第十二話 ダンジョン+戦い=嫌な奴って何処にでも居るよね
昼飯を済ませた後、あの道路を塞いでいダンジョンへ皆で行ってみることにした
少し離れてはいるけど、1キロ程度なのであまり問題もない
時折、ネズミやゴブリンとの戦闘も多少はあったが数も少なかったので全員無傷で辿り着いた
他のダンジョンがどんなものか全く分からないので盾役に父さんと罠探知に光、モンスター警戒にウインドウルフの二人と一匹に先頭を歩いてもらい階段を降りて行く
その後ろに俺と美優に母さん、後衛に早見おばさん、詩音ちゃん、玲奈ちゃんが続く形だ
通路は一本道でまっすぐ進むと扉が現れた
ここまでは同じだな
扉にバールをかまして引いて開ける
今回はネズミではなくゴブリンの集団だった
皆で交代しながら倒して部屋に入るが部屋の中は何も無し。
これも普通だ
部屋を出て通路をまっすぐ進むと左右に通路が別れたT字路に来て、右に進みまた部屋があった
今度はコボルトが出たが武器を持っていないので危なげなく倒してここでも魔導石を回収しながら部屋に入ると宝箱を見つけた
そして前回同様に光が突っ走って開けようとするが宝箱に触れる直前で踏みとどまった。ん?何かあったのか?そう思って行ってみると罠があるらしい
やっぱり罠解除のスキルを習得させておいて良かった。笑
盗賊セットを取り出してカチャカチャしてたらガチャッと開いたような音がして光が箱を開けるとマットの上に置かれた状態で、全身薄い毛が生えた何かの赤ちゃんが見つかり、母さんに鑑定してもらうとゴブリンの赤ちゃんだと分かった
とりあえずコイツはテイマーである妹の美優に任せることにした。使い道があるのか知らないけど。笑
部屋を出て道を戻ったら逆の道を進んでみる
道なりに300mほど進んだ所にまた部屋が…ゴブリンの団体様を地獄にご案内してさしあげ、何も無い部屋を抜けて先を行く
……こんな事を何度も繰り返して先を行くと下に降りる階段が現れた
ここまではネズミとゴブリン、コボルトのみ
こちらの道は一本道だったので迷ってもいない
とにかく行ける所まで行ってみようって話になって階段を降りる
そういえば美優にテイムさせたウインドウルフだが、やっと名前が決まった。グリードだ
弟の光が譲らなかった。笑
オスだからカッコいい名前にしてやれと、自分みたいな可哀想な名前にするなと
それを聞いた俺以外の皆は何も言えなくなった
俺か?俺は笑いを堪えるので必死でそれどころじゃなかったよ
ゴブリンの赤ん坊もオスだがまだ名前は決まってない。
一旦、玲奈ちゃんに預かってもらって面倒を見てもらう
コイツらはまだレベルも低いので安全に俺達が弱らせてから狩りを行わせてゆっくり育てている
そうこうしてるうちに二階層の最初の部屋に着いた。
何が出るのやら…あ、ゴブリンか
面白みもないのでサクサク終わらせて先へ…暫く進み次の部屋に着いた
今度はオークだ。武器を持ってなくても頑丈なうえ数が多いのでかなりの時間を費やして倒しきった
バールも一つダメになったし扉を抑えておくのも一苦労で肩で息をするくらい疲れ休憩を挟んだりしながら進んだ
先に進むにつれてゴブリンとオークが入り交じった部屋、コボルトとオークの部屋などモンスターの数がめちゃくちゃ多くなってかなり疲れた
だが、それらの部屋で宝箱が見つかりポーション、解毒薬と言う名の緑色の謎液体も手に入った
これもうゲームの世界じゃん。笑
解毒薬があるくらいだから毒を使うモンスターとかもやっぱり出て来るんだろうなぁ。憂鬱だが自らに気合いを注入し先へ進む
途中で何度か分かれ道がありながらもどんどん進んだ
そして部屋へ着き扉を少し開けるとRPGの定番であるスライムが出た!
