第十三話 嫌な奴ってどこから湧いてきてるんだろ?
ダンジョンコアのあった部屋から地上に戻ってる最中…本来ならクリアされたダンジョンではモンスターは出なくなると地下倉庫ダンジョンのコアから俺は聞いていたし、皆にも教えておいたから全員信じていた
……なのに何だこれは?
ここは二階層に降りた所にある始めの部屋
「何でこんな所にまだスライムが居るんだよ…意味が分からない」
「とりあえず…倒す?」
「グリード、お願い出来る?」
「わふっ!グルルルルゥ!わんっ!」
詩音ちゃんの呟きを聞いた美優がグリードに振る
「ギキャキャッ」
子ゴブリンが笑ってる?いや、何言ってんのこの子
とりあえず子ゴブリンはほっといて、グリードに魔導石を真っ二つにしてもらいスライムは死んだけど、まだ謎がある
このスライムの存在だ
誰かがテイムしたのか天然物なのか
誰かがテイムしたものなら面倒だな、揉めたらどうしよう……知らぬ存ぜぬで通すか…
魔導石は割れてても燃料としては使えるので母さん達に回収してもらい階段を上がって来た道を戻っているとグリードが何者かの匂いを察知したのか「グルルルルッ」と唸り始める
え、まだ何かあるの?
俺たちは静かに部屋の出口の影で様子を見ていると男が四人、あちこち擦り傷なんかをを負った状態で部屋に入って来るなり地べたに座り込んだ
どうやら休憩するようだな…
観察していたその時、俺の目が一人の人物を捉える!
中学の時、俺とめちゃくちゃ仲が悪かった会田だ…!
もう一人の奴も知ってる。会田とよくつるんでる原田だな
他二名は知らない。高校で知り合った奴らだろうか?
高校は別々になったから会う事もなかったのに何でこんな所に居るんだ?
俺は後ろを向き、皆に静かに武器を出して戦闘用意をするように伝え、また四人の様子を観察し始めた
「くそっ、前の部屋でもだったけど何で急にモンスターが出なくなったんだ!?」
会田はイライラしている様だな…
「んー、何か異常でも起きたのかもな?」
「訳わかんねぇな。やっぱこんな所に入るんじゃなかったなー」
誰か分からない奴が原田と会話をしている
「なんでだよ!あんな風に道を塞いでいたら誰だって気になるだろー?」
「でも、あの…ゴブリンだっけ?初っ端からあんな大群で襲って来たりしやがって、ほんとビックリしたよなー。マジであちこち痛いし疲れた!」
会田の質問を受けたもう一人の知らない奴が一番怪我が酷いのか、しんどそうに寝転がった
「とりあえず、もう少し探索したら加藤の家に襲撃しに行くぞ。アイツの家の人間は誰も避難所に居なかったからな、絶対に家に居るハズだ」
「だな、アイツは絶対に殺す!」
…会田と原田が急に物騒な事を言い出しやがった!?
「なぁ、一体そいつの何にそんなにムカついてんのか知らないけど、いい加減に理由ぐらい教えろよ?」
「あ?……あぁアイツ、中3の二学期の時に俺たちが影でタバコ吸ったり、喧嘩したりしてんのを全部学校にチクリやがったんだよ。それで高校の推薦の話が無くなって、俺達は親からめちゃくちゃ怒られたんだよ!!」
会田は昔を思い出す様に話していたが次第にムカついてきたのか言葉遣いが荒くなり、怒鳴り散らした
「それ、お前らの方が悪いだけなんじゃねえの?」
「確かにそうだけど…受験の大事な時期に……あの野郎!」
今度は原田が声を荒らげる
「ふーん。で、もとはどっちがちょっかい出してたりしてたんだよ?」
「あ?会田だよ、何か気に入らねえとかでちょっかい出してた。……あ、思い出した。テストの点数だ。全教科アイツに負けてたからだ!」
「なら、ただの逆恨み確定じゃん。笑」
謎の少年Aの質問に原田が笑いながら答えると謎の少年Bが釣られて笑いながら会田を見て言った
「うっせえんだよ!くそっ!絶対アイツぶっ殺してやる!」
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会田達が部屋で座り込み休憩を始めた頃、影からその様子を見ていた康介は隠れながらコソコソと会話をしだした
「お兄ちゃん、何してるの。笑」
「てか会田の奴、中三の初めの頃にお前に告白してお前、アイツの事フッただろ。笑」
「あなた達、二人が原因なんじゃない?苦笑」
美優と俺の会話に母さんが割って入ってきた
「あ、母さん、アイツ等のステータス見れる?」
「うん、見れるけど……あぁ…四人ともレベル四ね」
母さんから鑑定の結果を聞いてホッとしながら俺は言葉を続けた
「なら無視しといて、手を出して来たらやり返すって事で。笑」
「中途半端にやり返して止めると思うか?ああゆう奴らは徹底的にやらないと駄目だろ…!」
父さんは何故か怒ってる…
「マジかよ…平和が第一の平凡なオッサンに俺の本心を先に言われた……」
「ねぇ、どうするの?本当にやるの?」
「やるにしても、向こうから手を出して来てからよね?」
母さんは早見おばさんとコチラも物騒な事を言いだした
「もちろんそのつもりです。てゆうか、ダンジョンの中なら殺してモンスターの責任にすれば良いかと。どうせこのダンジョンはもうすぐ無くなるんだし」
「そうなのか?」
「言い忘れてたけど、管理者としてダンジョンを既に保有してる俺たちが新たなダンジョンを保有しようとしても出来ないんだ。で、その場合はダンジョンは潰れてなくなるってわけ」
俺の呟きに光が質問してきたのでそう答えてやった
「そうだったのか…なら彼らには悪いけど、家族に害を与えようとする奴らを許す訳にはいかないし殺さないとな」
父さんが遂にハッキリと殺す発言をし、俺は思わずポーカーフェイスが崩れる程ビックリした
え、嘘でしょ…そこまで!?
