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悪魔☆道具  作者: 東導 号 
全てを映す魔鏡編
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第3話「法外な要求」

堅い決意を表明したオリヴィアではあったが、すぐに表情が曇る。

 

「ですが、もしも遺産の分配を断れば……デボラ一家は王都中に父の不誠実さ、私の非道さ、ベルジェ商会が信用ならない店等、言いふらすと宣言しています」


 デボラ一家は、オリヴィアがもし官憲に訴えても、世論を味方につける計算をしているのだろう。

 一歩間違えば恐喝になりかねないが、上手く行けば莫大な予算とベルジェ商会へ経営者として食い込めるのだから。


 しかし、バルバの表情は全く変わらない。

 面倒臭そうに、また鼻を大きく鳴らす。


「ふん! お前の話など、所詮は痴話喧嘩だ。本来俺が受けるべき案件ではない。しかし……」


「しかし?」


「オリヴィア、お前は運が良い」


「運が良い……とは?」


「うむ! 丁度手に入った魔道具がある。今回の問題解決にぴったりだ。だから俺は試しても良いと思っている……但し、売りはしない。単に貸すだけだ」


「このお店の魔道具を……私に貸して頂けるのですか?」


「ああ、貸そう。念の為に言っておくが、貸し出し料は高いぞ」


「貸し出し料が? た、高い? それは、いかほどでしょう?」


「金貨1,000枚」


「え? き、き、金貨1,000枚ですか!?」

 

 金貨1,000枚!?


 オリヴィアは絶句した。

 王都の一般的な市民、一家4人が3年は楽に生活出来る金額である。

 バルバが魔道具使用の代金として提示した金額は、オリヴィアにとって超が付く法外とも思えるものであった。


 バルバは唖然としたオリヴィアへ、決断を迫る。

 結構、せっかちな性格のようだ。


「選べ! この放浪ストレイアラの魔道具を使うのか、使わないのか……俺はどちらでも構わないがな」


 オリヴィアは一瞬考えた。

 改めて考えても、金貨1,000枚はとんでもない大金だ。

 それも魔道具を買うのではない、単に借りるだけなのに。

 商会があげる利益で考えたら、絶対割に合わない。


 しかし現実問題として、オリヴィアに選択肢はなかった。

 上手く『事』を収める為には、もう打つ手がないからだ。


 何故、オリヴィアがそのような大金を使っても良いと決心したのか……

 理由は、はっきりしていた。

 夢で見た店が、こうして現実にあったからである。

 

 そのような不思議な店へ、今、自分が来ていた。

 これはもう奇跡というか、運命だと断言しても良かった。

 ここへ来た自分の直感を、信じてみたくなったのだ。

 商売をしていて、求められる一世一代の決断に近いものがあると、オリヴィアは感じたのである。


「……わ、分かりました。ちゃんと解決するのなら、金貨1,000枚お支払いします。でも具体的には、どのようになさるおつもりですか?」


「それは後のお楽しみだ」


「後のって……」


「それと、支払いは成功報酬で良い」


 へ? という顔をオリヴィアはする。

 とても……意外であった。

 魔道具に関する詳しい説明がなくて、やはり怪しいと思ったのも束の間……

 成功報酬という、バルバの申し出がである。

 

 オリヴィアの経験上、商取引は信頼が全て。

 特に代金の回収は、はっきり条件を付ける事が多い。

 この店において、オリヴィアは初見の客である。

 そんな場合商人は、信頼のない客の『踏み倒し』を避ける為に、支払いは大概が前払いを求めるものなのだ。


 拍子抜けしたオリヴィアは、再度バルバへ尋ねてしまう。


「え? 成功報酬で? 良いのですか?」


「構わない。客には俺の魔道具の効果を満足させた上で、対価をきっちり払って貰うからだ」


「…………」


 バルバという男が、オリヴィアには分からなくなって行く。

 父を手伝う事から始めて、商売の経験は10年以上ある。

 だが、このような不可解な男は、取引した商人には居なかった。


 呆然としていると、バルバが口を開く。

 何か、大事な事を告げて来る予感がする。

 

「オリヴィア……念の為に伝えておく」


「な、何でしょうか?」


「この店でのやりとりは厳秘だ……家族や友人、使用人と言えど口外したら許さぬ」


 バルバの口調は有無を言わさぬものであったが……

 商人であるオリヴィアに、さして抵抗はなかった。

 大事な契約であればあるほど、内容の露見は避ける為に、守秘義務を負う事は当たり前だからだ。


「わ、分かりました」


「それがこの店のルールだ。当然、俺も客のプライバシーをしっかり守る。お前が万が一口外したら……」


「口外したら……」


「呪われる……そして死ぬ」


 とんでもない事を、きっぱり言い放つバルバ。

 オリヴィアは、ぞっとした。

 約束を破ったら容赦しないという、バルバからの気配を感じたからだ。

 呪うとか、死ぬとか……果たして魔法か、呪法を使うのか、方法は意味不明だが、バルバは絶対に実行するのだろう。


 畏怖するオリヴィアを見つめる、バルバのダークブラウンの瞳は、玻璃のように澄んでいて何の感情も籠っていなかったのである。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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