幾ら攻撃を仕掛けてもコイツらには打撃も斬撃も一切通用しないし、美優のテイムも出来ない!
どうしたものかと思ったが唯一、詩音ちゃんのイグニッションという火魔法だけが有効だったのだが、まだまだ火力不足で火の勢いも弱く小さなファイヤーボール(卓球のピンポン玉)くらいの炎しか飛ばせなかった
それでも詩音ちゃんは休みながら頑張って2匹を倒してくれた。偉いぞ!詩音ちゃん頑張れ!!
だが、俺の心の中の応援も虚しく詩音ちゃんの魔力が尽きてしまったようだ
「…はぁはぁ…ごめんなさい」
「いや、詩音ちゃんはよく頑張ってくれたよ」
「そうだよ!私たち何も出来なかったもん」
「くぅん…」スリスリ…
美優とグリードも慰めている
どうにか出来ないものかと考えていたら母さんがじっとコチラを見ていた。
「母さん、どうかしたの?」
「うん…グリードのステータスに風魔法があるみたいなんだけど、どうかな?って思って…」
「えっ!?」
母さんの一言で俺は思わずビックリして声をあげてしまった
「グリード、出来るの?」
「わふ?わんっ!」
美優の質問に吠えて返事をしたグリードが扉の隙間の前に立ち、「グルルルルゥッ!…わんっ!!」と唸り、吠えると見えない何かが隙間から襲いかかろうとするスライムの中にある黒く光る魔導石をスライムごと切り裂き、真っ二つにした!
「おぉ!すげえなグリード!!」
光の賞賛を受けながらグリードは気分良さげに攻撃の痕跡を見るにウインドカッターの様な風魔法?を行使し次々とスライムを倒していく
スライムだから変形して隙間から無理矢理出て来るかと思って身構えていたけど、そこまで柔らかくはないみたいだな。…はぁ、助かった…
グリードがスライムを倒し終わって中に入ると真ん中に魔法陣があって、奥にはやはり…台座がありダンジョンコアが置かれていた
これからボスなんだな…って待て!連戦かよ!?
チッ!休憩は挟んでいるけど、みんな消耗しているし先程の戦闘で頑張ってくれた詩音ちゃんとグリードには休ませてあげたい…!
俺は皆にその事を伝え、七人で魔法陣に近付いた
いよいよ魔法陣が光始め、家の地下倉庫ダンジョンで戦ったオークよりも一回り大きい影が現れた!
その瞬間、俺たちは危険を感じ、散らばって囲みつつ攻撃を加えたが、いずれも「ガァン!」という音と共に弾かれてしまう
「どれだけ堅いんだよ!」
と悪態をつく光が背後から再度攻撃を仕掛けようとしたのだが、その様子が見えた俺は咄嗟に「関節を狙え!」と光に向けて言い放った
応答がなかったので聞こえていたのか、ちゃんと狙ったのかそうじゃないのかは分からないが膝裏を勢い良く切り裂いた!
「ぐがぁっ!?」
おっ!効いてるじゃん!
正面に陣取る父さん達も何処を狙うべきか理解したようで、それぞれがなんとか動きを合わせようと素人なりに攻撃を繰り返す
謎のモンスターも反撃しようと片手に持った剣を振り回し暴れ狂う…完全に怒ってしまっているようだ
怖いねー。っとここで漸く光が収束し見えてきたのは…鎧を着た大きなゴブリン?だった!
兜の下から見える顔がまるっきりゴブリンなんだけど、この2m前後はありそうな大きさは何だ!?
