表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇〇  作者: コノア
2/2

止まれない子

彼女と生まれた場所は同じだった。少しの間話していたら、一歩進んだ。勝手に。訳がわからなくて、15離れたときに僕はこっそり泣いた。知らないことが怖かった。そういえば自分のことを何も知らない。

「だいじょうぶ?」

突然声がした。声の持ち主は見当たらなかった。耳がおかしくなったのかなと思った。そう思ってから、また泣いていた。

「泣き止んで」

と、また声がした。鼻をすするタイミングだったから、顔を上げていた。だから少しだけ、姿が見えた、気がした。一瞬だったから見間違いかもしれない。次に来るときに見逃さないように、泣き止んで、よく見ることにした。

「やっとね」

と声が、姿とともに一瞬聞こえた。でもすぐに見えなくなった。次も、その次もこんな調子だった。次にきたとき、僕は

「なんですぐ消えてしまうんだい?」

と早口で言ってみた。一瞬だけ姿の見える彼女に聞こえるように。一歩進んだ。次に来たときに一瞬の彼女はこう答えた。

「止まれないの」

僕と同じだと思った。僕も、ゆっくりではあるけど止まれなかった。理由を知っているのかなと思って

「なぜ、止まれないの?」

と聞いた。一歩進んだ。

「そうなっているからよ」

と一瞬の彼女は言った。ぽつぽつと会話を繰り返していると、始めに出会った彼女にまた出会った。

「また会ったね」

と声をかけた。始めの彼女は突然話しかけられてびっくりした様子だったけど、すぐにうれしそうに

「また会ったわね、うれしいわ」

と言って微笑んだ。始めの彼女に

「君は止まれるのかい?」

と問うた。彼女は少しでも考えてから

「今まで考えたことなかったわ。私はずっと、走り続けていたし、そうしたかったから。でも、そうね…止まれないわ。」

と言った。僕は驚いた。「止まらないでいたい」という始めの彼女の考え方は、僕には無かった。そういう考え方もあるのかと、僕は何かを飲み込んだ感じがした。一歩進んだ。


僕はなぜ止まりたいと思ったのだろう。皆目、見当がつかなかった。そういえば、と思って

「君は止まりたいの?」

と、一瞬の彼女に聞いた。一歩進んだ。一瞬の彼女は次に来たときに

「止まりたくない」一歩進んで「走っているのは」一歩進んで「好きだから」

と言った。ますます分からなくなった。止まりたいと、なぜ思っていたのか。でも、一人でよく考えて気がついた。理由なんて要らないって。思うのに理由なんて要らないんじゃないかなと思い始めた。だって、分からなかったから。思った僕自身に分からないなら、理由なんて無いんだ。理由がないのに思えるなら、理由は必要ない。そう思ってスッキリした。一歩進んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