった
ダンジョンやモンスターの事なども永野の親や他の人に聞こえない様に慎重に話をして、証拠に玲奈ちゃんに持たせたボウガンをチラリと見せたり短剣を密かに持たせてやったり、ステータスを見せたりして何とか信じさせた
永野はそういうのが好きな奴だからコチラが真剣に話をすればちゃんと信じてくれる奴なのだ
そして、ダンジョン内に迎え入れる環境が整ったら必ず迎えに来る事を伝えて俺たちは次に行く
美優の同級生の佐藤さん一家四人
俺の中高の同級生と光の同級生の矢野兄弟…この二人の親は母は事故で既に亡くなっていて、父はあの地震当時は夜勤仕事で外に居るためまだ合流出来ていないとの事だった
そして、父さんの大学時代の同級生の木田さんと嫁さん、息子の三人
この三組にはウチの家族は無事で早見家を保護して一緒に家に居る事を伝えて安心させて迎え入れる準備が出来たら迎えに来ることを伝えてあげた
それから、他のボードに貼られてあった他の隣の地区の名簿を見に行き、メモをとって小学校を後にした
早見一家も見知った顔を見れたからか少し安心した様子で家に向かって自転車を漕いでいる
駐輪場の亡くなった人の事で落ち込んでいたがちょっとはマシになったのかな…?
家に帰り庭に自転車を停めて車庫に入るとまだ父さん達は帰って来ていなかった
とりあえず高橋のオッサンの無事は母さんに内緒にしておこうと俺は密かに決意した
皆で協力して家の中から本を袋に入れて持てるだけ持ってダンジョン内に帰り、本の整頓をしたりしてのんびりしていると父さん達が帰って来た
ん?誰?その人…???
父さんが俺と年の近そうな女の子二人を連れて来た
まさか誘拐か!?母さんが居ながら何してんだよ!?
「父さん、何誘拐なんかしてんだよ!母さんも何で止めなかったんだよ!?」と思わず怒って声を荒げてしまったんだが、どうやら本屋の中で隠れて避難していた子達を保護しただけだったようだ
「ま、そんな事だろうとは思ってたけど。笑
でも、父さん。その子達の寝る部屋はどうするの?」
「布団は余りがあるんだし、何とか部屋を増やせないか?」
「んー…元からその為にDP貯めてるんだからそれは良いんだけどさ、二人は良いの?佐々木 春奈さんともう一人の謎の美少女さん」
「…え?私の事を知ってるんですか!?」
佐々木 春奈と名前を呼ばれた少女はビックリした様子で俺に質問してきた
「まあ、同じ学校の同級生だからな。高校が同じ人間の情報なら入学後、約一ヶ月で全部頭の中に入れたよ。
佐々木さん、入学五日目に普通科の三年の後藤って人に告白されてたろ?あの人、結構な悪人だから断って正解だったよ。
ま、その話はいいや。とりあえず俺は加藤 康介で、この二人が俺の妹の美優と弟の光ね」
「あんた…帰宅部で暇だからって入学して一ヶ月で全校生徒の情報なんか集めてんじゃないわよ…」
母さんに秘密にしていた情報を少し公開しただけなのに呆れられたよ
「あ、あの…私は春菜と中学時代の同級生で伊藤 真由美と言います。よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。康介君は昔から情報収集が趣味の変わった子だけど、基本的には良い子だから仲良くしといて損はないわよ?
それで、私たち三人は加藤さん一家と家族ぐるみで仲良くさせてもらってる早見で、この子達の母の理沙よ。よろしくね」
「康介くんの彼女の詩音です。よろしくお願いします」
「私は玲奈です。よろしくお願いします!」
「「はい、よろしくお願いします」」
早見家の三人に向き合う形で伊藤さん、佐々木さんも挨拶している
「父さん、母さん。二人にダンジョンやモンスターの事ってどれくらい話してるの?」
「もう、ある程度の事は話してるわよ。あなた、後は何か話して無いこととかあったかしら?」
「んー………コアの事くらいだけど、アレは簡単に教えれる物じゃないからな…」
「なるほど、分かった。あと母さん、二人を鑑定した?」
「え?してないわよ?」
「鑑定する癖をつけてって言っといたのに…ハァ…とりあえず今から鑑定してみて」
「……分かったわよ……………んん……二人ともレベルも1だし、何も無いわよ?」
「なら良いよ。母さん、ダンジョンコアの重要性は説明したよね?この二人がもし、アイテムボックスに武器や魔道具を隠し持ってここまで侵入してから隙を見て襲って来られたりでもしたら下手をすればこっちに死人が出てたよ?少しは警戒心と危機管理しっかりしてほしいな」
「わ、分かったわ。ごめんね…」
俺と母さんのやり取りを見ていた二人に父さんが声をかける
「まぁ見て聞いての通り、康介はウチのリーダーでブレーンみたいな存在だから、こいつから必要な事は聞いてくれたら良いよ」
「「はい。分かりました」」
「今DPは余り使い過ぎたくないから二人は同じ部屋で良いかな?」
「あ、うん。安全な所で休めるなら」
佐々木さんはホッとした様子で答えた
「なら部屋の広さは少し狭いけど、寝るだけなんだし六畳ので良いか…確か350Pだったよな…じゃあ部屋作ってくるからこのリビングで待ってて、あと二人の布団の準備は誰かよろしくー」
こうして予期せぬ女の子二人を加えてこれから少しずつ活発に動いていく事になる一行だった




