第3話「別れ話を決めて!」
1時間後……
フレデリカは、何故か全てを話した。
心のうちの、隅まで隠さずに。
どうしてなのか、フレデリカには不思議であった。
バルバとツェツィリアは、さっき会ったばかりである。
そう、全くの初対面なのに……
まるで長年心を許し合った親友のように、フレデリカは自分の悩みを切々と打ち明けていた。
フレデリカの話を聞き終わったバルバは、眉間に皺をよせ、鼻を鳴らす。
「ふむ……政略結婚か。人間も面倒だが、アールヴも同様だな」
「うふふ、そうね」
ツェツィリアも、バルバと同意なのだろう。
にこにこと笑っている。
「はぁ…………」
一方、話し終わったフレデリカは大きくため息をついた。
彼女の話を要約すると下記の通りだ。
バルバの告げた事は、ほぼ当たっていた。
フレデリカは、アールヴの貴族令嬢である事。
幼い頃、祖父と親に決められた貴族の婚約者が居る事。
相手と友人としての付き合いは長いが、性格的にどうしても男性として好きになれない……というか今の所、恋愛自体にもに興味が無い事。
かと言って、男性が全く嫌いというわけではない事。
現在次期ソウェルの選定競争中で、婚約者とは直接のライバルでもある事。
さしたる理由がなければ、このままでは我儘は言えず、相手と結婚するしかない事。
「それって、変!」
話をずっと聞いていたツェツィリアは、美しい眉をひそめた。
片や、フレデリカは、首を傾げる。
「変?」
「だって、そうでしょ、理不尽よ」
改めて、きっぱり言い切ると、ツェツィリアは腕組みをした。
どう考えても、不思議でならない。
いくら親の決めた伝統的な結婚だからといって、フレデリカ本人の意思は全く無視されてしまうのかと。
なのでツェツィリアは、またもやフレデリカへ聞いてしまう。
「フレデリカは、そんな嫌いな奴とは結婚したくないわって言えないんだ?」
「うん、昔からそうなの……女からはね結婚したくないって言えないのよ……ダメなんだ……」
「え? そうなの、アールヴって?」
「うん、そうよ。でもさ、聞いた事あるけど、貴女達人間の貴族だって、そういうしきたりでしょ。男性である当主や次期当主の指示で女は結婚させられるから……」
アールヴと人間の女子は、身内の男性から、結婚を無理矢理決められてしまう?
今度は、ツェツィリアが嫌そうに首を振る。
「わぁ、嫌だ、最悪! 私だったら嫌いな相手との結婚なんて断固拒否!」
手でバツを作り、NGの意思表示をするツェツィリア。
バルバは「さもありなん」と頷く。
「まあ、ツェツィリアならそう言いそうだな」
バルバが同意すると、ツェツィリアはいきなり品を作る。
「ねぇ~ん、バルバ、どうするぅ? 私が他の人を好きになって、貴方との結婚を断わったらぁ~」
突如出た、ツェツィリアのとんでもない質問。
しかしバルバは……あっさり言い放つ。
「俺とお前の結婚? ああ、断ってくれても全然構わない」
「はぁ? 何それっ! 今度そんな酷い事言ったら、パパに言い付けるからっ!」
むげもないバルバの答えを聞いたツェツィリアは、怒りの余り「かあっ」と口を開く。
フレデリカは、つい何度も目をこすった。
怒って大きく開いたツェツィリアの口の奥に、何か牙のような鋭い歯が見えたから。
しかし怒り心頭のツェツィリアを見ても、バルバは、全く動じない。
「……ツェツィリア、今はフレデリカの案件を話している。どうでも良い話題など出すな」
「ぶ~、何よぉ! どうでも良いって! さっきの発言は後で徹底的に追及しますからねっ!」
ぷんぷん、むくれるツェツィリアを華麗にスルー。
バルバは、フレデリカへ向き直る。
「だがフレデリカ、もしもそうであれば、話は簡単ではないか?」
「え?」
「要は相手から……婚約者の男の方から結婚を断らせれば良いのだろう?」
確かにその通り……
しかしそれが可能ならば、フレデリカはここまで悩んではいない。
「それが簡単に出来ればこんなに悩まないわっ! あいつったら、私に凄い執着を持っているのっ! お前には絶対、俺の子を産ませるって、もう口癖になってるわ」
俺の子を産ませる?
好きでもない相手の子を?
これは女子にとっては最悪の言葉のひとつだろう。
ツェツィリアにとっても、他人事とは思えない。
口癖にでもなったら、尚更だ。
「うっわ、気持ち悪い~」
しかし……
相変わらず、バルバは動じていない。
「大丈夫だ、相手の男から断らせる事は出来る……」
「え?」
「俺のコレクションの中には、お前の悩みを解決するのにぴったりな魔道具がある。良ければ、それを貸してやろう」
「どんな魔道具?」
「それはな……」
バルバはざっくりと説明した。
貸し与えるという、魔道具の効果効能を聞いたフレデリカは目を丸くした。
……何故かバルバは片目を瞑り、そっと囁く。
魔道具の貸与と引き換えに、支払う『対価』の話である。
フレデリカは、思わず「くすり」と笑う。
そして全てを納得した上、大きく頷いたのであった。
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