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悪魔☆道具  作者: 東導 号 
望んだ恋敵編
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第7話「予想外な対価」

 フレデリカが、バルバへ依頼をした1週間後……


 王都にある魔道具の店『放浪ストレイアラ』の店内では、またもバルバとツェツィリア、そしてフレデリカが座って話をしていた。

 バルバとツェツィリアはいつもと変わらない表情、フレデリカは満面の笑みを浮かべている。


「バルバ! あ、ありがとうっ! 婚約者のコスティから緊急の魔法鳩便で手紙が来たのよ」


「ほう、手紙か? その笑顔は上手く行ったという感じだな」


「ええ! コスティの奴、私との婚約を破棄したいって」


 フレデリカは、拳を思いっ切り上へ突き上げた。

 誰が見ても、すぐに分かる。

 最高ともいえる、歓喜のポーズと言って良い。


 バルバも楽しそうに笑う。

 仕事がバッチリ上手く行ったのと、魔道具の素晴らしい威力が発揮されたからだ。


「ははははは! それは、良かったではないか」


 珍しく、高笑いするバルバだが、何故、このように明るく笑うのか?

 バルバの脳裏には、あのルードヴィーグのしかめ顔が浮かんでいたからに他ならない。

 今頃は、バルバトスが残した『謎めいた言葉の意味』を理解した筈なのだから。

 

 そう、悪魔バルバトスは……未来をも見通す能力を有する……

 バルバはフレデリカとコスティが結ばれた場合の『不幸』を見抜いていたのである。

 それはアールヴ族全体に関わる、忌まわしい不幸だという事を……

 

 バルバと、自分の祖父ルードヴィーグのそんな『やりとり』があった事など、露知らず…… フレデリカの話は、続いている。


「ええ、お祖父様とお父様からも、コスティの不義理さをなじる手紙が来たの……これで婚約解消は決定。コスティの意思は岩のように固いらしいけど……う~ん」


 眉をひそめたフレデリカを見て、まだ懸念があるのかと、バルバは首を傾げる。


「何か、気になるのか、フレデリカ」


「ええと……バルバはあれで良かったの? 大切な魔道具ガラテアを、あんな変態コスティなんかにあげちゃって! 今、コスティが何してるか、考えただけでも気持ち悪くなるけど」


 ここで、ツェツィリアが「にっ」と笑う。

 

「うふ、フレデリカったら、コスティの何が気持ち悪いの? 言ってみて」


 悪戯好きなツェツィリアは、少しだけフレデリカを、いじりたくなったらしい。

 コスティのおぞましい行為を、具体的にフレデリカの口から言わせようとしているのだ。


「もう! 私にはっきり言わせたいなんて、ツェツィリアは意地悪ね。だって………あいつったら、今頃はガラテアの全身をぺろぺろ舐め回しているわよ……あ~ヤダ」


 今回バルバが使った魔道具とは、古き時代の人間族の王ピグマリオンが女性に失望して作った美しい彫像である。

 王ピグマリオンが毎日魂を込めて愛した為に、創世神から祝福された像には新たな命が宿り、人間となった。

 そして、ピグマリオンの王妃ガラテアになったという伝説的な魔道具なのだ。


「大丈夫、問題ない。あれは、いくつかある複製品レプリカのひとつだからな」


「え? 複製品レプリカ?」


「うむ、お前の元婚約者へ渡したのは、単に人形が喋る仕様に過ぎん。いかに愛しても人間にはならんのだ」


「そ、そうなんだ……なら、安心ね」


「ああ、オリジナルは俺がちゃんと持っているから安心しろ。それより、お前の結婚話は完全に白紙か?」


「ええ、当分白紙よ。ついでに私、この王都で暫く暮らす許可も貰ったの。婚約破棄された傷心を癒すのと、人間の使う異なった魔法体系を学びたいという口実でね」


 フレデリカが、喜んでいる別の理由が分かった。

 どうやら今回の件を理由に、この王都で気儘な暮らしをする許可を貰ったらしいのだ。


 笑顔のフレデリカへ、バルバトスが言う。


「そうか、ならば丁度良い。対価を払ってくれるのだな」


「ええ、喜んでっ」


 どのような対価を払うというのは、ツェツィリアへは内緒にしてある。

 辛い思いをしたフレデリカが払える範囲内でというバルバの言葉を、ツェツィリアは信じたのである。


「ねぇ、バルバ、フレデリカから一体何を貰うのぉ? 今回の魔道具なら、だいぶ吹っ掛けたんでしょ?」


「ああ、とても無理なお願いをしたかもしれん」


「うふふ、無理って、フレデリカも大変ねぇ」


 ツェツィリアは、同情するような眼差しをフレデリカへ向けた。

 しかし、フレデリカは首をぶんぶん振る。


「ううん、全然! だって私がツェツィリアの友達になれば良いのですもの」


 対価は……フレデリカが友達になる。

 ツェツィリアの?

 

「は? バルバ、何、それ?」


 驚き、目を丸くするツェツィリアを華麗にスルー。

 バルバは、困惑したような表情でフレデリカへ謝る。


「無理を言って悪いな、フレデリカ。我が儘放題なツェツィリアには、友達があまり居ない。普段はいわゆるボッチという孤独な奴なんだ」


「いいえっ、彼女なら全然OKよっ」


 傍らで勝手に進む会話を聞いて、ツェツィリアが憤る。


「はぁ!? 誰が我が儘放題で、孤独なボッチなのよぉっ」


 しかしバルバは、またもやスルー。


「というわけで頼む。フレデリカが友達になってくれれば俺も助かる。やっと煩わしさから解放されて、好きな魔道具の収集と手入れがじっくり出来るというものだ」


「何ですってぇっ! バルバぁ、この私が邪魔だって言うのぉ」


 バルバの悪口雑言? を聞いてツェツィリアの怒りのボルテージは上がる一方だ。

 ここでフレデリカが友達として、素晴らしい提案をする。


「まあまあ、ツェツィリア。これから私とお茶でも飲みに行かないっ? 凄く美味しい焼き菓子屋さんを見つけたから」


「え? 凄く美味しい焼き菓子屋?」


 美味い焼き菓子と聞いて、ツェツィリアの目が大きく見開かれた。

 目をキラキラさせるツェツィリアを見たフレデリカは、とても嬉しそうである。


「そうよっ! 王都ナンバーワンって噂なの」


「行くわ! フレデリカ、行くっ、連れて行って!」


「了解! じゃあ、行こっ! バルバ、またねっ」


 機嫌が直り喜ぶツェツィリアの手を取って、お辞儀をしたフレデリカ。

 どうやら魔道具店『放浪ストレイアラ』には、新たな顧客が誕生したようである。


 ふたりの美少女が店の扉を開けて外へ出て行くのを、バルバは微笑みながら見送っていたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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