少年はいつもD9→G7
少年の日の思い出は、青に彩られている。
抜けるような、どこまでも続く青空、そしてぽかり浮かぶ白い雲。
一瞬の暗闇から解き放たれたのなら、思い切って走り出すんだ、やなことがあったって。
頭の中の、どうにもならないもやもやとかも、全部踏みつけて、叩き壊して、とにかく前へ、先へ。
奈落に引きずり込もうとするような性悪な穴なんか、思い切り助走をつけて軽々と跳び越えてやるんだ、くらいの意気で。
先に何があるなんて分からなかった。でも分からないからこそ、その時の僕は、毎日毎日、何回も失敗を繰り返しながら、少しづつ前に、未来へ進もうとしていたのかも知れない。
大人になってからは、忙殺のあまり日々をただ回していくことだけを考えて、久しく忘れていたその感覚が、ふとしたことで呼び覚まされた。
仕事のミスでへこんで、部屋で高アルチューハイをかっ喰らった挙句の僕が、何気なくダウンロードしたアプリの画面が、目に刺し込むようにして、語り掛けてきたような気がした。
失敗を恐れるな、最初からスタートしても、全然いいじゃあないか。失敗しても何でも、とにかく前に、先に進め、みたいに。
時が経っても変わらない青さの「1-1」は、大人の僕にも、あの時の感情を沸き抱かせてくる。
(終)