盾無しの片手剣を使う長身の筋肉ムキムキのゴブリン……あぁ、ゴブリン将軍?か。笑
通用するのか分からないが一か八か罠魔法使ってみようかな……康介は牽制するような動きをしつつ悩んだ末、ゴブリン将軍から少し距離を置き皆へ向けて「少し時間を稼いで!」と言い放ち将軍様の足元に落し穴の魔法を放った
直後、ゴブリン将軍(仮)の左足を中心に穴が広がり陥れる事に成功するが、まだ上手く使いこなせる訳ではなかった
それでも片足が穴に落ちてバランスを崩したゴブリン将軍(仮)に追い打ちをかけるように一斉に攻撃を仕掛け、早見おばさんの包丁が横から首を捉えて一気に出血の量が増えた!
「ぐががっ!!」
おぉ!効いてる!
フラつきながらも父さんに攻撃を仕掛けようとした将軍様に俺たちが周りから攻撃をし、中途半端になった剣の一撃は父さんのシールドバッシュで無理矢理押し込まれる!
そこに早見おばさんが傷付けた場所へ父さんが短槍を突き立てた
「ぐっ……が……ががっ…………」バタンッ!
どうなったか母さんに鑑定して見てもらうと死んでいた
それと名前はゴブリンナイトだった…将軍扱いしてゴメンね?
詩音ちゃん達の居る所まで戻った俺たちは座り込み、一旦休憩をする事にした
「康ちゃん大丈夫だった?」
「ん?うん、大丈夫だよ。
詩音ちゃんはしっかり休めた?」
詩音ちゃんに心配そうに声をかけられて返事を返す
「うん、ありがとう」
「グリードもゆっくり休めたかな?」
「わふっ!くぅんくぅん…」スリスリ…
美優もグリードに声をかけながらモフモフしてる…羨ましいな…
「オークよりは大きかったけど、オークが集団で出てきた時よりは平気だったな」
「そうですね、でも、鎧が邪魔で凄く堅かったですね」
父さんの呟きに早見おばさんが疲れた表情で返している
「今後、あんな鎧?を着てるモンスターの場合は隙間や関節なんかを狙って攻撃していきましょ」
「うん、それと一休みしたらあのゴブリンの武器、鎧、魔導石を回収しようか。コアを操作して売ればDPになるし…」
休憩が終わる頃には時刻は既に夕方を過ぎ、夜になろうとしているくらいだった
ダンジョンに潜っていたら時計をこまめにチェックしとかないと時間が分からないな…
ダンジョンを踏破する為に今日は夜更かしして明日の活動を午後から行うことにした
「あ、そういえば父さん。ホームセンターで見かけたあのゴブリンより、今戦った奴の方が大きかったよね?」
「あ…あぁ!確かに!!ということは皆で戦えばあれにも勝てるよな!?」
「ん…多分ね。あのゴブリンの上位種が今戦った奴なんだろうな…先にあっちをやれば良かったかも」
「ははは、今更じゃん!」
「うっせー…はぁ…疲れた…」
父さんと俺の会話を聞いていた光が笑いながらそんな事を言う
そして、休憩も終わりゴブリンナイトの剥ぎ取りを終え、グリードに餌として食べさせてあげてる間に康介達はコアの元に
「これはどうすれば良いんだ?」
「昨日、コアからやり方は聞いてるから問題ないよ。簡単だし教えるから皆も見てて」
そう言って、晴夫の質問に答えながら康介はコアに触れる
《ダンジョン攻略おめでとうございます。
わたしはこのダンジョン管理者のコアです。
加藤家、早見家ご一行様にはダンジョン最速二つ目クリア5000P、連続クリア2000P、連続完全踏破1500P、通常クリア1000Pを報酬として合計9500ダンジョンポイントを差し上げます》
「アザース。笑
んじゃ、コアは持って帰りますね〜」
《かしこまりました》
「てな訳で母さん、これアイテムボックスに入れておいて」
「え、これだけなの?」
俺が母さんにコアを渡していると詩音ちゃんからそんな質問がきた
「あぁ、ボスを倒してコアに触れたらさっきのアナウンスみたいなのが流れるから聞き終えたら取って帰って良いらしいよ。それじゃあ帰ろうか」