まあ別に良いんだけどさ…
「康ちゃんを殺そうとするなんて許せないよ…私も戦うんだから」
詩音ちゃん!?いやいやいや!ちょっと落ち着こうか!?
美少女がそんな怖い事を言ったらダメだよ!?
「私たちを助けてくれた優しい康介君達にちょっかい出そうとするなら私も彼らを許せないわね……切り刻んじゃおうかしら」
あ、早見おばさんまで……もう無理だわ…この人たち…闇だ…闇のオーラが見える
もう俺は知らない…何も知らないぞ…
こうして急遽、会田達との戦闘がほぼ確定したのだった
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静かに立ち上がった俺たちは段取りの確認を終え、部屋に何も知らないテイでのんびりとした様子で歩いて部屋に入って行った
「あ?俺らより前に入った先客がいたのか?」
「ん?あっ!加藤っ!!」
謎の少年Aのボヤキに会田が即座に反応した
「……ん?…あー、会田か。久し振りに見たな」
「お前…何でこんな所に居やがる!?」
原田は普通にビックリしているだけだな
「コイツが加藤か…何か普通だな」
「あぁ、中三の時に会田が告白してフッた妹の兄貴だよ」
謎の少年Bの一言に俺は会田の恥ずかしい過去をバラしてやりながら答えた
「なっ!?」
会田は何故知っている!?みたいな顔でビックリして声をあげた
「妹がリビングで読んですぐにゴミ箱に捨ててた手紙なら今も家の俺の部屋のファイルに挟んであるぞ?
それと手紙の内容が写真に撮られて、数時間後にネットに流れてたろ?あれは俺の弟の裏アカウントだ。笑
いやー、後日あんなにクラスの連中からかわれるとは思ってなかったよ。悪かったな」
俺は詫び入れる様に言葉をかけるが、そこに反省の色はない。笑
「兄ちゃん!人のアカウントで何してんだよ!?」
…光は煩いから黙ってろ。笑
「康介君、凄い事するわね。苦笑」
早見おばさんは苦笑いを浮かべながら呆れてる…
「因みに美優の好きな人が誰かも一応知ってるけど、今はどうでもいいかな。で、会田。告白する前から既にフラれてた感想は?」
「て、てめぇ…ぶっ殺す…!」
あ、会田がとうとうブチギレしたみたいだ。笑
持って来ていたナイフと鉄パイプを持って立ち上がったので、俺も鉄の剣を抜いて構えるか
「…あ?何だそりゃあ?」
「お前達には関係ないよ」
会田の質問に父さんが答える
「そんな盾や武器、何処で手に入れやがった!?」
「教えてやる必要性がないな」ニヤリ
謎の少年Bは警戒を強めながら俺に言ってくるが、俺達に教えてやるつもりは毛頭ない
「ならお前らから奪ってやるよっ!……オラァ!」
あー…原田が父さんに鉄パイプ持って殴りかかってった…アイツ死んだなー
ガンッ!……グサッ!…原田が振り下ろした鉄パイプを父さんが大盾で防ぎ、踏み込んでいた会田の左足を短槍で突き刺した
さて、俺らもやるかなー
会田達との殺し合いは一方的なもので、一分程で呆気なく終了した
それから俺たちはダンジョンがいつ崩れるのか分からないので軽く駆け足で地上に駆け上がって行く
皆がダンジョンを出た直後にガタガタグラグラと足元から振動が起きて、急いで離れると次第にダンジョンが入り口から崩れて道が元に戻っていくのを見届けた
こうやってダンジョンが崩れていくのか…っと
時間がきたら崩れるのか、誰も居なくなってから崩れるのかも分からないし帰ったらコアに聞いてみるかな
月に照らされた夜道を喋りながら、のんびり歩いて時折遭遇するモンスターを倒す
暗闇を歩いていたら自然に目が慣れてくるよね
っと、家に着いた俺たちは先に家の中に入り、リビングのローテーブルとソファを母さんのアイテムボックスに入れてもらって拠点に帰った頃には子ゴブリンは爆睡していやがった
俺も眠いよ…おやすみパ〇ラッシュ……いや、グリード…




