表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔☆道具  作者: 東導 号 
奇跡の救援者編
16/47

第7話「悪徳は栄えず」

 バルバがベルナールとの魂の契約に基づき、魔道具――青銅の巨人(タロス)を召喚、起動。

 北の砦を襲ったオーク共を、一方的に殺戮していた頃……


 砦の救援に赴いたラウルス王国軍を率いるウジェーヌ・ドラポール侯爵は、野営用に設営された天幕でひとりワインを飲んでいた。


「ふふふ、ベルナールめ。お前の命も、いよいよこれで終わり……だな」


 ウジェーヌは、いい気味だと思いながら、少し可哀そうかとも思う。

 ベルナール・ゴーギャンは忠実な部下として、これまで良く仕えてくれたから。

 それどころか愛人のクローディーヌまで引き受け、磨き上げ、更に美しい女にしてくれた。

 自分が妾として囲っていた頃よりも、人妻となったクローディーヌは遥かに美しくなった。


 口うるさい妻が死んだ今、再びクローディーヌを取り戻し毎晩弄ぶ……

 それがウジェーヌの歪んだ願望である。

 その為には、夫のベルナールが邪魔なのだ。


「ベルナール……素直に離婚に応じていれば良いものを……女の為に意地を張って命を失くすとは馬鹿な奴だ」


 そう、今迄通り自分の言いなりになっていれば……

 あいつは死なずに済んだものを……

 で、あれば過酷な北の砦にも送らず、王都で適当な役職に就けて、いずれは別の女とも結婚出来ていただろうに。


 ただウジェーヌにとって意外だったのは、クローディーヌが復縁の説得に応じなかった事だ。

 昔はなんでも、男の言いなりだった女が……

 

 ベルナールとの離婚に応じず頑として反抗したのだ。

 しかし所詮は女……ベルナールさえ居なくなれば……また戻って来る。


 かつてクローディーヌを思いのままにした、ウジェーヌはそう信じている。


「何故なら、儂はあいつの身体の隅々まで知っておる。どこを攻めれば悦ぶか、性癖もな……ふふふふ」


 毎夜繰り広げられた痴態が、ウジェーヌの脳裏に浮かぶ。

 クローディーヌの豊満な乳房はウジェーヌの手の中で淡く染まり、秘密の場所は熱く濡れる……

 ウジェーヌは再び手に入れるであろう、クローディーヌの熟れた女体を想像し、熱い息を吐いた。

 そして、嫌らしく、舌で乾いた唇をぺろりと舐め回した瞬間。


「あ~、ホント最低ねぇ」


「な!?」


 驚いたウジェーヌが見たのは、天幕内に立つ小柄な少女の姿である。

 付近は人払いさせ、誰も居ない筈なのに……

 

 冷たい笑顔を浮かべるメイド服姿の少女は、シルバープラチナの美しい髪を肩まで伸ばし、端麗な顔立ちをしていた。

 バルバと共に居た、あのツェツィリア……である。


 ウジェーヌは、ツェツィリアを睨む、そして尋ねる。


「貴様は! ……どこのメイドだ、小娘」


「え~、いやだ! 聞かれたって、あんたに名乗る名前なんてないわぁ」


 まるで小馬鹿にしたようなツェツィリアの物言いであったが、ウジェーヌは怒りを耐え、更に言う。


「何だと? 小娘の癖に生意気な……儂を誰だと思っておる」


「もう! さっきから小娘、小娘って……私、あんたなんかより数万倍も年上よぉ」


「ふ、ふざけるなっ」


 ウジェーヌがどう見ても、ツェツィリアは15歳位の少女だ。

 それが、数万倍年上?

 実にふざけた物言いだと、ウジェーヌは思った。


 そんなウジェーヌへ侮蔑の視線を投げ掛けながら、ツェツィリアは言う。


「ふざけているのはどっち? 自分の薄汚い欲望の為に、命を懸けて敵と戦っている同胞を切り捨てる蛆虫じじいが」


「ぐぐぐ……」


 どうやら目の前の少女は全ての『事情』を知っているようだ。

 こうなったら……ウジェーヌは再びツェツィリアを見た。


 目の前のツェツィリアの肌は、不自然なくらい白い。

 深いルビー色の瞳に、真っ赤な唇が人間離れしていた。

 発する雰囲気が、大人になりきれない少女と思えぬほど艶めかしい。

 ウジェーヌの男心をそそって来る。

 下半身が硬く膨張する。


 ここはたぎった、自分の『男』で言う事を聞かせよう……

 

 ウジェーヌは本能に従い、手を伸ばした。

 目の前のツェツィリアを、無理矢理捕まえようとしたのである。

 しかし、ツェツィリアは平然としていた。

 逆に伸ばしたウジェーヌの手の平を、無造作にひとさし指で「びしっ」と弾いたのだ。


 その瞬間!

 ウジェーヌの全身にとてつもない激痛が走る。

 もし傍らでウジェーヌを見る者が居たら、大きな声で叫んでいただろう。

 血色の良かったウジェーヌの全身が、あっという間に紫色に染まったからである。

 

 一体何が起こったのか?

 

 以前バルバが言った通り、この世界では生きとし生ける者は魔力を持つ。

 魔力とは血液と共に、生命力を支える根幹である。

 もし魔力が無くなれば……生物は倒れ、そのまま死ぬ……

 ツェツィリアは自身の能力を使い、ウジェーヌの持つ魔力を全て吸収したのである。


「ぐわ!」


 短い悲鳴が上がった。

 しかし小さく短かったので、外には漏れていない。

 護衛の騎士達が駆けつけて来る様子はない……


 ウジェーヌは四肢を硬直させ、「かっ」と目を見開いた。

 そして「どうっ」と地に倒れてしまったのである。


 倒れたウジェーヌへ、ツェツィリアは冷たい眼差しを向ける。

 まるで、ゴミでも見るように。


「うふふ、欲望に狂った蛆虫じじい、まだあたしの声が聞こえる? あんたはもう死ぬのよ」


「…………」


「そして魂はね。私達、悪魔達が散々喰らった後、残ったカスはごみ屑みたいに冥界へ捨てられる。あんたは、もう二度と人間には戻れないわ」


「…………」 


 ツェツィリアは、自分の胸元へ、すっと手を差し出す。

 いつの間にか、華奢な手の上には、黒く輝く小さな光球が浮かんでいる。


「うふふ、こいつったら……やっぱり超が付くぐらい真っ黒な魂ね。これならば今回の報酬には充分。……真面目なご夫婦の綺麗な魂なんかよりず~っとね」


 「にやり」と笑ったツェツィリアは、ピンと指を鳴らす。

 同時に彼女の姿は煙のように消え失せた。


 数時間後……

 いつまで経っても専用の天幕から出て来ないウジェーヌを不審に思った部下達が覗いたところ、地に伏した彼の身体は既に冷たくなっていたのである。

いつもお読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